2018年ヒット商品番付 平成最後の年、未来への希望が芽生えた1年

2018年は、翌年4月30日に天皇陛下の退位が決まったことにより、実質的に平成最後の年となった。また、地震や台風、夏場の猛暑など度重なる自然災害に見舞われた年であった。
日本経済は、総じてみれば緩やかな回復傾向を維持し、12月には景気回復局面の長さが戦後最長(73カ月)に並ぶ見込みである。家計や企業の所得・収益環境は総じて良好で、個人消費や設備投資は引き続き増加基調をたどると見込まれる。

そうした状況の中、「未来への希望」が芽生えた1年でもあった。京都大学特別教授の本庶佑氏のノーベル医学生理学賞受賞は、国民を大いに湧かせた。また、スポーツでは多くの活躍が見られた年でもあった。2月に開催された平昌五輪では、金メダルを獲得したスピードスケート女子500mの小平奈緒選手や、フィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手をはじめとした選手たちが活躍し、冬季としては過去最多のメダルを獲得。また、アメリカ大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに入団した大谷翔平選手が、投手・打者の二刀流でメジャー史上初となる「10試合登板、20本塁打、10盗塁」の記録を残し、日本人4人目となる新人王(ア・リーグ最優秀新人)に輝いたほか、女子テニスの大坂なおみ選手が9月の全米オープンで優勝、日本人初となる四大大会優勝の栄冠を手にした。

このほか、人生100年時代を見据えた新しい働き方・生き方の追求、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会や2025年大阪・関西万博など新たな時代に向けた取り組みが着々と進められた1年でもあった。

世界に見せた日本人の力

2018年も世界で日本人が活躍を見せた年であった。その代表が、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑京都大学特別教授だろう。本庶氏の受賞は、体内の異物を攻撃する免疫細胞の表面に「PD-1」という免疫の働きを抑える分子を発見したことによる。この発見は2012年に同賞を受賞した山中伸弥京都大学教授曰く「ペニシリンに匹敵する発見」。同研究は、免疫ががん細胞を攻撃し続けられるようにした画期的ながん治療薬「オプジーボ」の開発にもつながっており、世界中のがん患者に光明をもたらした。


また、海外における日本人スポーツ選手の活躍も目立った。9月には女子テニスの全米オープンにおいて大坂なおみ選手が優勝し、日本人初となる四大大会優勝の栄冠を手にした。大坂選手のグランドスラム制覇は、祖父が根室に住むこともあり、北海道胆振東部地震に見舞われた地元の人々を勇気づけた。また、アメリカ大リーグのロサンゼルス・エンゼルスに入団した大谷翔平選手は投手・打者の二刀流で活躍。メジャー史上初となる「10試合登板、20本塁打、10盗塁」の記録を達成したほか、ア・リーグの最優秀新人(新人王)を圧倒的な支持で獲得。大リーグにおける日本人の新人王はマリナーズで活躍したイチロー外野手以来17年ぶり、4人目となる快挙で全米の人々の注目を集めた。


2月に開催された平昌五輪でも、金メダルを獲得したスピードスケート女子500mの小平奈緒選手や、フィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手をはじめとした選手たちが活躍。羽生選手においては、冬季五輪の個人種目で日本人初の連覇を成し遂げ、個人で史上最年少となる国民栄誉賞が授与された。ほかにも、大会直前で監督が解任される事態となったサッカー日本代表も、FIFAワールドカップ ロシア大会において、新たに代表監督となった西野朗氏の指揮で奮闘。初のベスト8入りは逃したが、ベスト16という健闘を見せた。その他、ゴルフのTOTOジャパンクラシック大会で日本人として7年ぶりの優勝を飾った畑岡奈紗選手、卓球のオーストリアオープンでは、森薗政崇選手、大島祐哉選手のペアが男子ダブルスを、早田ひな選手、伊藤美誠選手のペアが女子ダブルスをともに制するなど、さまざまな種目で日本人選手が活躍、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に大きな期待を持たせてくれた1年となった。


