2003年ヒット商品番付 今、この瞬間の感動を共有できる商品

今年2003年は、経済に若干明るい材料が出てきたものの、不透明な雇用・所得環境や先行きの不安などから、個人消費は今ひとつ盛り上がりに欠けた。このため大型のヒット商品の少ない1年となったが、小粒ながらヒットした商品には、今、この瞬間の感動を共有できる商品という傾向がみられた。

18年ぶりの感動を共有

大型ヒット商品不在の番付のなかで大健闘し、みごと横綱に輝いたのは、闘将星野監督の下で快進撃を続け、日本中を興奮の渦に巻き込んだ星野阪神だった。さまざまな「あやかりグッズ」の販売も好調で、飲食店やホテルの売上増にも寄与し、経済全体を押し上げた。リーグ優勝の日には、日本中が18年ぶりの感動を共有した。また、日本シリーズも歴史に残る名勝負となり、シリーズ後には星野監督は惜しまれつつ退任した。


民間最大級の再開発地区六本木ヒルズが4月25日にオープンした。若い女性に人気の高級専門店やさまざまな娯楽・文化施設が軒を並べ、ここにも「今」という時代感覚が演出されている。


また、長崎県佐世保市の自社社屋のなかにテレビ放送用のスタジオを作ってしまった通信販売のジャパネットたかたも高田明社長の軽妙な語り口が、テレビの前にいる今現在の消費者の心理をつかんで売上を伸ばした。


CMでは、2匹のキャラクターが大活躍している。大きな眼をうるうるさせたチワワの「くぅーちゃん」と、なんとも言えない独特の雰囲気をもった「NOVAうさぎ」。どちらも、今年1年のCMの顔として、視聴者の脳裏に焼き付けられた。


スポーツでは、今年ヤンキースに移籍した松井秀喜の得点圏内での勝負強さが、毎日テレビで日本に伝えられた。また、今年1年多くの人が思わず口ずさんでしまったのが、お笑いタレントのテツandトモが流行させた「なんでだろう」のフレーズである。


平成元年(1989年)からの番付を公開中!

その他の年のヒット商品番付はこちら

今までと違う何かを求めて

冷夏のためにクーラーなどの白物家電は不振であったが、それをカバーしたのがDVDレコーダーであった。特にテレビ番組などを一時的に録画できるハードディスク内蔵タイプが使い勝手のよさから好調で、そのなかでも「DIGA」が人気を集めた。同様に家電市場を牽引したのが、薄型(液晶・PDP)テレビである。この分野では各社が鎬を削っているが、 12月から始まる地上波デジタル放送がこの売上を後押ししている。いずれも従来のビデオやテレビとは一味違う機能や形状がヒットの要因である。長寿命設計や省エネ設計など、環境負荷の少なさも消費者にアピールしている。


自動車では、ミニバンより小型の1400ccのミニミニバン「キューブ」が売上を急速に伸ばしてきた。


デジタル機器では、手軽に撮れる小型デジカメがよく売れた。同時に、100万画素以上の解像度のカメラがついたメガピクセル携帯との競合も始まった。


体脂肪の減少に効果があるとされる茶カテキンを豊富に含み、厚生労働省から特定保健用食品の認可を受けた「ヘルシア緑茶」も、一般の清涼飲料よりも割高にも関わらず売上を伸ばした。


化粧品関連では、各社各様の特殊な工夫によってまつ毛のボリュームをアップする高機能マスカラがよく売れた。


また、健康ブームの高まりから、豆乳がブームとなった。コーヒーチェーン店では、コーヒーを牛乳で割るカフェラテのように豆乳で割るメニューが人気を集めた。


コンビニエンスストアでは、100円程度の一般のおにぎりに対して、150円から200円の価格帯の高級おにぎりがよく売れた。


その他、映画では『踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が、わずか47日の短期間で観客動員数1000万人を超え、興行収入も150億円を超える大ヒットとなった。また歌謡界では、1人ひとり個性を持ったオンリーワンであることを願ったSMAPの『世界に一つだけの花』がヒットした。出版業界では、他者を理解するには大きな壁があるとする養老孟司氏の『バカの壁』がミリオンセラーを記録した。

登場が待たれる21世紀型ヒット商品

21世紀に入って3年が経つが、今年のヒット商品も20世紀の商品の延長のような気がする。おそらくこの壁を破ったときに、大型のヒット商品が登場するのではないだろうか。それでは、21世紀型のヒット商品とは、どのような商品なのだろうか。


  1. 地球環境への負荷が従来商品に比べて圧倒的に低い商品
  2. 各人の多様なニーズをそれぞれ叶え、夢を与えてくれる商品
  3. 人と人とのコミュニケーションをもっと簡単にしてくれる商品
  4. ナノテクノロジーなど、次世代の技術を駆使した商品


このような商品の萌芽がほんの少し見え始めているのが、今年2003年だと考えられる。来年 2004年には、その芽が花開き、大型のヒット商品が番付に並ぶことを期待したい。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。

 

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