バランススコアカードとは?BSCの4つの視点や作成のポイントを具体的に解説

経営戦略を策定・評価する場合、売上や利益など財務指標を中心に行われてきました。

企業の価値尺度が多様化した今日、企業の評価は1つの指標による偏った評価ではなく、よりバランスのとれた評価を行うと同時に経営戦略に反映させる必要があります。

そのようなニーズに答えるのが、バランススコアカード(Balanced Scorecard /BSC)です。

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1.バランススコアカード(BSC)とは

R・S・キャプラン氏(ハーバード大学教授)と、D・P・ノートン氏(コンサルティング会社社長)が1992年、「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載した論文の中で、業績評価手法として「バランススコアカード」(バランスト・スコアカードとも呼ばれ、BSCと略されることも多い)が紹介されました。

 

バランススコアカード(BSC)は、企業業績を定量的な財務業績のみでなく、四つの視点(財務・顧客・業務プロセス・学習と成長)で業績評価することで、財務的指標中心の業績管理手法の欠点を補うものとして誕生しました。

 

その後、四つの視点をバランスよくマネジメントしようとする経営管理手法としても位置付けられるようになっています。

 

2.バランススコアカード(BSC)のメリット

 

例えば、単年度の財務の結果だけを考えるなら、費用となる協力会社からの仕入れ価格を、無理をしてでも引き下げることや、教育費用を大幅に削ったり、IT投資を凍結することで利益を底上げすることが可能かもしれません。

 

しかし、それでは、短期的な業績は向上しても、将来の業績に悪影響を及ぼす可能性がありバランスの良い経営とは言えません。

 

バランススコアカード(BSC)を使えば、経営戦略やビジョンと企業行動の因果関係を明らかにしつつ連携させ、業績評価や進捗把握を単に財務面からだけで無く、企業を取り巻くステークホルダーの観点や、業績を支える業務プロセスや従業員教育等の評価も一覧で俯瞰することができ、バランスの良い経営が行えるようになります。

  

3.バランススコアカード(BSC)の4つの視点

 バランススコアカード(BSC)の4つの視点で企業を分析し、その因果関係を論理的に思考し、企業の方向性を決定することはとても大切です。

 



1)財務の視点

株主、従業員、債権者及びサプライヤーなどの利害関係者に対して財務的に応えるためにどのように行動すべきかという視点です。評価の指標としては、売上高、利益率、利益額、自己資本比率、ROE(自己資本利益率),EPS1株当たり純利益)等が考えられます。

 

2)顧客の視点

顧客に対してどのように行動すべきかという視点です。評価の指標としては、顧客満足度、製品売上げシェア、リピート率等が考えられます。

 

3)業務プロセスの視点

財務の視点や顧客の視点からの評価を向上させるため、社内の業務プロセスをどのように効果的に構築・運用すべきかという視点です。評価の指標としては、生産のリードタイムや不良品率、注文や質問に対するレスポンス時間など、業務プロセスに関する生産性を向上させ、コストを削減する指標が考えられます。

 

4)学習と成長の視点

企業の経営戦略を達成するために必要な従業員のモチベーションや能力をどのように高め生産性を向上させるかについての視点です。評価の指標としては、従業員満足度、エンゲージメントサーベイ、社員定着率、資格取得者数などの指標が考えられます。


(5)4つの視点の関連性

図のように、バランススコアカード(BSC)の各視点はそれぞれが他の視点と有機的に結びついており、すべては直接的あるいは間接的に経営戦略につながっていきます。

 

一般的な全体の流れは、学習と成長は業務プロセスの改善につながり、顧客満足度を高め、リピート率が上がることで、売上が増加するというような流れです。



しかし、逆に顧客のニーズの変化に対応して業務プロセス改革が必要な場合、従業員は新しいスキルを獲得する必要が生じ、従業員のスキル向上が重大な経営戦略となることもあります。

 

4.バランススコアカード(BSC)の例

それではバランススコアカード(BSC)の具体例を見ていただきましょう

 

図1 バランススコアカード(BSC)【抜粋】


まず、語句について図の「財務の視点」を例に見ていきます。

 

(1)戦略目標

戦略の内容を具体的に説明する「道標・戦略が達成すべき項目」です。財務については、戦略の中の「利益の極大化」を「売上増大」と「原価の低減」として具体化しています。

この段階では、数字目標ではなく定性的に戦略目標を設定します。

 

(2)重要成功要因(CSF・KSF)

戦略を成功させるための「重要なプロセス・要因」です。「売上増大」を達成するため、この企業では、新規顧客売上の増大が必要だと認識しています。

「CSF」(Critical Success Factor)または、「KSF」(Key Success Factor)と表現されます。

 

(3)業績評価指標

戦略が如何に上手く達成されているかを測定し追跡する指標です。この企業では、「売上増大」の目標を達成するための必要条件として、新規顧客売上高〇〇億円を達成すると定めて「KGI」結果指標とし、その売上を達成するため必要な販売サイトの閲覧数(ページビュー数=PV数)を「KPI」先行指標としています。


 ●「KGI」:結果指標(Key Goal Indicatorex.新規顧客売上高 ○○億円


●「KPI」:先行指標(Key Performance IndicatorexPV数の増加 ○○PV

 

●先行指標:「KGI」より先行して変動する指標で、その動向は「KGI」を予想する目安となる 


5.バランススコアカード(BSC)の3つの効果

 一見すると、何の変哲もない「表」ですが、バランススコアカード(BSC)を作成することで、以下の3つの効果が期待できます。

 

