Netpress 第2246号 法令ごとに異なる 「常時使用(雇用)する労働者」の定義とカウント方法

Point
1.それぞれの法令ごとに「労働者」の定義が異なり、所定労働時間や雇用期間によっては、労働者のカウントの対象に含めない場合もあります。
2.人数のカウントは、「事業場」を単位とするものと、「企業」を単位とするものがあり、法令ごとに異なります。


社会保険労務士法人
トムズコンサルタント
中山 祐介


労働関係の諸法令においては、常時使用(雇用)する労働者の人数を要件として、各種の規定が行われています。


ここでは、法令ごとに定義が異なる「労働者数のカウント」方法について解説します。

1.労働基準法

労働基準法が定める「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されています。つまり、契約社員、パートタイマー、アルバイトなどの呼称であっても会社が雇用し、賃金を支払う者は、すべて「労働者」となります。


これを踏まえ、「常時使用する労働者」の人数は、常態として使用している労働者の数で判断します。そのため、繁忙時期に臨時的に雇用する者や、一時的な欠員などは含みません。


なお、派遣社員については、派遣元(派遣会社)の労働者となるため、派遣先の労働者数には含めません。


労働基準法において「常時使用する労働者」について規定された主なものは、次の通りです。



内容
常時使用する労働者数
就業規則の作成・届出義務
【事業場単位】10人以上
1週間の法定労働時間の特例(44時間)
※商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業のみ

【事業場単位】10人未満
1週間単位の非定型的変形労働時間制の適用
※小売業、旅館、料理店、飲食店のみ(労使協定の締結・届出が必要)

【事業場単位】30人未満
中小事業主の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の猶予
※本猶予措置は、2023年3月31日で終了

【企業単位】
①小売業:50人以下
②サービス業:100人以下
③卸売業:100人以下
④その他:300人以下
※上記のほかに資本金(出資金)の基準もある


また、三六協定をはじめとする各種労使協定の締結当事者である「労働者の過半数で組織する労働組合」または「労働者の過半数を代表する者」の「労働者」についても、「常時使用する労働者」の人数で判断します。

2.労働安全衛生法

労働安全衛生法が定める「労働者」は、労働基準法が定める「労働者」と同義となります。しかし、事業場の規模を要件とする規定について「常時使用する労働者」をカウントするにあたっては、労働基準法とは異なり、派遣労働者を派遣元・派遣先ともに人数に含めて判断します。


労働安全衛生法において「常時使用する労働者」の人数によって事業場の規模を判定する主なものは、次の通りです(安全管理体制については、業種ごとに管理者の選任基準や委員会設置基準が定められています)。


内容
常時使用する労働者数
衛生管理者・産業医の選任、衛生委員会の設置
50人以上
定期健康診断結果報告書の提出
50人以上
ストレスチェックの実施
50人以上
労働者が臥床(がしょう)できる男女別の休養室の設置
50人以上または女性30人以上


なお、定期健康診断・ストレスチェックの実施が義務付けられている労働者は、期間の定めのない契約により使用される者(1年以上使用されることが予定されている者、1年以上使用されている者を含みます)であって、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の者とされています。

3.障害者雇用促進法

現在、障害者雇用促進法では、民間企業の法定雇用率が2.3%と定められています。


そのため、企業単位で「常時雇用する労働者」が43.5人以上の事業主は、1人以上の障害者を雇用することが義務付けられています。


この「常時雇用する労働者」は、次のようにカウントすることとされています。



週の所定労働時間
労働者数の算定
1年を超えて雇用される見込みがあるか、1年を超えて雇用されている労働者
30時間以上
1人
20時間以上30時間未満
0.5人
上記以外


4.女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法

女性活躍推進法や次世代育成支援対策推進法では、企業単位で「常時雇用する労働者」が101人以上の事業主について、行動計画の策定・届出や情報公表等が義務付けられています。


この「常時雇用する労働者」は、名称にかかわらず、次のいずれかに該当する労働者を指します。



期間の定めなく雇用されている者

一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇い入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者



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