2010年ヒット商品番付 話題は大きくヒットは小粒

2010年は、政治、外交面で様々な出来事があった。年明けに開幕した国会は「政治とカネ」がテーマとなり、6月には鳩山首相が電撃辞任、7月の参院選は民主与党が大敗し衆参でねじれ国会となった。外交面では、9月、尖閣諸島沖の衝突事件が発生、以降、ガス田交渉の延期、中国地方部で反日デモ続発、レアアース輸出制限等、中国との外交問題がクローズアップされた。一方、国際イベントも多く、2月のバンクーバー冬季五輪、5月の上海万博、6月の南アフリカサッカーW杯、11月には横浜でAPECが開催された。
経済を見ると、ギリシャに代表される欧州ソブリンリスクの顕在化、FRBの金融緩和策等の要因もあり、夏以降に円高が進行。10月には15年ぶりに円が対米ドル80円台に突入、輸出関連企業の業績下振れ懸念要因となっている。また、100年に1度の猛暑による特需はあったものの、9月末でエコカー補助金が終了する等、政府による昨年来の景気対策でかさ上げされた個人消費の落ち込みも懸念されている。
10~12月期は実質GDPのマイナス成長も予想されており、消費者の財布の紐は引き続き堅いまま推移することが見込まれる。こうした中、2010年は話題や注目を集めた商品・イベントは多かったが、大ヒットに繋がる勢いに欠け、全体としては小粒ヒットが多い「横綱不在」の1年となった。

ライフスタイルを変えるポテンシャル商品群

ライフスタイルを変えるポテンシャルを秘めた商品群が、徐々にではあるが消費者に浸透した1年。最も注目を集めたのは「スマートフォン」。ソフトバンクが新バージョン「iPhone4」を6月にリリースする一方、NTTドコモは4月、auは10月に、それぞれスマートフォンの新機種を投入、3大キャリアによる激しい市場争奪戦が起きている。PCの機能を携帯電話で常に持ち歩くという、新たなライフスタイルが定着しつつある。


調味料であるラー油を、風味の良い具材を加え食材として定着させた「食べるラー油」(桃屋、ヱスビー食品他)は、今年、最もヒットした食品。ブログやツイッターで食べ方やアレンジ方法が紹介されたことで話題を誘発し、家庭用ラー油市場は前年比6倍に拡大した。一方、電子レンジで簡単に生の切り身魚が焼けるといったユニークなアイデアで、独身や単身世帯に新たな内食のスタイルを提案した「チンしてこんがり魚焼きパック」(小林製薬)。発売から1年間で270万個を出荷している。


家事に目を向ければ、今年、「コンパクト液体洗剤」がヒット。高い洗浄力で節水、節電に貢献、環境にやさしいという視点で、粉末洗剤との市場シェアを逆転。中でも「アタックNeo」(花王)、「トップNANOX」(ライオン)が販売を拡大している。


また、今年、低価格化が進み半年で600万個が売れた「LED電球」。蛍光灯が中心であった家庭の照明文化を変える勢いのある商品といえる。


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地域の魅力を再発見

2010年は、地域の視点が多くの話題を集めたことも特徴。松下奈緒主演のNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の最終回視聴率は23.6%を記録。その効果で「さかなと鬼太郎のまち境港市」が盛り上がった。中でも「水木しげるロード」の観光客は250万人を超え、記録を更新した。


「平城遷都1300年祭」は、会期前半の1~6月で県内各地のイベント会場への来訪者が、推計延べ930万人と予測の約1.6倍。JR東海の調べでは、首都圏から奈良への旅行者は昨年の3倍となっている。


2012年春開業予定の「東京スカイツリー」は、その高さが今年3月に東京タワー(333m)を抜き、国内で最も高い建造物となった。完成前にも拘らず周辺の墨田区エリアには、工事中のタワーを見ようと観光客が押し寄せ、江戸下町の新観光スポットとして注目された。

