2014年ヒット商品番付 ニッポン躍進へ ~次のステージを予感させる材料の数々~

2014年の日本経済は、消費増税前の駆け込み需要による好況から一転、4月の8%への引き上げ以降は、その反動減から消費マインドが低下し、GDPは2四半期連続のマイナス成長となった。日本銀行による追加の金融緩和等で日経平均株価が07年10月以来となる1万7,000円台を回復するなど明るい話題もあったものの、景況感は総じて薄曇りが続いた。
国外に目を向けると、ここしばらく続く欧州債務問題や新興国の経済成長の鈍化などから、世界経済も停滞気味だ。世界経済を牽引するアメリカの経済は回復しつつあるものの、オバマ大統領の与党・民主党が中間選挙で敗れるなどリスクをはらんでおり、我が国を取り巻く環境は予断を許さない。しかし、11月には安倍首相と習近平・中国国家主席の間で2年半ぶりとなる日中首脳会談が行われたことは、今後の日中関係に明るい兆しをもたらした。

そんな2014年ではあるが、今後の日本の躍進を予感させる材料がいくつも現れた1年でもあった。
2月にロシアのソチで行われた冬季オリンピックでは、フィギュアスケート男子の部で羽生結弦選手が日本人男子初となる金メダルを獲得。また男子テニスでも、錦織圭選手が四大大会の一つ、全米オープンで、こちらも日本人初となる決勝に進出し、多くの日本人を喜ばせた。
また10月には、赤崎勇氏(名城大学教授)、天野浩氏(名古屋大学教授)、中村修二氏(米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)の3氏が青色LEDの開発によりノーベル物理学賞を受賞し、日本の研究・技術レベルの高さを世界に示した。
このように、これからの日本躍進の可能性を感じさせてくれた方々に敬意を表しつつ、2014年ヒット商品番付を発表したい。

世界で活躍する日本人

赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授の3氏が、エネルギー効率に優れ、環境に優しい青色発光ダイオードを開発したとしてノーベル物理学賞を受賞した。現在、世界の電力の20%が照明に使われているが、LED照明の最適な利用によって、これを4%にまで減らせる可能性があると英国物理学会のフランシス・サンダース会長は指摘。ノーベル賞選考委員は、「白熱電球が20世紀を照らした。21世紀はLEDが照らす」との声明を出した。


ロシアのソチで行われた冬季オリンピックでは、羽生結弦選手がフィギュアスケート男子の部で日本人初となる金メダルを獲得した。羽生選手は仙台市の出身で、東日本大震災の罹災によって、一時期はスケートをやめようと考えたというが、仙台市民など周囲のサポートで続行。その期待に応え、栄冠を勝ち取った。また男子テニスでは、錦織圭選手が全米オープンで、日本人初となる決勝に進出。ATPツアーファイナルでも準決勝へ進出するなど好成績を残しており、今後の活躍が期待されている。


今年はこのような個人の活躍が目立ったほか、11月にはアメリカのフューチャーブランド社が毎年発表している国別ブランド評価ランキングでは、日本が初めて1位を獲得。日本の持つテクノロジーや、育んできた文化が高く評価された。


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娯楽関連のヒットが目立った1年

子どもたちに人気の「妖怪ウォッチ」は、2013年7月にニンテンドー3DS用のゲームソフトとして発売された。今年7月に第二弾を発売し、11月7日の時点で累計出荷本数が300万本を超えた。この冬公開の映画も前売券の販売枚数が72万枚を突破し、東宝映画史上最高記録を更新する等、関連グッズとともに大ヒットとなっている。


ディズニーの長編アニメーション映画「アナと雪の女王」。3月の公開から24週目で観客動員数が2000万人を突破、興行収入は国内歴代3位となる254億円に達した。関連商品も人気を博し、日本語版・英語版本編のほか、さまざまなコンテンツを楽しめる「アナと雪の女王MovieNEX」は出荷枚数が300万枚を突破。サウンドトラックCDも出荷枚数が130万枚を超え、主題歌「Let It Go~ありのままで~」は小さな子どもから大人まで口ずさむ国民的ヒット曲となった。


10月までの訪日外国人客数は1,100万9,000人と、過去最高であった昨年の年間合計を上回った。背景には、このところの相次ぐ世界遺産登録や、官民あわせた継続的な訪日プロモーションが功を 奏していることが挙げられる。群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産に、「和紙 日本の手漉和紙技術」が無形文化遺産に登録され、さらなる外国人観光客の誘致が期待される。


ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で7月に映画「ハリー・ポッター」の世界観を再現した新エリア 「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」がオープンし人気を集めている。オープン以降、エリアを目当てに、3ヵ月連続で、単月の来場者数が過去最高を更新している。USJの年間入場者数は、開業した2001年度の1,102万人をピークに800万人前後で推移していたが、今回の「ハリポタ効果」によって、開業年度超えが予想されている。


今年は、消費税増税による駆け込み需要に始まり、10%への税率変更先送りに端を発する解散総選挙で1年が終わるという、消費税に明け消費税に暮れた年でもあった。4月の8%への税率変更以降、消費者が財布の紐を固くする一方で、お金の使い方にメリハリをつける傾向もみられた。


例えば、プチ贅沢商品と呼べるものが数多く見受けられた。ギフト専用のプレミアムビールがヒットしたほか、コンビニスイーツでも従来より高額のラインナップが投入され人気を博している。また、数千~数万円のかき氷も登場し注目を集めた。


お金の使い方の変化という点では、投資に興味を持つ人も増えている。年初から開始されたNISA(少額投資非課税制度)は、半年間で投資額が1兆5,000億円を超え、徐々に国民に浸透してきた。20~30代の利用者も増えており、今後の動向が注目される。


NHK朝ドラも好調だ。吉高由里子主演の「花子とアン」は平均視聴率が過去10年で最高となる22.6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録。また、現在放映中の「マッサン」は、ヒロインに初めて外国人女優を起用しており、初回視聴率が21.8%と好調が続く。舞台となった土地への観光客の増加や「マッサン」においてはテーマとなる国産ウィスキーが脚光を浴びる等、経済効果も大きい。

健康・生き方の変化にあわせた商品

この1年で「終活」という言葉も広く浸透した。終活を行う人が増加する背景には、葬儀や死後の事務手続きを自ら準備しなければならなくなったという現実問題がある半面、自分の最期を前向きにとらえ、人生の終わりをより良いものにしたいという姿勢の転換も見られる。


家族構成の変化や高齢化の進展により、「量」を求める人が減り、食品メーカーを筆頭に、小容量商品を発売するメーカーが増えた。気軽に試し買いができ、かさばらない小容量商品のメリットを訴える戦略を採用、販売拡大を狙う。


健康に気を遣う人たちが注目しているのが、「希少糖」「Wトクホ」商品だ。希少糖とは、自然界にわずかしか存在しない糖。なかでも、血糖の上昇、内臓脂肪の蓄積を抑えるD-プシコースが注目されている。従来は高価格がネックであったが、香川大学の何森健教授の研究グループが希少糖を構成する酵素系を発見し、産官学の連携により、松谷化学工業が量産化に成功したことで、広く商品化することが可能となった。


一方、「Wトクホ」商品は、これまであった1つの特定保健用食品につき1つの保健の効果が得られるものと違い、2つの保健の効果が得られるというもの。トクホ市場自体も、13年度から拡大傾向にあり、さらなる飛躍が見込まれる。

先行きに期待が持てる要素が目白押し

東京再開発計画が加速している。3月末には虎ノ門~新橋間に東京都市計画道路幹線街路環状第2号線が開通、6月には虎ノ門ヒルズが開業した。また、2020年の東京オリンピック開催に向けて、品川駅~田町駅間に山手線の30番目となる新駅計画が発表されたほか、空港アクセスの利便性を高めるため都心~空港直結鉄道構想など、今後の経済効果が期待される。


地方の新たな魅力が「絶景ブーム」というかたちで掘り起こされている。ブームの皮切りとなった兵庫県の竹田城跡の来場者数が50万人を突破した他、全国各地の絶景が、関連書籍などで多数紹介されている。

 

政府の成長戦略改訂版では、日本発の「ロボットによる新たな産業革命の実現」が目標として掲げられた。20年までに現在の国内ロボット市場を3倍となる2.4兆円に拡大しようという一大プロジェクトだ。産業用ロボットでトップを走る日本ならではの技術力に期待が集っている。


9月発売のiPhone6/6Plusの人気をよそに、「格安スマホ」に注目するユーザーも多い。格安SIMカードには通信事業者のほか、大手スーパー、電気量販店、放送事業者などが参入し、大手キャリアとのサービス合戦が予想される。


為替相場も7年ぶりの円安となり、今年の消費に影響を与えた。円安効果も手伝い過去最高となった外国人観光客が家電量販店等で大量に買い物をする姿がしばしば報じられた。


安倍内閣が掲げる成長戦略の大きな柱である女性活躍推進。社会のあらゆる分野で指導的地位を占める女性の割合を30%に高めるほか、全上場企業に最低1人の女性役員を登用するよう経済界に要請。また、従業員301人以上の大企業には女性登用の数値目標が義務付けられた。女性の活躍が日本経済成長のカギを握るだけに、今後の動きが注目される。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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