OKRとは?具体例で簡単に!進め方とルールを解説

経営環境が大きく変化するとともに、顧客や従業員の価値観の多様化も進み、企業のマネージャーや経営者は新たなマネジメントの枠組みを模索している段階です。そこで注目されているのが、GoogleやFacebookなどが採用する「OKR」と呼ばれる、目標管理手法です。

「会社のビジョンを浸透させたい」「メンバーが仕事にやりがいを感じてもらえる組織を作りたい」「環境の変化に対応してスピーディーに物事を進めたい」「チームの一体感を高めたい」という企業の悩みに対する解決策として、IT企業を中心に導入が進んでいます。


本記事では、OKRの仕組みや設定方法のエッセンスについて解説します。 別途、詳細なOKRハンドブックもご用意していますので、本記事で興味を持っていただいた皆さんは、そちらもご覧ください。


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1.OKRとは

OKRとは組織が何を目標にするか・目標をどうやって実現するか・進捗をどのように管理するか等のルールをまとめた目標管理手法です。

 

OKRは [Object and Key Results] の略称で、

Objective=実現したい目標

Key Results=達成すべき結果指標  の頭文字を取ってできた言葉です。


OKRは一つのO(目標)に複数のKR(主要な結果)が付随する形となっています。

メンバーがワクワクするような、魅力的な目標を、具体的な指標を達成していくことで、実現する目標管理手法なのです。




OKRは一つのObjective(目標)に複数のKey Results(主要な結果)が付随する形となっています。

 

メンバーがワクワクするような、魅力的な言葉(目標数値ではなく)で表現したObjectiveを、具体的な指標であるKey Resultsを達成していくことで、実現する目標管理手法なのです。

これだけ聞くと「KPI」や「MBO(目標管理制度)」と変わらないなと思う方もいるかもしれません。しかし、OKRには、独自の特徴やルールが存在しますので、次にお話ししていきます。

 

2.OKRの特徴~KPIMBOとの違い~

 

OKRには、次の3つの大きな特徴があります。

 

(1)Key Resultsは四半期毎に高く設定(ムーンショット)

(2)組織の目標を見える化しツリー形式で繋げ公開

(3)OKRの達成度を人事評価に反映させない

 

それでは、この3つの特徴について詳しく見ていきましょう。

 

(1)Key Resultsは4半期ごとに高く設定する(ムーンショット)

 

OKRでは達成の可能性が50%程度の高いチャレンジングな目標を四半期毎に設定します。

 

OKRで設定される目標は、自分たちが心から求める、今までの考え方や発想を変えないと到底到達できないような目標とすることで、自分自身を奮い立たせます。

 

人事評価と直結したMBOが、1年を通して、頑張れば達成できる目標を立てる点や、KPIKGIというゴールを達成するための中間目標として、実現しなければならない目標設定とする点で、大きく異なります。

 

(2)組織の目標を見える化しツリー形式で繋げ公開する

 

各組織で設定したOKRは、全社の目標とツリー形式で連携されていなければならず、全社に対して公開します。

 

部署間でOKRを公開することで、他部署との協働が可能になり、企業全体の実効性が高まるといったことが期待されますが、この点は、KPIMBOとは異なる特徴と言えます。

 

(3)OKRの達成度を人事評価に反映させない

 

日本の多くの企業で行われている目標管理は、人事評価制度と紐づいています。

一方、OKRの目的はあくまで「生産性の向上やコミュニケーション促進」であり、人事評価や報酬決定のために策定することは推奨されません。


3.OKR導入の効果

OKR9つのルールを守ることによって、以下の効果を得ることが出来ます。

 

(1)企業ビジョンの浸透

OKRでは、個人や個人の所属する部署の目標を、企業の目標とリンクさせるため、企業のビジョンが従業員にも分かりやすく、組織内に深く浸透します。

 

(2)環境変化に対して機敏な対応が可能

目標のサイクルを原則3か月で達成できるものとすることで、フレキシブルな調整・変更を行えるため、環境変化に対しても機敏な対応が可能となります。

 

(3)エンゲージメントの向上

目標を共有していることから、企業への貢献度を従業員一人一人が実感しやすく、ワークエンゲージメントや従業員エンゲージメントの向上に繋がります。

 

(4)全社的な相互連携とタスク優先事項の明確化

目標をオープンにすることで、全社的な横の繋がりも増え、社員間でのコミュニケーションや協力体制が活性化されるとともに、優先順位の高い事柄が明確となり、効率的な行動が出来るようになります。 

 

