2015年ヒット商品番付 戦後70年 ~時代の節目~

戦後70年を迎えた2015年。今後の社会や経済に大きな影響を与える出来事が多く見られ、時代の節目を感じさせる1年であった。例えば、9月には、集団的自衛権の行使等が盛り込まれた「平和安全法制関連2法」が成立した。これにより、従来の安全保障に対する方針が転換されることとなり、成立を巡って世の中で議論が巻き起こった。また、公職選挙法等が一部改正され、来年6月19日以降、満18歳以上に選挙権が認められることになった。これは1945年に満25歳以上から20歳以上に引き下げられて以来70年ぶりのこと。こうした出来事は、今年日本に訪れた大きな時代の節目を象徴したものではないだろうか。

そんな2015年は国際舞台での日本人の活躍が目立った。今年もノーベル賞では、大村智氏(北里大学特別栄誉教授)が寄生虫による感染症に対する新治療法の発見で医学生理学賞を、梶田隆章氏(東京大学教授、同大学宇宙線研究所長)がニュートリノに質量があることを発見したとして物理学賞を、それぞれ受賞した。さらにスポーツの分野においては、体操男子日本代表が世界選手権で37年ぶりに団体金メダルを獲得。来年夏のリオデジャネイロ五輪に弾みをつけた。また、ラグビー日本代表はワールドカップ・イングランド大会で強豪・南アフリカを破るなど快進撃を見せ、2019年に日本で開催される予定の次回大会への期待が高まっている。
一方、国内では3月に北陸新幹線が金沢まで開業。9月13日までの半年で利用者数は約482万人と、前年同期の在来線特急の約3倍となり、沿線各県に大きな経済効果をもたらした。
時代の節目を迎え、さまざまな変化が起きている日本だが、来年以降、それがよりよい方向にむかうことを期待しつつ、今年のヒット商品番付を発表したい。

グローバルに活躍する日本人

国際舞台での日本人の活躍が目立った2015年。例えば、今年もノーベル賞の自然科学分野において2名の受賞者を輩出した。大村智氏(北里大学特別栄誉教授)は、寄生虫による感染症の新治療法の発見でノーベル医学生理学賞を受賞。大村氏の研究は寄生虫薬の開発に貢献し、世界中で多くの人の命を救っている。また、梶田隆章氏(東京大学教授、同大学宇宙線研究所長)は、ニュートリノに質量があることを発見したとしてノーベル物理学賞を受賞した。梶田氏の研究は、今後、宇宙の成り立ちを解明するための大きな足がかりとなるものだ。ノーベル賞については2000年以降、日本人の受賞者数はアメリカに次いで2位。日本の基礎研究のレベルの高さを物語っている。


さらに東京五輪を控えたスポーツ界でもめざましい成績が相次いだ。例えば、世界選手権で37年ぶりに団体金メダルを獲得した体操日本男子代表。エース・内村航平選手も個人総合6連覇と前人未踏の記録を達成、さらに種目別もあわせて3冠の栄誉に輝き、来年のリオデジャネイロ五輪に向けて、大きく弾みをつけた。

また、ラグビー日本代表もワールドカップ・イングランド大会で過去2度の優勝を誇る南アフリカに勝利するなど、史上最多となる3勝をあげ、快進撃を見せた。加えて、7人制ラグビーでは男女ともにリオデジャネイロ五輪の出場を決めており、19年にはワールドカップが日本で開催されることも含め、日本ラグビーの今後のさらなる躍進が期待される。


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消費面でも勢いのある話題が

北陸新幹線が3月14日に金沢まで開業し、日本に新たな動脈が加わった。この結果、首都圏から北陸方面へのアクセスの利便性が上がり、沿線各県に大きな経済効果が見込まれている。宿泊費や飲食費などを含めると、石川県で年間約124億円、富山県で約88億円と予測され、さらなる消費活性化が期待される。


出版界においても大型ヒットが続いた。昨年末から今年前半にかけては、トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』がビジネスマンを中心に売上を伸ばした。内容はフランスの経済学者であるピケティ氏が、世界的に格差社会を生み出している資本主義の未来を見据えたもの。所得の分配と経済成長の今後について論考しており、登場する数式「r>g」(r=資本収益率、g=経済成長率)は特に注目された。5,500円(税別)といった高額書ながら、発行部数は11月現在で専門書としては異例の14万部超えとなっており、さらに関連書籍も多数出版されるなど、広がりを見せている。文芸書ではお笑いコンビ・ピースの又吉直樹氏の『火花』が大ヒットとなった。新人ながらベストセラー作家に匹敵する初版15万部を発行。その後、作品は芥川賞を受賞し、11月時点の発行部数は累計で239万部に達している。さらにメディアミックス化も進んでおり、11月には朗読CDを発売したほか、2016年には映像化作品が配信される予定であり、まだまだ勢いは衰えない。


また、東の前頭4枚目に選定した中国人観光客による「爆買い」は世間に大きなインパクトを与えた。2月の春節休暇の期間に日本で消費した額は約1,125億円、4月の清明節では約1,313億円に上り、あまりに買われ過ぎたことで、日本の消費者が品薄で購入できないなどの現象も一部で見られた。さらに訪日外国人客数も10月末時点で1,631万人と、1月からの累計で過去最高を更新し、インバウンド消費も着実に伸びていることは、観光立国を目指す日本としては今後に向けた明るい材料といえる。

