2011年ヒット商品番付 復活につながる勇気と元気 ~2年振り横綱復活~

3月11日に発生した東日本大震災は、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録し、津波も含めた被害規模は甚大なものとなった。また震災によるサプライチェーンの寸断や自粛ムードの拡大、電力供給の制約、原発事故による放射性物質の拡散等は、日本経済に広く影響を及ぼした。

その後、サプライチェーンは急速に復旧し、夏ごろには企業の生産活動こそほぼ震災前の水準に回復したものの、欧州債務危機の深刻化による急激な円高や欧米経済の下振れ、タイ大洪水の影響等、企業業績に対する下押し圧力は根強く、景気は足踏み状態であることは否めない。期待された復興需要も政策の遅れが響き、景気を押し上げる力には至っていない状況である。

こうした中、7月にはサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」がワールドカップで初優勝を飾り、震災で沈みがちだった日本列島は大きく沸き上がった。また、昨年来注目を集めている「スマートフォン」、10月に全世界で発売されたiPhoneの最新モデルの販売台数は3日間で400万台を超え、過去最高を記録した。

未曾有の大災害に見舞われた2011年。震災を乗り越え経済の復活につながる勇気と元気を与えてくれた「なでしこジャパン」、生産拡大で電子部品等、関連産業への経済波及効果が大きく期待される「スマートフォン」、2年振りの横綱復活となった。

キーワードは“つながる”

7月、サッカー女子日本代表なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップドイツ大会で優勝。決勝戦では、アメリカ代表を相手に先制点を挙げられるも、粘って“つなげて”勝利したことは記憶に新しい。国民に勇気と元気を与えたことで、史上初の団体による国民栄誉賞を受賞した。



昨年来、注目を集めているスマートフォン。今年度の国内出荷台数は、昨年度の855万台から大幅に増加し、2,000万台を超えると予測されている。ワンセグや赤外線通信等、日本固有の機能が付加されたことで利用者が急増。今後、スマートフォンによって誰でも何処でも直接インターネットに“つながる”時代となるだろう。


SNSではFacebookの利用者が急増。全世界でユーザー数は8億人超、国内の利用者も9月に1,000万人を超えた。FacebookはTwitterとともに、チュニジアのジャスミン革命から始まった民主化運動のアラブ諸国への波及(“つなぎ”)に重要な役割を果たしたと言われ、国内においても東日本大震災時の連絡手段として広く活用されたことで注目を集めた。


フジテレビ系ドラマ『マルモのおきて』の主題歌『マル・マル・モリ・モリ!』が、約50万枚を売上げるヒットとなった。主演の子役である芦田愛菜と鈴木福が歌い、16週連続でTOP10入りを果たした。ヒットの理由は、他人の子供を引き取り家族として育てるというドラマのテーマが、震災後の不安感から愛情や“つながり”を求める視聴者の思いにマッチしたためと言われている。


東日本大震災の翌日3月12日に開業した九州新幹線。先行開業していた新八代~鹿児島中央に加え、博多~新八代が開業。博多から鹿児島中央まで最短1時間19分、新大阪と博多を結んでいた山陽新幹線も鹿児島まで直接“つながった”ことで、JR九州の9月中間期の増収決算に貢献した。


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震災・節電・省エネ・健康・・・

東日本大震災による今夏の節電の必要性を踏まえ、環境省が提唱したスーパークールビズ。従来のクールビズより一層の軽装を促したことで、紳士服量販店の青山商事やAOKIの販売額は前年の3割増、またミズノの接触涼感衣料「アイスタッチ」が、6月に三越日本橋店において前年同時期の5倍以上の売上を達成した。


夏の暑さを避ける冷やしフードも流行した。ハウス食品では、温めずにそのままごはんにかけるだけのレトルトカレー「ハウス夏のカレー」を発売。またゼンショーが展開する牛丼チェーンすき家では、冷たいだし汁で食する「ひやし牛まぶし」を販売する等、冷やしフードをメニュー化する外食店が増加した。


