問題解決とは?5つのプロセスとフレームワークを使った解決手法

仕事をしていると様々な問題にぶつかることがあります。そんな時、上司や先輩に相談すると、問題を上手にさばき、スピーディに解決してくれたという経験をお持ちの方は多いと思います。この場合、上司や先輩は同じ経験や類似したことの経験をしているので、素早く解決が出来たケースが多いのではないでしょうか。人は経験から学ぶといわれていますので経験によって対応の引き出しを多く持つことはもちろん大切です。しかし、変化の大きい今のような時代では、未経験の問題を解決することが多く求められるようになります。そのために必要になるのが、経験に頼らず、論理的に問題を解決する技術です。難易度の高い問題を解決できる人ほど、市場価値も高くなります。本記事では、問題解決を進める技術や思考についてお話をしていきたいと思います。

1.問題解決とは

「問題解決」という言葉は、戦略系コンサルティング会社の活動の中で生まれてきた考え方や仕事の進め方であるため、学問的に体系立てた考え方があるとは言えませんが、共通した以下のようなプロセス・手順があります。

 

問題解決を行う場合には、表層の問題ではなく、問題の本質を理解した上で、原因を特定し、原因に対する解決策を考え、実行することが求められます。

 

2.問題と課題の違いについて

(1)問題とは

ここでいう、「問題」とは、ありたい姿や目標と現実のギャップのことで、目標達成のために、解決しなければならない事柄を意味しますが、そのギャップがすでに認識されているかいないかで「発生型」と「設定型」の大きく二つに分けることが出来ます。

 

1)発生型問題

既に起きている問題で、且つありたい姿や目標とのギャップが明確に見えていることが特徴です。例えば、「納期に遅れた」「不良品が出た」といった問題が発生型と言われます。誰が見ても問題であることから、原因を追究し解決案の立案を行うことが重要となります。

 

2)設定型問題

自ら設定した目標達成や、理想を実現するために発生が予想される問題を設定型と言います。例えば、「営業利益率が5%から10%にしたい」「製造期間を10日から5日に短縮したい」などは、現状が問題であることに共通認識がなければ、関係者の議論がかみ合わなくなります。この場合、先ず、ありたい姿や目標の設定を組織として行い、現状と間で生じている差が問題に該当します。

 

(2)課題とは

「問題解決」とよく似た言葉に「課題解決」があります。同じ意味で使われている例もありますが、本記事では、目標を達成するためには、現実と理想のギャップを埋めるためのアクションプランを設定する必要があり、このアクションプランを「課題」として区別しておきます。

 

簡単な例で説明します。 

●製品の納期に2日間遅れた。→問題

●納期には、遅れない    →目標・あるべき姿

●製造期間を2日間短縮するために下処理の工程を2日間短縮する→課題

 

〇営業利益が5%しかない。 →問題

〇営業利益は10%以上あるべき→目標・あるべき姿

〇営業利益をあと5%以上上げるために、新規顧客を100社獲得する→課題

 

それでは、

衣料メーカーA社は、紳士服の売り上げが低下している

を例を使って、問題解決のステップを見ていきましょう

 


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3.問題解決のプロセス①ー問題の明確化

問題の明確化とは、現状と目標・あるべき姿を定義し、そのギャップを認識することです。

 

A社の例でいえば、紳士服のブランドが、Bブランド一つである場合、Bブランドの売り上げが前年対比落ち込んでいることが社内の懸案事項ということになります。

 

その場合、

ⅰ)世の中全体の衣料の売り上げは伸びているのか

ⅱ)紳士服市場の売り上げは伸びているのか

ⅲ)販売先ごとの売り上げ状況の変化 

 

などの情報を収集し、本当に問題であるのかそれとも、もっと違うところに問題があるのか、問題であるとしたら目標やあるべき姿をどのように設定するかを決める必要があります。

 

例えば、紳士服市場全体の売上が前年対比10%減少していて、Bブランドの売上が5%の減少であれば、むしろ健闘しているかもしれません。

 

この例は、シンプルですので問題の明確化は難しくありませんが、複数のブランドがある場合では次の問題箇所の特定が必要になってきます。

 