2010年を振り返って~目白押しの国際イベント、そして100年ぶりの猛暑~

5月には、会場面積・参加国数とも史上最大規模の「上海万博」が開幕。10月閉幕までの来場者数は7300万人と史上最多を記録、その経済効果は5兆円といわれている。6月には「南アフリカサッカーW杯」が開催。岡田JAPANは前評判を覆し、予選リーグを突破。ベスト16の成績を残した。その中で本田圭佑選手は無回転シュートで一躍、日本代表の顔となった。


6月には奇跡の帰還を果たした小惑星探索機「はやぶさ」が、イトカワからの微粒子を持ち帰り、小惑星の試料採取に成功した世界初のケースとなったことから、技術立国日本の力が証明された。はやぶさの帰還を記念して作られたプラモデルは、初回販売3万個が数日で完売、異例の大ヒットとなった。


100年に一度の猛暑は、エアコンや清涼飲料等の消費に火を付けた。こうした「猛暑特需」の中で注目されたのが、氷菓の定番「ガリガリ君」(赤城乳業)。その販売本数は年間累計で過去最高となる3億本を超える見込みで、夏場の品薄状態も話題を集めた。


10月のタバコの大幅値上げもあり、「禁煙外来」の受診者が急増。錠剤タイプの禁煙治療薬(「チャンピックス錠」(ファイザー))に加え、禁煙パッチも品薄となり、新規外来の受入制限も発生する事態となっている。


文化・芸能面を見ると、『もしドラ』(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』)は、高校野球部女子マネージャーが、ドラッカーの言葉をもとに甲子園を目指すストーリー。10万部を超えれば大ヒットと言われるビジネス書の中で、160万部を突破する異例のミリオンセラーとなった。


結成5年目にして、今年ブレイクを果たした「AKB48」。ファン投票で次回シングルの選抜メンバーを選ぶイベント「AKB48総選挙」を6月に実施、有名になった後もアキバ(AKB)に行けば劇場で実際に会えるアイドルという、ファンとの一体化を重視する姿勢がヒットにつながった。


「3D映画」の『アバター』、『アリス・イン・ワンダーランド』、『トイ・ストーリー3』は、それぞれ興行収入が100億円を超えて注目が集まった。邦画では、アニメ作品『借りぐらしのアリエッティ』が、興行収入86億円と今年のトップ作品となった。

2011年の注目商品

円高による企業業績の下振れリスク、新興国経済の成長率鈍化等から、わが国経済は踊り場から後退局面へ陥る可能性も出てきた。引き続き、消費者の厳しい選別志向、節約消費の傾向は続くと考えられるが、ライフスタイルの大きな変化を担う商品群から、2011年のヒット商品を期待したい。


今年5月に国内販売が始まった「iPad」は、電子書籍コンテンツの多くがスマートフォン向けであったことからヒットには至らなかった。2011年、iPad向けコンテンツの充実によりヒットの可能性は高まるだろう。


2010年の3D映画のヒットにより、2011年は、本格的な3D市場の立ち上がりが見込まれる。この夏、各社とも販売が始まった「3Dテレビ」だが、地デジへの移行を踏まえた買い替え需要は一段落しており、ブレイクするには時間を要するとの見方が強い。ただ、2011年、低価格化の進展に加え、裸眼3Dテレビの登場等、引き続き話題性の高い分野と考えられる。


消費者の環境配慮への意識が定着したことから、2011年も環境配慮型の商品、サービスの中からヒット商品の登場が見込まれる。ハイブリッドカーのヒットから2年、価格面等課題は多く残るが「EV(電気自動車)」市場の拡大に注目したい。


また、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を巡る議論の盛り上がりを機に、国内農業に対する消費者の関心は高まっている。山形県が約10年の歳月をかけ開発した新品種の米「つや姫」。収量が多く、炊き上がりやうまみで、今年、コシヒカリを上回るとの評価を得た。また、11月に発売を開始した「GOPAN(ゴパン)」(三洋電機)は、米からパンが作れるホームベーカリー。夏の発表当初から注文予約が殺到、発売が約1カ月も延期となった。こうした農業に関連するヒット商品の登場も2011年は期待したい。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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