2012年ヒット商品番付 日本の力を見つめ直す ~世界が認める技術の数々~

2012年は、震災による復興需要が景気を下支えしたものの、エコカー補助金終了等により個人消費は盛り上がりに欠け、海外経済の変調の影響を受けて企業の設備投資や生産も弱含みで推移。加えて、欧州債務危機に起因する新興国経済の減速を受けて輸出は大幅に減少、7-9月の段階で既に景気後退局面に入っている可能性が出てきている。外交では日中・日韓間の問題、国内においては不安定な政治状況が懸念される等、我が国経済を取り巻く環境は依然厳しい状況が続いている。

こうした中、「日本の力」を感じさせる事柄が多かったのも今年の特徴だ。
5月には東京スカイツリーが開業。高さ634mの電波塔は、昨年11月に世界一の高さを持つタワーとしてギネス認定を受け、日本の技術力の高さを見せつけた。
また、今夏開催されたロンドン五輪では、過去最高の38個のメダルを獲得。連日世界を相手に奮闘する日本選手の姿は、多くの日本人に勇気を与えた。
そして、何より日本人を喜ばせたのが、iPS細胞研究における山中伸弥・京都大学教授のノーベル医学・生理学賞受賞。山中教授は記者会見で、「日本という国が受賞した賞」と発言。ビジネスで海外勢に押され気味の日本人に、失いがちだった自信を取り戻させてくれた。

2012年、爆発的なヒット商品は限られたものの、既存の商品に新たな視点を加えることで話題や注目を集めたものは多く、日本が誇れる「底力」を感じさせてもくれた1年であった。

キーワードは“日本の底力”


山中伸弥・京都大学教授がiPS細胞の研究でノーベル医学・生理学賞を受賞した。iPS細胞とは人工多能性幹細胞のことで、あらゆる細胞に分化が可能。このiPS細胞がもたらす医学や創薬の新しい可能性に世界中から大きな期待が寄せられている。発表から6年目での受賞はノーベル賞史上異例の速さ。研究界に与えたインパクトがスピード受賞の一因となった。


5月にオープンした東京スカイツリーは、同時に開業した商業施設・東京ソラマチへの期待も加わり、来場者数が開業後わずか5日間で113万2000人と予想を超える盛況となった。10月に5年半かけてリニューアルした東京駅も、駅周辺の再開発効果で乗降客は4割増となり、単なるターミナル駅としてではなく、新たな観光スポットとして生まれ変わった。駅舎は大正3年の開業時の姿だが、使われた技術は最新のもの。東京スカイツリーと併せて、我が国の建築技術の高さを示すシンボルとなった。


販売が低調なパソコン市場の中で、唯一好調なのがタブレットPCだ。3月発売の新型「iPad」や11月発売の「iPad mini」等でトップシェアを走るアップルを、サムスンなど競合各社が猛追。実は、こうした機器の液晶画面や内部部品の多くが日本企業から供給されており、隠れたところで日本の高い技術力が発揮されている。

車ではトヨタ自動車の小型ハイブリッドカー「AQUA」が大人気。昨年12月の発売から2カ月半で17万台を超える受注を獲得し、半年以上の納車待ちとなった。高い燃費性能と低価格が大きな魅力となっており、10月には車名別新車発売台数で首位に立っている。なお、「AQUA」は震災復興支援として岩手工場で全量生産を行っており、販売好調によって現地復興に一層の弾みがつくことを期待したい。


今夏のロンドン五輪の日本勢は獲得メダル数が38個と過去最高。金メダルこそ一桁台に留まったものの、体操や競泳をはじめ、フェンシング、卓球、女子サッカー「なでしこジャパン」など、チームとしての活躍が特に目立った。団結した日本人選手達の力強さに、数多くの日本人が勇気をもらったことだろう。


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新しい視点からの発見

今年は新しい視点で常識を打ち破る商品が目立った。

昨年11月に発売された東洋水産の「マルちゃん正麺」は、5個セットで525円とインスタントラーメンとしては価格が高めながら、発売から1年間の累計出荷数が2億食を突破。人気の秘密は新製法による生麺のような食感。この大ヒットを受け、他のメーカーも追随して同様の商品を売り出すこととなり、袋麺市場に新たな旋風を巻き起こしている。