4.問題解決のプロセス②ー問題箇所の特定

問題箇所の特定とは、どこに問題があるのかを特定していくステップです。

 

A社の例でいえば、紳士服に複数のブランドがある場合は、

ⅰ)ブランドごとの売り上げの構成比率

ⅱ)ブランドごとの売り上げの増減状況

ⅲ)販売先ごとの売り上げの増減状況

 

などから、問題箇所の特定を行います。問題箇所の特定によって、問題を適切に絞り込んでいく必要があります。

 

紳士服の売り上げの低下が、特定のブランドの低下による場合と、特定の販売先への売上が低下している場合では、対応が大きく変わってきます。

 

また、絞り込みが出来ないと次のステップである原因の追究についても検討範囲が分散し、根本の原因まで深掘りができなくなってしまったり、時間がかかり過ぎたりすることになります。

 

それでは、A社の状況を見てみましょう。

  

 


今回の分析の結果、販売額の減少はE社が一番大きいことは分かりましたが、販売先ごとの減少率は大差がなく、問題の特定はできませんでした。

 

一方、ブランド別では、一番減少率が大きいのはブランドDでしたが、紳士服全体の売上額減少への影響は、ブランドBの減少要因が一番大きいことが分かりました。

 

では、ブランドDとブランドBに問題があることが分かりましたが、一度に二つのブランドの対応を検討するか、どちらかを優先して対応するかを決めなければなりません。

 

実務では、この時点で、上司や関係者と方針の打ち合わせを行う必要があります。なぜならば、この後、原因の究明や対策の実行に入るわけですが、いくら分析を進め対応を検討しても、部門の体力や予算から、無駄になってしまう可能性があるからです。

 

もう一つ、この段階で、注意しなければならないのは、議論が不十分なまま、どちらかに決めてしまうことです。「問題解決」は、論理的に意思決定することが重要です。


 論理的思考の阻害に関連する記事はこちら
  アンコンシャスバイアスとは?具体例や研修実施などの対処法を解説
  

 

今までに、「問題解決」が、上手くいかなかった経験のある方は、この段階でのこだわりが薄い結果、問題箇所の設定を間違えて、結果を出せなかったのかもしれません。

 

問題箇所特定の考え方についてポイントを整理しておきます。

 

問題箇所特定の考え方

ⅰ)増加額(率)または減少額(率)が大きい

ⅱ)改善の可能性が高い

ⅲ)全体に占める割合が大きい

ⅳ)波及効果が大きい            などが挙げられます。

 

今回の場合は、過去の売り上げ推移を追加調査して、ひとつのブランドに絞ることにします。



 

この分析により、

ⅰ)ブランドBは、減少額は大きいものの、減少率はブランドDの方が大きい

ⅱ)改善の可能性は、2018年度から売り上げの減少傾向が続いているブランドDの可能性の方が高い 

ⅲ)減少額に占める全体に占める割合は、直近ではブランドBであるが、2018年度対比ではブランドDの方が大きい

ⅳ)波及効果は、ⅰ)ⅱ)ⅲ)を総合すれば、ブランドDの方が大きい

 

以上の検討の結果、ブランドDを優先して対応を検討することになりました。

 

5.問題解決のプロセス③ー原因の追究


特定した問題に対して原因を「なぜ、なぜ」と考えていく段階です。

 

問題箇所の特定は、「どこ、どこ」と考えていく段階でした。違いは、問題箇所の特定は、A社の例では、「売上」という統一した切り口で、販売先やブランドに分解していきましが、一方、「なぜ、なぜ」と考えていく場合には、問題全体を異なる視点で深掘りして分解していきます。


 


原因の追究の段階でのポイントは、

ⅰ)なぜを繰り返す

ⅱ)論理の飛躍に気を付ける

ⅲ)もれなく幅広く可能性を考える

ⅳ)事実で確認する

ⅴ)自社や製品を主語として掘り下げる などが挙げられます。

 

