Netpress 第2446号 2027年4月1日から適用 新リース会計基準の中小企業への影響は?

1.新リース会計基準が、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となります。
2.すべてのリースを(借方)使用権資産/(貸方)リース負債として貸借対照表に計上(オンバランス処理)するとともに、減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を損益計算書に計上することになります。
3.ただし、短期リース及び少額リースに関しては、定額費用処理とすることができます(オンバランス処理は不要です)。
1.新リース会計基準の公表について
2024年9月13日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」との整合性を図りつつ、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取り扱いや経過的な措置を定めて策定した「新リース会計基準」を公表しました。
新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用開始となります(一定の早期適用も可能です)。
2.新リース会計基準の概要
(1) リースの識別(基準25~30項、指針5~16項)
新リース会計基準では、契約締結時に当該契約がリースを含むか否かを下記の要件に基づいて判断し、(a)及び(b)のいずれも満たす場合、当該契約はリースを含むと判断します。
(a) | 資産が特定されているか | ||
(b) | 資産の使用を支配する権利が移転しているか | ||
※ | 借手が、特定された資産の使用期間全体を通じて、次の①及び②のいずれも満たす場合、資産の使用を支配する権利が移転することになります。 | ||
① | 特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している | ||
② | 特定された資産の使用を指図する権利を有している |
(2) オンバランス処理(基準25~38項、指針18・19項)
識別されたすべてのリースを使用権の取得として捉えて、その取得に伴う負債と併せて使用権資産及びリース負債を貸借対照表に計上(オンバランス処理)します。
それとともに、借手のリースの費用配分については、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を損益計算書に計上することになります。
(3) 財務指標等への影響
後述するリースを除いたすべてのリースをオンバランス処理するため、従前支払いリース料のみ費用処理していたオペレーティング・リースも、減価償却費及びリース負債に係る利息相当額が損益計算書に計上されます。
これにより、総資産が増加し、また、販売費及び一般管理費として処理していた支払いリース料は、販売費及び一般管理費の減価償却費と営業外費用の支払利息とに分けて計上されるため、営業利益が改善する一方で、ROA(総資産利益率)や自己資本比率(自己資本/総資産)等の財務指標等が悪化する可能性があります。
3.短期リース及び少額リースに関する簡便的な取り扱い
(1) 短期リース(指針4項、20項)
短期リースとは、リース開始日時点のリース期間が12か月以内のリース(購入オプションが付されているものを除きます)をいいます。
(2) 少額リース(指針22項)
少額リースとは、次の(a)又は(b)のいずれかを満たすリースをいいます。
(a) | 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース | |
(b) | 次の①又は②を満たすリース。なお、①又は②のいずれかを選択適用し、選択した方法を首尾一貫して適用する必要があります。 | |
① | 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース(リース料総額300万円以下)(指針BC41項) | |
② | 新品時の原資産の価額が少額であるリース(5,000米ドル以下を念頭)(指針BC45項) |
短期リース及び少額リースは、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます。
4. 中小企業への影響等
新リース会計基準は、上場会社や、未上場会社のうち会計監査人設置会社において強制適用されます。一方で、それ以外の会社、いわゆる中小企業では従来通りの会計処理を継続できます。
そのため、中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」等に基づいた賃貸借処理等の会計処理を従来通り継続することが可能です。
また、税務上は、賃貸借処理による支払いリース料がリース期間定額法に基づく償却限度額と同額である限り、申告調整は不要となります。その結果、新リース会計基準導入後も大きな影響はないと考えられます。
※ | 本記事の内容は、2024年12月1日時点の会計基準及び法令等に基づいています。今後の法改正や基準の変更等によって、内容が変更される可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。 |
※ | 本記事上、新リース会計基準は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び同適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を意味しています。また、新リース会計基準の根拠を示す場合は、本記事において「基準〇〇項」、「指針〇〇項」と表記しています。 |
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