国内スポーツでも、夏の甲子園が記念となる100回目を迎え(第100回全国高等学校野球選手権記念大会)、大会を通した入場者数が101万5000人と初の100万人を突破。試合においても、優勝の大阪桐蔭高等学校が史上初となる2回目の春夏連覇を果たしたほか、優勝経験のない東北においてその座に迫った準優勝の秋田県立金足農業高等学校の選手をはじめとした新たなヒーローが多数誕生。10月に行われたプロ野球ドラフト会議でも46名(内育成枠9名)の球児達が各球団より指名されるなど、今後のプロ野球界が楽しみな結果に。平成最後を飾るに相応しい大会となった。


文化面でも、映画監督の是枝裕和氏が「万引き家族」で第71回カンヌ映画祭コンペティション部門の最高賞となるパルム・ドールを受賞したほか、第36回ミュンヘン国際映画祭においても、シネマスターズ・コンペティション部門でアリ・オスラム賞(外国語映画賞)を受賞し、高い評価を得た。


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デジタルの世界も着実に進歩

リアルな世界だけではく、デジタルの世界にまでスポーツは進出している。欧米ではすでにメジャーとなっている「eスポーツ」が日本でも本格化、2月には一般社団法人日本eスポーツ連合が発足し、本格的な普及が始まった。eスポーツとはエレクトロニック・スポーツのことで、複数の人間で対戦するコンピュータ・ゲームをスポーツ・競技として捉えたもの。海外では高額な賞金が出る大会が多数開かれている。8月にインドネシアで開催されたアジア最大のスポーツの祭典「第18回アジア競技大会」では初めてデモンストレーション競技として採用。KONAMIのサッカーゲーム「ウイニングイレブン2018」で日本チームが優勝して話題となった(写真は6月に行われた東アジア地域予選の模様)。2017年時点での日本における市場規模は約5億円と大きなものではないが、ゴールドマン・サックスは2022年には世界で30億ドル規模になると予測。それに向けて、国内でもeスポーツの環境整備が急ピッチで進められている。


ゲームがスポーツ化する一方で、ICT教育に役立てようという動きが見られる。「Nintendo Labo」は、段ボールでピアノや釣り竿などの玩具を組み立て、完成後はNintendo Switchと合体してゲームとして遊べる、手づくりとデジタルの融合を図ったもの。4月20日の発売から9月末までの間にシリーズ全体で世界累計165万本が販売され、今後の展開も期待されている。


デジタルの世界では当然、AIの進化も加速している。都市が巨大化、グローバル化する中で発生する、さまざまな交通問題へのソリューションとして注目される「次世代モビリティサービス」。そのための自動運転やインターネット常時接続を具備したコネクテッドカーなどを内包するMaaS(Mobility as a Service=サービスとしてのモビリティ)に関する取り組みが、各自動車メーカーとも加速している。特に、ソフトバンクとトヨタ自動車が10月に戦略的提携を行って両社で新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を設立することを発表。新しいモビリティサービスの構築に向けた具体的な動きが始まったことは記憶に新しい。


AIチャットボット」も注目されている。チャットボットとはインターネットを通じてリアルタイムで会話する「チャット」と、人間に代わり一定のタスクや処理を自動で処理する「ボット」をかけあわせた言葉で、テキストや音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのこと。WOWOWがカスタマーサポートで導入したほか、サイバーエージェントでは提供するネットサービス「Ameba」のヘルプページに活用。メールでの問い合わせ時に比べ、解決時間を大きく短縮し、チャットならではの親しみのある対応で、顧客満足度の向上を実現している。また、東京都水道局は、お客さまサービス向上のためにAIチャットボットを導入した「水滴くん相談室」をホームページ内に開設。沢井製薬は医療関係者向けに製品情報を提供するWebサイトに導入し、自動回答で必要な情報に誘導するサービスを開始するなど、さまざまな分野での利用が本格化しつつある。

多様化するライフスタイル

人生100年時代」を迎え、人々のライフスタイルも変わりつつある。そのきっかけとなった一つが、東洋経済新報社が2016年に刊行した翻訳書『LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略』。2018年11月現在で30万部を超えるロングセラーとなった同書が提示した、「平均寿命は延び続け、人生100年時代がやってくる。個人が長い人生を前提に生き方を変える必要がある」という考え方が世間に浸透し、政府においても、「人生100年時代構想会議」が2018年6月「人づくり革命 基本構想」を取りまとめるなど、超長寿社会において人々が活力をもって活動するための構想が練られている。