(1)経営戦略の明確化

企業の経営戦略を財務、顧客、業務プロセス、学習と成長、これら4つの視点に立ってバランスさせると共に、ビジョンや戦略そのものに明確な輪郭を与えることが出来ます。

 

(2)従業員のベクトルの統一

企業のビジョンや戦略の実現までの道筋を明らかにし、実現可能な目標に翻訳することで、経営者だけでなくその企業に属するすべての従業員が、進むべき方向性を一致させて進捗を確認しながら、実行出来るようになります。

 

又、実現までの道筋の策定(「戦略目標」⇒「重要成功要因」⇒「業績評価指標」)を因果関係に注目しながら、ブレイクダウンすることで、勘や経験に頼る経営からの脱却を図れます。

 

(3)業務プロセスや従業員の意識改革の促進

社員一人一人に自分がどのような活動を行えば企業の経営戦略の実現に繋がるのかが論理的にわかりやすくなり、かつアクションプランで、具体的に行動目標が示されることから、業務プロセスの見直しや従業員のモチベーションアップが促進されます。

 

6.バランススコアカード(BSC)の作成方法

ここからはバランススコアカード(BSC)を作成するステップを説明します。

 

(1) 経営戦略の策定

企業の置かれている市場環境や競争環境を分析したうえで、経営戦略を設定します。すでに設定されている場合は、その戦略は適切か再度検討を行い、改めてメンバーで共有することが大切です。

 

(2)「戦略目標」と「重要成功要因」の定性的設定

「財務」、「顧客」、「業務プロセス」、「学習と成長」の4つの視点に基づいて、経営戦略を実現するための「戦略目標」を設定します。

 

さらに、設定した「戦略目標」を達成するために必要な「重要成功要因」を決定します。ここでは、戦略マップやSWOT分析を活用することでMECEに検討すると良いでしょう。

 

又、財務的な目標だけでなく、非財務的な目標についても設定することが重要です。

 

戦略マップ:バランススコアカード(BSC)を補強するフレームワークです。4つの視点から導き出した経営課題と解決策の因果関係や関連性を図式化(→で結び)し、マップとして視覚化します。


各個別目標間の因果関係を可視化することで、全体として整合性のある戦略を構築・検討することができます。

 


(3)「KGI」と「KPI」のターゲット数値の設定

続いて、設定した「戦略目標」を実現する条件である「重要成功要因」に従って、「KGI」と「KPI」を決定します。「KGI」「KPI」ともに具体的な数値目標として設定します。

「学習と成長」の視点は、数値目標の設定が困難な場合もありますが、先にあげた例では、

技能習得者数やOJTの回数を数値目標としています。

 

(4)アクションプランの作成

各数値目標まで設定ができれば、次は実現に向けて取るべきアクションプランを作成します。いつまでにどのような行動を取ることでKPIを達成するのか、個人のレベルまで落とし込んで検討することになります。

 

アクションプランの実行によって、「KPI」が順調に進捗すれば、自ずと「KGI」も遅れて進捗するはずです。実際に行動については、PDCAを回すことが、最も重要です。

 

7.バランススコアカード(BSC)の作成のポイント

目標を設定する上での重要なフレームワークとして「SMART」が有名です。目標設定を正しく行うことで、社員の意欲が沸き、会社の雰囲気も変わります。

 

一方、目標を曖昧なままにしておくと、単なるお題目に終ってしまい、目標と具体的アクションが連動しないということが起こってしまいがちです。

 

(1)「SMART」とは

SMART」は以下のそれぞれの頭文字をとった略語であり、それぞれの要素を満たすことで、きちんと機能する目標設定ができるというものです。

 

●Specific(具体的に)

●Measurable(測定可能な)

●Achievable(達成可能な)

●Relevant(経営戦略に関連した)

●Time-bounded(期限を定めた) 


(2)SMARTの5つの要素


Specific(具体的に)

誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表すことです。

 

Measurable(測定可能な)

目標の達成度合いが本人にも上司にも判断できるよう、その内容を定量化して表します。定期測定結果の評価分析を行い、PDCAにより目標の達成に対して効果な行動を行うことに繋がります。

 

Achievable(達成可能な)

目標が達成可能な現実的内容かどうかを確認することです。現実的にチャレンジ可能な目標を設定することで、関係者の目標に対する合意とアクションの実行が期待できます。

 

Relevant(経営戦略に関連した)

設定した目標が、自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連する内容になっているかどうかを確認することです。個人的数値目標と企業全体目標との関連性や「KPI」の項目と企業の最終目標との関連性などについて、全員が正しく理解している必要があります。

 

Time-bound(期限を定めた)

いつまでに目標を達成するか、その期限を設定することです。特に先行指標である「KPI」に期限が設定されていない場合、全体の達成が困難になる可能性が高くなります。

 

8.まとめ

バランススコアカード(BSC)は、財務情報だけでなく、非財務情報も重視するバランスのとれた業績評価手法としてだけでなく、戦略を多面的に考えるツールとして評価されています。

 

最近の企業経営で避けて通れないSDGs(持続可能な開発目標)を検討する際にも、大いに活用できるはずです。

 

BSCを上手く活用して、従業員をはじめとしたステークホルダーとビジョンを共有し、長期的な展望に立った経営を推進していただければと思います。

 

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