実務で陥りがちなことは、事実を確認せず、飛躍した論理で原因を設定してしまうことです。今回の場合、『ブランド自体が古くなっているので見直そう』と、直感で判断するのではなく、例えば、販売店での聞き込みを行い、色やデザインなどについて販売店の意見を確認する必要があります。もれなく、幅広く可能性を考えるためのヒントとなる、フレームワークをご紹介しておきます。フレームワークとは経営戦略や業務改善などに役立つ分析ツールや思考の枠組みです。

 

異なる視点に役立つフレームワーク




6.問題解決のプロセス④ー解決案の立案


解決案の立案は、これまでの分析を参考に、原因を根本的に解決するための方策を立案します。つまり、課題に対する解決策を考えていきます。 A社例では、紳士服の売り上げの低下という問題に対して、ブランドÐに対する「色・デザイン」「販促」「価格」の3点を課題として設定し、解決案を考えていきます。

 

解決策の立案の段階でのポイントは、

ⅰ)実現可能性

ⅱ)効果(メリット・デメリット)

ⅲ)コスト

ⅳ)時間    などが挙げられます。

 

例えば「販促」については、対応策を検討してみましょう。

課題は「ブランドDへの販促を強化する」です。

 

 

 

課題に対する解決策を立案するために、さらに課題の深掘りを行っていきます。

上記の図は、「ロジックツリー」と呼ばれる思考ツールです。これによって、課題を構成要素に分解し、深掘りしていきます。これにより、解決策として、「ブランドD専任担当者の配置」「勉強会開催と販売資料の刷新」「ブランドD関連サイトの刷新」というような具体策が考えられ、先ほどの立案のポイントに照らして、具体策の評価を行い、対応策を決定します。今回は、先ず、「勉強会開催と販売資料の刷新」を選択します。

 

7.問題解決のプロセス⑤ー解決案の実行

解決案の実行の段階は、文字通り解決策を実行する段階であり、PDCAでいえば、Dに当たります。

解決案の実行段階でのポイントは、

ⅰ)わかりやすく素早く行動に移せる

ⅱ)極力負担を減らす

ⅲ)期限と結果の測定を明確にする

〇何時までに

〇誰が

〇何を行うか

〇結果・効果の測定時期

ⅳ)状況を共有する  というものが挙げられます。

 

解決策の実行は、事務の効率化のように、ルーティンに組み込まれている場合以外は、実務上新たな仕事が増える場合が多いと考えられます。

 

ここまでの段階で、解決策の実行に取り組んでもらうメンバーには、解決案の実行の必要性は十分に論理的に説明し理解を得ることが出来るはずですから、自信を持って素早く推進していただきたいと思います。

 

とは言え、負担は極力減らすべきですから、例えば、勉強会実施については、通常の打ち合わせ予定に合わせて実施する等の配慮も行っていきましょう。

 

又、実務で陥りやすいことは、効果検証が行われず、いつの間にか、なし崩しになっていくことです。そのために、結果・効果の測定をどのくらいの周期で行い、いつまでを期限に実行するのかを明確に決めておくことが必要です。

 

期限の終了時に、実行した解決策に効果が出ていないのであれば、区切りをつけて、別の解決策に移行しましょう。

 

すべてが成功する訳はありません。よく言われることですが、失敗しないということは挑戦しないということです。

 

A社の例でいえば、例えば、「勉強会開催と販売資料の刷新」を実行して、効果が上がらなかったとしても、代替案として「ブランドD関連サイトの刷新」が用意できていますので、気持ちを切り替えて、次に進めましょう。

 

8.まとめ

「問題解決」は、論理的に問題を解決する技術ですから、訓練すれば身に付けることが出来ます。

 

トヨタ自動車の「なぜなぜ5回」は海外では英語で5 whysfive whys)と呼ばれ、「なぜそうなったか」「なぜそう思ったか?」「なぜ気づけなかったか?」等となぜを5回以上繰り返すこともあることから、こうした名称で呼ばれます。

 

「問題解決」の技術が、企業としての仕組みに落とし込めることが出来れば、一番望ましいことかもしれません。仕事をする上で、必ず問題は発生します。

 

『問題は必ず解決することが出来る』という、マインドセットがあれば、論理的に考え抜くことで、突破点が必ず発見できます。 是非、失敗を恐れず問題解決に向けてチャレンジしてください。



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