震災によって省エネ気運がこれまで以上に高まるなか、ハイブリッド、電気自動車に続くエコカーとして、ガソリン車ベースの第3のエコカーが注目を集めた。6月、マツダは普通車ながらリッター30kmの低燃費を実現した新型「デミオ13-SKYACTIV」を発売。9月にはダイハツがリッター30kmという低燃費かつ低価格の軽自動車「ミラe:S」を発売。ともにガソリン車でありながら驚異的な低燃費を実現、新たなエコカーの需要を開拓した。


一方で、震災時の交通混乱をきっかけに、通勤通学の手段として脚光を浴びたのが自転車。大型自転車専門店「サイクルベースあさひ」を展開するあさひでは、3月以降、9月を除くすべての月で前年を上回る売上を達成。また、帰宅困難者が多数出たことから、歩くことそのものも見直され、ウォーキング関連商品としてトーニングシューズがヒット。先駆けとなったリーボックジャパンの「イージートーン」シリーズに続き、有力ブランドが相次いで参入。歩くだけで正しい歩行姿勢が保てること、また消費カロリーの増加によるダイエット効果も狙えることから、女性を中心に昨年の1.6倍の販売が見込まれている。

ヒット商品は一日にして成らず

『体脂肪計タニタの社員食堂』が、昨年2月以降、続編も含めて累計発行部数が420万部を超えた。同書では、タニタの社員が社員食堂で実際に食べ続けることでダイエットに成功するエピソードを掲載、メタボを気にする中高年世代、ダイエットを意識する若い女性に支持された。来年1月には、同社の定食が食べられるレストラン「丸の内タニタ食堂」を東京丸の内にオープンする。


食品ではジュレ状ぽん酢がヒット。2月にハウス食品が「のっけてジュレぽん酢」を、ヤマサ醤油が「昆布ぽん酢ジュレ」を相次いで発売。8月にはミツカンが「ぽんジュレ香りゆず」で参入したが、いずれも販売は好調。昨年の「食べるラー油」がきっかけとなり、食べる調味料が受け入れられる下地があったことがヒットの背景と思われる。


ミラーレス一眼カメラの躍進も、今年注目を集めた。2008年9月にパナソニックが世界で初めて販売を開始し3年。軽さと使いやすさを武器に、レンズ交換型デジタルカメラ全体に占めるミラーレス一眼カメラの販売台数の割合は、2年前の5%から今年7月には40%を超えた。


東川篤哉著の推理小説『謎解きはディナーのあとで』は、発売から1年経っても売上が伸び続け、10月時点で累計160万部を突破。一方、米アップル社の共同創始者で、新モデル「iPhone4S」発表の翌日10月5日に死去したスティーブ・ジョブズ。社会を驚かせる数々のヒット商品を世に送り出したジョブズの伝記『スティーブ・ジョブズ』Ⅰ、Ⅱ巻は、国内発売開始10日目という驚異的な速さでミリオンセラーを達成した。


ボーイング787の初号機が9月に日本に到着、全日空が世界で最初の運航会社となった。当初は2007年に初飛行、2008年に初号機引渡しの予定だったが、開発スケジュールの度重なる延期により3年遅れの納入となった。機体の全部品の35%、主翼や接合部等の重要な部品が日本企業によるものであり、まさに「準国産」とも呼べる最新鋭機。ボーイング787には日本企業の先端技術の粋が結集していると言える。


芸能で強さを見せつけたのがAKB48。上半期のアーティスト別売上、CDシングルセールスの2部門で1位を獲得し、昨年に続き番付入りとなった。一方、今年新たに番付入りを果たしたのが K-POP。少女時代やKARAといった女性グループが人気を集めた。韓国では政府自らアーティスト育成等の支援を実施、事業としてアジアに留まらず中南米や中東の市場開拓に注力する。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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