2013年ヒット商品番付 ニッポン復活への期待 ~プレミアム感・機能性を訴求し新たな消費を創造~

2013年の日本は、第2次安倍内閣の経済政策アベノミクスの効果が感じられた1年であった。
今年1月の「日本経済再生に向けた緊急経済対策」に伴う公共部門への投資拡充に加え、4月の「量的・質的金融緩和」政策の導入などにより、株価上昇の影響を受けた堅調な個人消費等が景気回復に繋がっていると考えられる。実際、東証一部上場企業の時価総額は10月末時点で約419兆円。これは前年同月比約1.6倍であり、5年ぶりの400兆円超えは足許の景気回復傾向を示している。
今後は消費税増税の影響や賃金を取り巻く所得環境などが不透明であるものの、日経平均株価はリーマンショック前を上回る水準で推移している状況から、引き続きアベノミクス効果に対する期待感が窺える。

こうした中、今年は「ニッポン復活」を期待させる出来事も多かった。
6月には「日本の象徴」富士山が世界遺産に登録。静岡県知事は「日本にとって最高の贈り物」とのコメントを出した。また、9月には2020年のオリンピック開催地が東京に決まるなど、日本全体が喜びに沸いた。IOC会長が「トウキョウ」と告げた瞬間の割れんばかりの大歓声は記憶に新しい。

2013年は爆発的なヒット商品は限定的であったものの、デフレ経済の閉塞感からの脱却を目指し、 プレミアム感や機能性を訴求したプチ贅沢な商品が台頭するなど、新たな消費を創造した。

明るい話題も多かった1年

昨年末に発足した第2次安倍内閣。長らく続くデフレ経済を克服しようと、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を三本の矢としたアベノミクスを展開。結果、円安・株高が進むなどにより、企業業績の改善、個人消費の回復などアベノミクス効果は大きかった。


遷宮の行われた伊勢神宮と出雲大社の経済効果も大きかった。20年に1度の式年遷宮効果で、伊勢神宮は参拝客数が初めて1,000万人を突破。三重県の経済波及効果は2,400億円を超えたという。出雲大社も平成の大遷宮により島根県内への経済波及効果は285億円と試算されており、地元を大いに賑わせた。また、6月には富士山がついに世界遺産に登録された。観光面での経済波及効果は年額で1,952億円(静岡経済研究所)と、今後はこれまで以上の外国人観光客の来訪も予想されるため、受け入れ態勢の整備が必要だ。


池井戸潤原作の『半沢直樹』は、最終回視聴率42.2%、ピーク時46%超を記録。平成以降の民放ドラマでトップを記録し、「倍返しだ!」という主人公の台詞は流行語となった。同じくドラマでは、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の人気により、7-8月にロケ地を訪れた観光客は約7万6,000人と震災前2010年と比べ11.7倍。岩手県経済への波及効果は33億円で、観光消費額の推計は31億円と試算(岩手経済研究所)されており、地元経済にも寄与している。


今年、東北楽天ゴールデンイーグルスは球団創設9年目にして、日本シリーズを制覇した。とりわけ、エース田中将大は開幕24連勝し、昨年からの連勝が28と日本プロ野球新記録を樹立。日本シリーズ第6戦で敗れたものの、翌日の最終戦9回に登板、見事セーブし胴上げ投手となり、自身二度目となる沢村賞、3年連続の三井ゴールデン・グラブ賞を受賞。東日本大震災の復興に励む東北の人々を力づけた。


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プレミアム感や機能性を訴求

今年は付加価値を求めたプチ贅沢な消費が感じられた1年でもあった。高級食パンの「金の食パン」(セブン&アイ・ホールディングス)は、厚切り食パン2枚入りで125円、6枚入り250円と高額ながらも、発売4カ月で販売個数1,500万個を突破。瞬く間に「セブンゴールド」と称するPBの中でも屈指のヒット商品となった。他社が追随する中で早くも10月にはリニューアルし、より一層磨きをかけている。


タブレット人気は続いており、今年も7インチタブレットが市場を牽引した。2013年度は600万台以上に伸びると見られ、出荷台数では6~8インチのタブレットが約6割を占めると予想されている。牽引役は今年もiPad miniやNexus7といった7インチタブレット。まだまだ伸展の余地が大きい。