さまざまな分野で大きな変化

戦後70年の節目となった2015年は、さまざまな分野でこれまでの時代と一線を画す大きな変化が見られた1年でもあった。技術面では、7月から正式に運用が開始された新型の気象衛星「ひまわり8号」が注目された。センサーの性能が従来機より大幅に向上し、カラー撮影にも対応するなど、現時点で世界最高の実力を保持している。その能力は、昨今の異常気象に備えるべく、台風の進路予想の精度向上やゲリラ豪雨などの監視に使われ、今後の災害対策に大きな武器となるだろう。

また2014年12月に発売されたトヨタ自動車の世界初の量産型燃料電池自動車「MIRAI」。約3分の水素充填で650kmの走行を実現し、環境負荷を最小限に抑えた未来の乗り物として注目を集めた。またトヨタ自動車は、自社の持つ燃料電池車関連の5,600に及ぶ特許を一定条件で無償利用可能にするなど燃料電池車の普及に努めており、日本の技術が世界のエコカー普及の牽引役を果たす。


テレビドラマにおいては、時代の変化の中をたくましく生きる主人公たちに共感が集まった。例えば、2015年度下半期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」。京都の豪商の家に生まれた女性が、男性社会の中で苦労しながらも、銀行経営を引き受けたり、日本初の女子大学を設立するなど、近代日本における女性の社会進出を描いたストーリーだ。実在の女性実業家をモデルにしており、加速する女性活躍推進を背景に、高視聴率が続いている。

また、「天皇の料理番」(TBS)も、天皇の料理番(宮内省大膳職司厨長)・秋山徳蔵の青年期から司厨長になるまでを描いたもので、戦後70年の節目の作品として健闘し、今年の日本民間放送連盟賞テレビドラマ部門で優秀賞に輝いた。同じTBSの「下町ロケット」も高い視聴率を保っているが、こちらは中小企業の経営者と従業員が「ものづくり」の力とプライドをもって厳しい状況を切り開いていく姿が感動を呼んでいる。


また、年輩の人々への浸透はこれからだが、従来型の商品・サービスに変わる新たな消費の主役が見えてきたのも今年の特徴だ。例えば、インターネットを介した定額制音楽配信サービスが多数登場し、音楽業界に新しい旋風が巻き起こっているのもその一つ。月額500〜1,000円程度で最新曲も含めた膨大な楽曲が聞き放題となるというサービスで、これからの主役を担うことも予想される。国内外から多くの供給会社が参入しており、若者たちからの期待も高く、今後、いかにサービスを定着させるかが各配信業者の課題だ。


さらに若者たちの間で高い人気を見せているのが、SNSなどで使用するキャラクターを作成できるアバター作成サービス。なかでも、株式会社サンリオエンターテイメント提供の「ちゃんりおメーカー」は、サービス公開からわずか10日で580万人がダウンロード。当初は期間限定のサービスであったが、想定外の人気を集めたため期間を延長。またネット年賀状サービスを提供する会社と提携し、作成したアバターを年賀状で使えるようにするなどのサービスを展開、ネットとリアルの融合で新しい市場を狙う。


社会制度も大きく変わっていく。10月から通知カードの送付が始まったマイナンバー制度は、公平・公正な社会の実現や行政の効率化、国民の利便性の向上を目的にしたもの。これらメリットが期待される一方で、個人情報漏洩の懸念等から企業には従業員や取引先のマイナンバー管理の徹底が求められており、実質的な運用開始となる来年度に向け、政府による今後の詳細な運用がどのようになるかが注視されている。


また、先頃、大筋合意したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、これまでの貿易のあり方を大きく変えるものだ。太平洋を取り囲む12カ国間でモノやサービス、投資などが可能な限り自由に行き来することで、日本のGDPに対する押し上げ効果は3.2兆円と試算されており、期待が持たれている。


「プレミアム商品券」も新しい行政サービスの一つのあり方を提示したものだった。これは自治体、または自治体が指定する商店街などが、国の助成を受け、額面の10〜30%のプレミアムをつけて発行したもの。自治体域内の消費を刺激することによる地域活性化を狙ったもので、実に全自治体の約97%、1,700を越える自治体が発行した、または発行する予定といわれ、今後は各自治体の独自性をいかに打ち出し、また継続していくかが一つの鍵となる。


「コーポレートガバナンス元年」でもあった今年。6月1日からコーポレートガバナンス・コードの適用が開始され、これまで以上に株主や社外の目を意識した企業統治が求められることが鮮明になった。企業によっては、指名委員会等設置会社への移行や、社外取締役を3分の1以上にするなど、ガバナンス改革を進める会社も多く見られた。


ドローンも今年を象徴するものだが、一部の利用者の迷惑行為でマイナスのイメージが先行してしまった感もある。とはいえ、大気分析や物資の輸送、警備、災害時対応など、さまざまな分野での活用が期待されており、例えば、政府もドローンによる宅配の3年以内の実現を目標に掲げている。


戦後70年。諸外国の中で最も早く高齢化が進展した日本では、健康寿命に関心が集まっている。そんな中で、4月には健康食品の「機能性表示」の開示が可能となり、機能性食品が消費者の目に触れることになった。機能性食品は国による個別審査はなく、国への届け出のみで、企業の責任において科学的根拠のある機能性を表示できる。多くのメーカーが意欲的に商品を投入しており、また特定保健用食品(トクホ)に比べハードルが低くなったことによって中小企業も制度活用に積極的で、今後の市場拡大が期待される。


また、スーパーフードへの注目も高まっている。これは亜麻仁油やココナッツオイル、チアシードなど、一般の食品よりビタミン、ミネラル、クロロフィル、アミノ酸といった必須栄養素や健康成分を多く含む、おもに植物由来の食品のこと。国内最大の健康産業ビジネストレードショーの「健康博覧会2015」でも出品され話題を呼んだ。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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