「質問の仕方」が分からない若手のための改善方法

最近、質問をあまりしない若手のビジネスパーソンが増えていると聞きます。一方、若手のビジネスパーソンにお聞きすると、
ⅰ)変な質問だと思われて場の雰囲気を壊しそう。
ⅱ)こんなことも知らないのかとバカにされそう。
ⅲ)周りが忙しそうで質問できる雰囲気でない。
などが質問できない主な原因として挙がってきます。
本記事では、若いビジネスパーソンの方を対象に、上司や先輩への質問を行う場合の注意点と質問の仕方についてお話します。

1.質問がしにくいと感じるのはなぜか

「変な質問だと思われて場の雰囲気を壊しそう。」「こんなことも知らないのかとバカにされそう。」などの心理的負担が、あなたの属している課・チーム全体で起こっている場合は、チームの「心理的安全性※」に問題があり、皆さんというより、課・チームのリーダーは早急に改善策をとる必要があると言えます。

 

※「心理的安全性」とは、『率直な発言や、懸念や疑問やアイデアを誰にでも安心して発言できる状態のこと』と定義されています。

 

そうではなく、メンバーであるあなたと、上司や先輩との間に限ってのことであれば、「信頼」という個人同士の心理的現象に問題があるか、質問の仕方に問題がある可能性が考えられます。

 

「周りが忙しそうで質問できる雰囲気でない。」という声は、確かにたくさん耳にしますが、信頼関係が構築されていれば、皆さんの困った様子を察知して、助けてくれるでしょう。

 

また、相手の状況に配慮した質問の仕方を知っていれば、遠慮しすぎる必要もないのです。では、信頼を得るためにどうすればよいか考えていきましょう。

2.質問がしやすい環境を作る信頼関係

 質問がしにくいと感じる場合、あなたと上司や先輩との間に、信頼関係が構築できていない可能性があります。

上司や先輩は、新入社員や若手社員の質問に答えてあげることは義務とも言えますが、日々忙しい中で、業務との優先順位を考えれば、信頼関係の有無によって、その順が変わることは、理解しておかなければなりません。

『信頼』とは「信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち」のことをいいます。


又、信頼とよく似た言葉に『信用』があります。

『信用』とは「確かなものと信じて受け入れること。それまでの行為・業績などから、信頼できると判断すること。」を言います。

 

つまり、『信頼』はその人を評価するにあたり、その人自身の人柄や考え方、立ち振る舞いなどに重きをおいた評価であり、一方、『信用』はこれまでの行為や業績、すなわち実績や成果に対する評価から生まれるものです。

 

経験や実績の少ないビジネスパーソンにとっては、職場でまず『信用を得る』より『信頼を得る行動』を取ることはとても大切です。

 

信頼される人の特徴をいくつか挙げます。

 

(1)身だしなみやマナーがしっかりしている

『人の印象は見た目9割』という言葉をお聞きになったことがあると思います。この言葉は、「メラビアンの法則※」と呼ばれる心理学的研究が根拠といわれています。

 

実は、俗説あるいは拡大解釈なのですが、人は見た目に大いに影響を受けるのは間違いないでしょう。9割とは言わないにしても、「信頼される人」になるためには、やはり見た目をおろそかにすることはできません。

 

清潔感のある身だしなみやマナーは重要なポイントです。特に、初対面の場合は、第一印象を決めるにあたって清潔感は最重要視される項目と言われています。

 

※「メラビアンの法則」とは

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であるアルバート・メラビアンが行った実験についての俗流解釈です。

 

メラビアンが感情や態度について矛盾したメッセージを人が発したときの他人の受けとめ方について実験した結果、人の話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合で影響があったと言われています。

 

この内容が次第に一人歩きをし、「話の内容より見た目が一番重要」という結論が導き出されると言う解釈が有名になってしまいました。

 

(2)時間、納期などの約束を守る

社会人として、時間や納期などの約束を守るということは基本中の基本です。守れない約束はしない、約束する際は不確定要因なども考慮して最善の注意を払う。

 

それでも、もし遅れそうなときには、ウソをついたり、ごまかしたりせず、自分から報告する誠実さが信頼に繋がります。

 

上司や先輩から仕事を依頼された場合、期限を言われないこともあります。そのような場合には、期限を確認することで、「しっかりしているな」と感じてもらえます。

 