身近な文具であるハサミの常識を打ち破ったのが、プラスの「フィットカット カーブ」。多用途に耐えうる切れ味と使いやすさを追求して同商品は誕生。低価格かつカラフルなデザインも魅力となり、年間100万本売れれば大ヒットとされる中、発売約5カ月で大台をクリア。市場規模も拡大中だ。


大きな伸びを見せている低価格機能性メガネ。中でも長時間のパソコン作業から目を守ることができる低価格なPC用メガネが今年大きな話題となっており、火付け役となった「J!NS PC」のジェイアイエヌを、「Zoff PC」のインターメスティックなどの競合各社が追う展開だ。低価格に加えて、用途に特化した機能性メガネの業界動向は今後も注目したい。

飲料では、2009年から急成長を遂げたノンアルコール飲料市場に新たな商品が登場、話題を呼んでいる。2月にアサヒビールが「アサヒ ドライゼロ」を発売、年間販売目標を当初計画の300万ケースから500万ケースに上方修正するほどの勢いを見せているほか、各社カクテルテイスト飲料などのラインアップも増やしており、市場拡大に貢献している。


古くから家庭で用いられてきた調味料の塩こうじ。使えばうまみが増し健康にも良いことから、情報番組で紹介されたことをきっかけに認知度が高まり、さまざまな派生製品が誕生。前年の市場は2億円だったが今年は62億円を見込み、大ヒット商品となった。


震災以降、節電意識の高まりからLED照明の需要が伸長、3月には販売台数・金額ともに蛍光灯を逆転し、家電メーカーも新製品投入に積極的だ。中でも注目されるのが、シャープの「さくら色LED照明」。省エネだけでなく、癒しや安眠サポートといった新たな効果も加わり人気を集めている。


生活用品では、P&Gの「レノアハピネス アロマジュエル」が人気だ。同社の柔軟剤ブランドの「レノア」を冠しているが、商品には柔軟剤成分は配合されておらず、あくまで香りづけだけのもの。洗剤や柔軟剤とあわせて使うことで、自分好みの香りをつくれるという一品だ。

低価格、手軽さ、、、楽しみ方の広がり

ピーチ・アビエーション(3月)、ジェットスター・ジャパン(7月)、エアアジア・ジャパン(8月)の3社が国内LCC(格安航空会社)業界へ本格参入。当初は運行時間の遅れ等で混乱が起きたが、低価格な移動手段の広がりは多くの利用者に支持された。


今年は5月の「金環日食」をはじめ、6月の「金星の日面通過」や8月の「金星食」など、まさに 数多くの天体ショーが繰り広げられた年となった。珍しい天文イベントを手軽に楽しめることから、日食用のサングラスや天体望遠鏡、天体観測用の双眼鏡が全国で爆発的な売れ行きを示した。


全国的な広がりをみせている街コン。男女の出会いの場として、会費内で複数の飲食店を回りながら異性と出会う大規模な合コンイベントだ。一般的な合コンやお見合いパーティ等に比べて気軽に楽しめることから利用者が急増しており、まちおこしの一つの手法としても人気を集めている。


4月に静岡県内の一部区間で開通した新東名高速道路。観光ついでに買い物や食事を気軽に楽しめる大型商業施設「NEOPASA(ネオパーサ)」は、移動の楽しみ方を広げる新しいサービスエリアとして人気スポットとなった。開設された7カ所を訪れた来場者数は、半年間で約2400万人にも上っている。


今年はきゃりーぱみゅぱみゅの飛躍の年となった。つけまつげ・ウィッグ・カラーコンタクト等を用いたオリジナリティ溢れる彼女のファッションとオシャレの楽しみ方が中高生の支持を集めた。彼女の使う商品の売り上げは軒並み伸びるといった現象が起きている。


本離れと電子書籍の波が押し寄せる書籍小売業界において、書店の新しい在り方を示したのが昨年12月オープンの代官山 蔦屋書店だ。6つの専門空間やカフェ、トラベルカウンターがあり、知的好奇心を刺激するワンランク上の大人の書店として支持を集めている。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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