(5)高い目標設定によるチャレンジ精神とスキルアップ向上

OKRは、報酬制度と切り離すことにより、失敗を恐れることなく、より高い目標に挑戦しやすくなります。また、ストレッチした高い目標は、モチベーションの向上にも繋がります。


4.OKRの9つルール


IT企業を中心に導入され、大きな成果を上げているOKRには、基本的な9のルールがあります。

 

(1)目標は四半期毎に設定

OKRでは目標を四半期毎に設定します。短期・多頻度での目標設定行うことで、環境変化等に対する柔軟性の向上と振り返りの増加による動機付けの向上という2つの効果が期待されます。

 

(2)目標は最重要なもの1つに限定

OKRではObjective(「実現したい目標」)を四半期に一つだけ目標を設定します。目標数を限定することで経営資源を集中させることでき、また最重要な業務の検討と選択を通じて、組織に判断軸の共有と生産性向上が期待されます。


 


(3)定性目標を設定する

OKRではObjective(「実現したい目標」)を定性的に設定します。組織のミッションやビジョンを具体化した、定性的な目標を設定することでメンバーが組織のミッションやビジョンをより意識出来るようになり、数字にこだわらない(計数目標より理念を大切にする)人を動機づけることが期待されます。

 

(4)測定可能な指標を設定する

OKRでは設定した定性的なObjective(「実現したい目標」)が達成出来たかを判断するために測定可能なKey Results(「達成すべき結果指標」)を3項目ほどに絞り込み、設定します。結果指標を定量的にすることで評価が曖昧とならず、メンバーとゴールを高い解像度で共有出来ます。


 


(5)高い指標を設定する

OKRでは達成の可能性が50%程度の高いKey Resultsを設定します。少し難しめのKey Resultsを設定することで組織の全力を引き出すことが期待されます。

 

(6)チームで『目標』・『指標』を設定する

OKRはチーム全体で設定します。これにより個々人の動機づけと達成に向けたチームでの協力が期待されます。「人に与えられた目標より、自分で立てた目標の方が動機づけられる」「自分一人の目標より、チームの目標の方が達成に向けて努力するようになる」ため意欲向上が促されるのです。

 

(7)全社に公開する

各組織で設定したOKRは全社に対して公開します。部署間でOKRを透明にすることで、他部署との協働が可能になり、企業全体の実効性が高まるといったことが期待されます。

 

(8)週次で進捗を確認する

OKRでは進捗状況を毎週確認します。目標を週次で確認することで最後まで確実に遂行することが期待されます。週初に計画を一週間の行動計画を確認し、週末に成果を持ち寄り賞賛し合うWINセッションを行うことが望まれます。

 

(9)OKRの達成度を評価しない

OKRでは目標達成度を評価し報酬に連動させるのはNGです。何故なら、達成度を評価することで目標を低く抑える誘因が働いてしまうからです。


5.OKRの具体的な進め方

(1)Objective(実現したい目標) の設定

定性的な企業目標に連動させ、部署・チーム・個人と細分化したObjectiveを設定していきます。定性目標とする目的は、Objectiveそのものをモチベーションの源泉にするためです。

 

目標を達成した状態をイメージした時に、ワクワクする感覚があると、定性目標そのものが、モチベーションの源泉となっていると言えます。ObjectiveOKR設定単位における組織の存在意義をベースにすると良いでしょう。

 

企業理念や、自社製品やサービスが顧客から選ばれる理由、全社業務遂行に対して自組織が果たすべき役割などを身近に感じられる言葉に置き換えてみましょう。

 

Objective設定の際のポイントは、以下の4つです。

 

・魅力的でワクワクするチャレンジングなものであること

・企業のビジョンと一貫していること

・シンプルで覚えやすいものであること

・四半期で達成できるものであること

 

(2)Key Results(達成すべき結果指標)の設定

OKRにおける定量目標は「Objectiveが達成できた」と言えるための指標のことを指します。定性目標だけでは曖昧になりがちなゴールをKey Resultsを設定することによって明確化し、チームでイメージを共有するとともに実効性を持たせるためです。

 

Key Results設定の際のポイントは、以下の3つです。

 

①Objectiveの深掘り

Key Results(達成すべき結果指標)設定のためにはObjective(実現したい目標)を深掘りし、人によって受け取り方に差が生じないよう、可能な限り計測可能な定量で表現します。例えば「四半期後に当社の製品を素晴らしいものにする」というObjectiveに対して「素晴らしい製品とはどのようなものか?」と考えます。「耐久性が高く滅多に壊れない」かもしれませんし「製品使用時の体験全体が良く、使いやすいもの」かもしれません。このように自社の製品が素晴らしいと言えるのはどのような状態かをチームで議論して最終化していきます。そして、議論で出た結果に対して更に深掘りし測定可能な状態にしていきます。最終的には数値化または状態表現(○月×日迄に△が□の状態になっている)に落とし込むと良いでしょう。 