(3)周囲を見渡し、チームのために動く

言われたことだけやる、自分のことしか考えていないようでは信頼される人にはなれません。任された仕事を期限内にできた場合は「期待値通り」です。

 

そこから、常にチームが望んでいること、自分はチームのために何を提供できるかを考えて行動できる人は相手の「期待値以上」のパフォーマンスを生み、信頼を得ることができます。

常に少し先を読む、周囲を見渡す習慣を身につけましょう。

 

(4)責任感があり、ムラがない

責任感というと、最後まであきらめない、人のせいにしないということが一番に挙げられるかと思います。

 

また、人のせいにしないということは、間違った時に誠意をもって謝罪することも意味します。それ以外にも「ムラのない人である」ということも重要です。

 

例えば、とても熱心に仕事に集中している時と、気分が乗らずダラダラしている時の差が激しい人は、気分に影響を受けやすい「ムラのある人」と感じられ、例え、パフォーマンス自体は良好でも、「責任を持って仕事に取り組んでいる」という印象を周囲に与えることはできません。

 

(5)オープンマインドを持つこと

「オープンマインド」とは「自分をさらけ出し他を受け入れる心」のことです。心をあけ放ち自由な気持ちでいること、また素直な心を持つことを意味する言葉です。

 

それと同時に「他人や他の物事に対しても興味を示し、積極的に受け入れる」という意味も持ち合わせます。

 

自分の考えや主張が必ずしも他人と同じであるとは限りません。そのため、他人を受け入れ、相手の関心事や欲求を相手の立場で理解することが必要です。

 

(6)自分の意見を言う

周囲に合わせてばかりで、自分の意見を言わない人も信頼してはもらえません。「何を考えているかわからない」あるいは「何も考えていない人」に見えるからです。

 

「協調性」「相手を尊重する」というのは「自分の意見を言った上で」成立することです。自分の意見はきちんと伝えるようにしましょう。

 

(7)報連相をしっかり行う

ひとりで成立する仕事はありません。報連相ができない人というのは、仕事を抱え込みがちになります。

 

その結果、納期に間に合わないなどという問題が起こり、関係者に迷惑をかけてしまうことになってしまいます。

 

仕事内容は常にオープンにして、報連相をマメに行い、必要に応じて周囲の助けを求めて進めていきましょう。

 

以上の行動を取ることによって、先輩や上司との間に信頼関係が生まれ、良い人間関係となり、皆さんが困っている時に手を差し伸べてくれ、質問にも的確に答えてくれるはずです。

では、次に質問の仕方についてご説明します。

3.PDCAに合わせた質問の仕方

適切な質問の仕方は、業務の進捗状況で異なります。 例えば、作業を始める段階での疑問、作業中の疑問、作業を改善するための疑問など、状況によって質問を的確に行うことが必要です。

 

これを間違うと、「今この段階でそれを質問するのか」という反応が返ってくるかもしれません。

 

業務を継続的に改善していく仕事を進め方としてPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の4段階を繰り返していくPDCAサイクルがあります。

 

それでは、P・D・C・Aのそれぞれの段階に沿って、質問の仕方を説明していきます。




(1)Planの質問―相手の意図やニーズを把握するための質問力 5W2H―

 

上司から仕事の依頼を受けた場合を想定してみましょう。よく皆さんが経験することとして、依頼が漠然としていることはないでしょうか?

 

そのような場合、上司の頭の中には前提や条件があるのですが、皆さんに十分な説明ができていません。したがって、上司の意図やニーズを把握する質問を行う必要があります。

 

次の5W2Hを利用して質問を行うとよいでしょう。

 

 


5W2Hの中で、特に重要なのは「Why」と「When」です。

 

「Why」の確認が不十分な場合、ポイントが外れ、やり直しとなる可能性が高くなります。また、「When(期限)」によっては、仕事のクオリティーのレベル感や手持ちの仕事との調整・優先順位を上司と相談する必要があるからです。

 

質問には相手に考えさせるという働きがありますので、「Why」と「When」を質問することによって、上司は、もう一度依頼内容を具体的に考える機会となり、「最終の会議資料だから精緻に」とか「ディスカッション資料だからトピックスだけで」ということや「うーん。この仕事を先にお願いしたい」というようなことが起こることもあります。

 