その一方で、政府主導の「働き方改革」も浸透しはじめ、残業の在り方や休み方に関する活発な議論が行われているほか、1月には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成。さらに6月には参議院本会議で「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」(働き方改革関連法案)が可決・成立。2019年4月から順次施行されることになっており、これまでの働き方とは明らかに違う考え方が芽生えつつある。


そうした流れの中、「平成の歌姫」安室奈美恵の引退は、ライフスタイルに対する考え方が確実に変わっていることを示す象徴的な出来事でもあった。1992年にデビューし、25年間をトップアーティストとして走り続け、ミリオンヒットを次々と世に送り出したが、自らの40歳の誕生日となる2017年9月20日に翌年の芸能界引退を発表。今年9月16日をもって表舞台から姿を消した。引退をネガティブなものではなく、一つの通過点だと捉え、この先の人生のほうがもっと楽しいことが待っており、長い、とした安室奈美恵。その生き方は惜しまれつつも共感を呼び、8月29日発売の最後の映像作品となったライブDVD & Blu-rayディスク(BD)「namie amuro Final Tour 2018〜Finally~」は、オリコンチャートで初登場1位を獲得。発売初週売上はDVD、BDともに音楽映像作品の歴代最高となるDVD68万1000枚、BD61万1000枚の合計129万2000枚を記録。音楽映像作品のDVD、BDの初週売上合計が100万枚を突破したのも史上初のことで、最後まで「平成の歌姫」の名に恥じない貫禄を見せつけた。


人々のライフスタイルが変わりつつある中、変化を見せているのはインターネット上での消費行動も同じだ。Amazonや楽天を利用したインターネットショッピングが当たり前となっているが、最近ではインターネット上で生放送の動画を配信し、動画中で商品を紹介・販売する「ライブコマース」による消費も盛んになってきた。メルカリの提供する「メルカリチャンネル」をはじめとした各種サービスが展開されており、これまでのテレビ通販とは違い、配信者とのコミュニケーションがとれるといった購買体験の向上などを理由に、この流れは続くと考えられている。


ネット上の買い物だけでなく、リアルな世界でもキャッシュレスが加速中だ。インターネットを活用した支払サービスが多様化するだけでなく、これまでのクレジットカードだけでなく、電子マネーやQRコードの活用が進む。特にQRコード決済では、LINEや楽天、NTTドコモなどが参入したほか、国内3大メガバンクもQRコード決済の規格統一で連携を図る動きを見せる一方で、対応する店舗も増加。経済産業省もオールジャパンで日本のキャッシュレスを推進するために、民間企業有志の支援を受け、業界横断組織として7月に一般社団法人キャッシュレス推進協議会を設立した。また、政府は来年10月の消費税率10%への引き上げに伴う景気対策の原案の中に、キャッシュレスで買い物をした場合にポイント還元を行うといった暫定措置を含めるなど、キャッシュレスの波がいよいよ本格化してきた。

変わる人々の嗜好

2018年は、これまでとは少し違った傾向のものが人気となった。例えば、NHK総合テレビの「チコちゃんに叱られる!」。岡村隆史をはじめとする大人の回答者たちに、当たり前過ぎてかえって答えられないようなクイズを出題。正解できなかった大人に対して、好奇心旺盛でなんでも知っている5歳の少女・チコちゃんが「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱り飛ばす内容だ。2017年より単発放送が始まり、2018年4月13日からレギュラー化。最近のテレビ業界では難しいとされる三世代視聴を実現させている評価があるほか、視聴者から、「チコちゃんに叱られたい」という手紙が寄せられたり、夜の本放送より翌日土曜朝の再放送のほうが視聴率が高いといった「珍現象」も話題となっている。


また、インターネットの世界でも、YouTube上で動画等の配信を行う架空のキャラクター「バーチャルユーチューバー」が増加。リアルのアイドルを凌ぐ人気となっている。ユーザーローカルによると、2017年12月から数が増え始め、9月12日には5000人を突破。動画再生回数も7月10日時点で7億2000万回を超え、バーチャルユーチューバーの草分けとされる「キズナアイ」はテレビにも進出して話題となるなど、画面の中に映る人が必ずしもリアルな人間である必要はなくなってきたようだ。