 

②可能な限り指標設定は高く

Key Resultsはなるべく高く設定するようにしましょう。達成可能性が50%(全力で挑めば達成できるかもしれない)程度の難易度とすることで、組織のパフォーマンスが大きくなります。

  

③客観視する

Key Resultsが設定出来たら「設定したKey Resultsを全て達成したとしたら、Objectiveも達成できたと言えるか」という目線で確認を行いましょう。Key Resultsへの検討を進めるうちにいつの間にかずれてきてしまうことはよくあります。

 

(3)目標に対するマインドの変革

OKRでは、目標達成の可能性が50%ぐらいになるようなストレッチした指標設定を求めるため、目標に対するマインドの改革が必須です。

 

目標を達成することを前提とした、「有言実行」文化に馴染んだ企業では、高い指標設定は特に違和感を覚えるでしょう。

 

その結果、OKRの基本思想を無視してかたい目標を設定する、週次の進捗確認会議で目標未達者を過度に叱責するなどをしてしまう管理職が出てしまう恐れがあります。

 

そのまま放置してしまうと目標は低く抑えられることとなります。つまりOKRがただの業務負荷の高い目標管理制度に成り果てる可能性があります。

 

(4)OKR設定ミーティングはメンバー全員で行う

OKRの設定は、メンバー全員で行うことが原則です。メンバー各自が自組織の外部環境やなりたい姿をイメージした上でOKRの案を作成し持ち寄ります。

 

ミーティングではそれらを元に議論の拡散・集約を行いながら最終的に一つのObjectを作成し、Key Resultsに落とし込みを行います。このOKR設定ミーティングを通じてメンバーをモチベート出来ることが理想の姿です。

 

(5)OKR進捗管理ミーティング

OKR設定後は、毎週進捗確認のためのミーティングを実施します。ミーティングの狙いは進捗確認 取るべき行動の整理 動機づけ の3つです。

 

またミーティングは、チェックインミーティング(進捗確認と行動計画を作るための会議)とウィンセッション進捗をお互いに褒め合う会議2つからなります。

 

①チェックインミーティング

チェックインミーティングは週初めに行います。はじめにチーム全員でKey Resultsの進捗状況を確認します。その後、OKRを達成する為に、その週に取り組むべき行動を合意して終了です。

 

このミーティングの目的は、動機付けとフリーライド(サボリ)の回避です。そのため策定した行動計画に対して、誰が・何を・いつまでに行うかを明確にし、合意をするわけです。

 

②ウィンセッション

ウィンセッションは週の最後に行います。各自で1週間の成果を持ち寄り共有し、相互に賞賛し合います。

 

このセッションで、『スゴイ!』『カッコイイ!』と言われたいから頑張ろう」という気持ちを駆り立てるのが目的であり、通常あまり行われない従業員間の労いの機会を制度化することで賞賛の定着を図ります。

 

また、OKRは達成確率50%程度のKey Resultsに向けて取り組むこととなるため、未達成が続くこともあります。そうなると、徐々に意欲が低下し、雰囲気も停滞しがちになります。そのため、賞賛の機会を作る必要があるのです。

 

6.OKRを更に活用するためのOKRサイクルの振り返り

四半期のOKRサイクルが終了したら振り返りを行いましょう。振り返りの目的は①最終成果の確認とそれによる次回の目標設定への反映 マネジメントレベルの向上の2点です。

 

Key ResultsObjectiveと連動できていたか?」「Key Resultsの難易度は妥当だったか?」「OKR全体を通した業務の進め方は妥当だったか?」「全員が活躍出来たか?」

などを振り返ることによって、OKRサイクルを高度化するとともに、チームメンバー全員のマネジメントスキル向上が期待出来ます。

 

7.まとめ

IT企業を中心に導入され、大きな成果を上げているOKRは、非常に強力なマネジメント手法ですが、本格的に導入するためには、目標に対する意識変革や人事制度との関連性など全社的に検討すべき点が多いのも事実です。

 

しかし、この考え方を理解し、「素晴らしいチーム」を作る参考にすることは、必ず出来るはずです。メンバー全員で話し合ったワクワクする目標に向けて、全員が活躍できる役割分担を行い、進捗を確認しながら称え合えるそんな「素晴らしいチーム」を作ることの参考にしていただけたらと思います。

 

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