タブレットやスマートフォンで遊ぶゲーム「パズル&ドラゴンズ」も大人気であった。2012年2月にリリースされたが、今年3月に1,000万、10月には2,000万ダウンロードを達成。配信元のガンホーの1-6月期の売上高は前年同期比の10.5倍の746億円、営業益が44.3倍の451億円となるなど破格の増収増益を記録した。


洗濯時間を短縮して家事の時短を目指す「時短洗剤」が注目を集めている。8月に花王が「ウルトラアタックNeo」を、P&Gが「アリエール スピードプラス」を発売。汚れを落とすほか、エコな商品を開発してきた業界全体がライフスタイルの提案として、時間の短縮を選択。新たな機能性をアピールしている。


3Dプリンタの実用化が話題になった年でもあった。Amazonでは9月からサイト内に3Dプリンタ本体、造形材料等を販売する「3Dプリンタストア」をオープン。大量生産に活用する動きが始まった。3Dプリンタの活用は中小企業にとってメリットも多く、今後の普及が期待される。


衝突回避システム搭載の自動車「ぶつからない車」も躍進した。スバルのアイサイトをはじめ、マツダ、ダイハツなど、各メーカーが次々と発売し、販売台数を伸ばしている。さらに普及が進めば部品コストも下がることから、今後のスタンダードとなることが予想される。


あれば生活が豊かになる「ネオ・シロモノ家電」も流行している。油を使わずフライを調理できるフィリップスの「ノンフライヤー」は発表から話題沸騰。4月の発売と同時に店頭から商品が消え、当初発売目標を20万台へ上方修正した。その他1月の発売から24万台を販売した冷凍フルーツでデザートをつくる「ヨナナスメーカー」やふとん専用掃除機「レイコップ」なども話題となった。


豪華観光列車の旅も好調だ。「ななつ星 in 九州」は、JR九州の豪華寝台列車で名所をめぐる。最も高価な部屋は3泊4日2名利用で100万円を超える。予約多数のため抽選となり平均倍率は9倍だという。また、近畿日本鉄道の観光特急しまかぜも予約開始後数十分で完売してしまうほどの人気を集めている。移動時間を楽しむという新たな旅のスタイルが確立されそうだ。


振動レスシステムなどの機能を高めた高機能ベビーカーが人気だ。ベビーカー市場は100億円前後と横ばいながらも、売れ筋価格が4万円以上と上昇。少子化の中で祖父母の支援や育児に積極的に関わる父親・イクメンの登場により子供にかける費用が増えたことが背景にあると考えられる。

定番の中にも新しさ

本格コーヒーを購入する場所として真っ先に連想される定番を変えつつあるのが「コンビニカフェ」。 100円台という低価格でも上質な味を楽しめ、営業時間や場所を限定されずに買える手軽さが加わり人気を博した。大手コンビニが続々とマシン設置の店舗数を増やしており、今後日本一本格コーヒーが売れる場所がコンビニとなる日も近そうだ。


日本の誇るコミック×アニメ文化も健在だ。今年ヒットした『進撃の巨人』は原作コミックが累計2,300万部を突破。4月にアニメ化されて人気を博し、その後発売されたDVD、BDの売上も伸長。アニメ映画で数々のヒット作を生んだ宮崎駿監督の長編引退作とされる『風立ちぬ』も117億円を超える興行収入を記録した。また、アニメと企業や商品のコラボレーションも増えるとともに、アニメを活用した地域活性化も盛んに行われ、市場規模は100億円に達しているといわれている。


今春、JR大阪駅北口に開業した複合ビル群グランフロント大阪が賑わいをみせている。「大阪最後の一等地」といわれた梅田駅北側の再開発エリアの先行開発として開業。開業から5ヶ月でオフィスなどを含めた来場者数は2,700万人で、早くも初年度目標の2,500万人を上回り、梅田に新たなスポットが加わった。


村上春樹の3年ぶりの長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)は初版30万部をわずか3日間で実売98%、発売7日で8刷100万部達成。同社史上最速のミリオンセラーとなった。発売当日まで内容の一切が隠されていたことや、長く意味深なタイトルが様々な憶測を呼んだ。


昔から親しまれている缶詰。全国に「缶詰バー」が出店。タイカレーの缶詰などヒット商品も生まれた。昨年は32年ぶりに前年比売上増。背景には東日本大震災などをきっかけに備蓄需要が伸びたことや、各メーカーが新商品を開発、美味しさや利便性が見直されたことがある。今年も、コラボ本や缶詰を使用したお手軽料理本が続々と出版され、人気維持に一役買っている。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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