ほかに、高刺激食品の売上が伸びたのも印象的な出来事だった。これまであった微炭酸飲料や低アルコール飲料に代わり、日本コカ・コーラの「ザ・タンサン」といった強炭酸飲料や、サントリースピリッツのチューハイ「-196℃ストロングゼロ」やサッポロビールの「サッポロLEVEL9贅沢ストロング」といった高アルコール飲料が人気を得たほか、辛さを売りとした麻辣(マーラー)ブームが到来。湖池屋の「カラムーチョ」の昨年6月から1年間の売上が前年同期間比2割増加、さらに猛暑の影響かセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 辛旨味噌」「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 汁なし麻辣麺」が品薄になるなどし、これまでの、辛さは一部のマニア向けといった印象を大きく変えた感がある。

平成最後に新たな時代へと繋がる一歩

また、2018年のもっとも象徴的な出来事の一つは、築地市場から豊洲市場(写真)への移転ではないだろうか。水産物の年間取引金額およそ4400億円、取扱量44万トンを誇る築地市場。江戸時代から続いた日本橋の魚河岸が関東大震災で壊滅したことを契機に開かれたこの市場は、「日本の台所」として我が国の食を支え続けた。そんな築地市場が83年の歴史に幕を閉じ、10月11日、東京都江東区に豊洲市場が開場した。開場初日は周辺道路の渋滞や場内でのぼや騒ぎなどの多少の混乱は起こったが、取引自体は概ね順調なスタートを切った。開場後の10月13日からは一般客が多数豊洲市場に来訪。東京都によると、朝10時の開始から終了1時間前の16時までに4万人以上が訪れたといい、移転前の築地市場で名店として知られたすし店などに足を運ぶなど、すでに人気スポットとして認知されつつある。


2000年代から行われている日本橋再開発にも世間の関心が集まった。2018年は江戸から東京府へと変わって150年の節目の年。その江戸の中心だった国の重要文化財「日本橋」の頭上を走る首都高速道路の地下化計画が本格化したことが話題となったが、実現すれば街の景観は大きく変わる。また、2019年秋に開業予定の商業施設「COREDO室町テラス」は、今年9月に開業した日本橋高島屋S.C.や、段階的に改装を進め10月に第1期改装部分を開業した日本橋三越本店とともに、日本橋エリアの情報・文化の発信拠点や新たなランドマークとして期待が大きい。ちなみに、日本橋高島屋S.C.の開業日には、オープン前に地下鉄直結のエントランスに約1000名もの人々が集まり、注目度の高さを示した。


こうしたスポットには日本人のみならず、大勢の外国人も足を運んでいる。「POCKETALK(ポケトーク)」は、そうしたインバウンドに向けた強力なツールとして期待が大きい。POCKETALKは世界74言語に対応した小型翻訳機。高い翻訳精度と操作が簡単なことから、インバウンドに対する接客ツールとしても注目され、東京駅構内の商業施設や東海道新幹線全17駅に導入。こうした法人需要のほか、個人にも人気で、発売したソースネクストは2020年までに50万台の販売を目指すとしている。


 2018年も年末近くになり、嬉しいニュースが舞い込んできた。11月23日に行われた博覧会国際事務局(BIE)における加盟国の投票の結果、2025年の国際博覧会が大阪で開催されることが決定したのだ。名称は「2025年大阪・関西万博」。この万博が目指すものは2つあり、1つは2015年9月に国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」において、持続可能な開発目標として掲げられた17の目標(SDGs)が達成された社会をめざすこと。もう1つは日本の国家戦略となるSociety5.0の実現だ。Society5.0は狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、5番目の新しい社会(超スマート社会)のことで、ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取り組みにより、人々に豊かさをもたらす社会のことを指す。これらを目指す一方で、大阪・関西の地域経済はもちろんのこと、日本経済全体の活性化も見込まれており、2025日本万国博覧会誘致委員会によれば約2兆円の経済波及効果が期待されている。平成最後の年、そして次の時代を考えるにあたり、まさにふさわしい話題と言えるだろう。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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