但し、「Why」については注意も必要です。なぜなら「Why」には、決して相手を責める気持ちはなくても、尋問や詰問の印象を与える可能性があるからです。

 

「We視点」で、目的を達成するための質問となるよう心掛けてください。「どうしてこの資料を作らないといけないのですか?」と質問するより、「何に使う資料として作ればいいでしょうか?」の方が「We視点」での質問となります。

 

(2)Do・Checkの質問―不明点が出た時や確認のために質問するー

具体的に作業を開始してみて、不明点が出たり、方向性に迷いが出たりすることはよくあります。その場合は、適したタイミングを選んで質問を行いましょう。

 

タイミングには、作業上のタイミングと質問相手のタイミングの2つがあります。

 

作業上のタイミングで行う質問の注意点

作業上のタイミングでは、中間報告を兼ねて確認やアドバイスをもらう質問をします。

よく見受けられるのは、「ここまで仕上げる前に相談して欲しかった」と上司や先輩から言われるケースです。完成品を一度の提出でOKをもらう仕事を目指すのは、すばらしいことではありますが、現実的には難しいことです。

 

ある程度作業を行った上で、中間報告を行うことをお薦めします。 

その際の留意点を説明します。




質問は「短く」がベストです。前置きが長すぎたり、前提が不明瞭だと、聞かれた方はこれらを踏まえて意見を言うことになりますので、回答がしにくくなります。

 

良い質問を行うことで、相手が言葉にしていないニーズや意向やノウハウを具体的に把握することができ、

●疑問が解消されることで、自分自身も安心して仕事を進められる。

●間違いや誤解を防ぐことで、仕事の手戻り(やり直し)を少なくする。

という効果以外に、

●上司も進捗状況が確認でき、この人に任せて大丈夫という信頼感が高まる。

という効果も期待できます。

 

作業上のタイミングで行う質問の注意点

質問相手のタイミングとは、相手の状況や都合に配慮したタイミングで質問を行うことです。相手が本当に忙しそうにしていて、眉間にしわが寄っている時に質問しても「後にして欲しい」と言われるのは当然ですし、配慮がないと思われても仕方ありません。

 

一日のスケジュールが始まる前の朝の段階で、午後に時間をもらえるよう事前に頼んでおくか、どうしても必要な場合は、配慮の言葉を添えて、短めに質問するのがよいでしょう。

 

質問に答えてもらった際に、忘れずに行って欲しいことは、相手の答えやアドバイスに対して、反応や共感のキーワードを添えることです。

 

意見やアドバイスを要約して伝えることや「その方向でまとめた方が、お客さまにメリットが伝わりますね」や「疑問点が解決しました」などの短い共感のキーワードを添えることで、相手はあなたの理解度を測ることができますし、次の質問にも、対応してあげようと感じてくれるはずです。

 

(3)Actionの質問

Actionの質問は、今後の仕事への改善のために行うものですから、質問相手は自分自身になります。

 

具体的には、

●「自分の仕事は、期待値を超えているか?」

自分の取り組んでいる仕事を一歩引いた視点から冷静に自己評価することは大切です。 期待値未満であれば、何が足りないかだけではなく、上手くやれているポイント認識することは重要です。

 

●「どうしたら、さらにパフォーマンスを上げられるか?」

上手くやれているポイントをより強化し、足りない部分は改善策を図りましょう。

 

●「今回の仕事から何を学んだか?」

経験を知識として定着化させます。

 

●「今後の仕事にどう活かしていくか?」

今回の仕事から得た知識や経験を次の仕事への活かしていくイメージをしっかり持つことで自分自身のモチベーションが向上し、自己成長を促すことができます。

4.まとめ

今回、質問の仕方だけではなく、信頼関係の築き方についてもご説明しました。


その理由は、信頼関係が質問が出来る環境を作るだけでなく、「質問」が自分自身の「成長」を促し、そして、「人と人とのつながり」を強化する力を持っていることを若手の段階で、皆さんに理解して欲しかったからです。


信頼関係がなければ、質問がしにくいと感じますが、「質問」には、お互いの理解を深め、信頼関係を強める働きもあるのです。


本記事を参考に、人との信頼関係を築きながら物事を成し遂げていくことの大切さに気付き、自分自身を成長させる「質問力」を身につける努力を進めていただければと思います。


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