Netpress 第2368号 時短の基本 時短とは「何をするか」ではなく「何を捨てるかが9割」
1.経営資源が限られる中堅・中小企業が最大限の成果を出すためには、作業効率をいかに向上させるかが重要なポイントになります。
2.ここでは、経営資源のなかでも最も重要な「時間」を効果的に活用する方法を探ります。
株式会社グローディア
代表取締役 各務 晶久
1.はじめに
人、もの、金、時間、情報、企業文化といった経営資源のなかで、「時間」はどの企業にも平等に与えられている経営資源です。
しかし同時に、リカバリが効かない最も貴重な経営資源でもあるのです。また、社員の「作業時間」という点でいえば、時間はお金に換算できるものです。
経営資源が限られるなかで、中堅・中小企業が最大限の成果を出すためには、作業効率をいかに向上させるかが重要なポイントになるでしょう。そこで、考えなければならないのが「時短」です。
時短とは、業務を早く終わらせることではなく、重要なことに集中するために、何をしないか、何を捨てるかを決めるプロセスなのです。
2.経営者・管理部門が考えるべき時短戦略
経営サイドや管理部門、マネージャーの責務は、組織全体の生産性を高めることにあります。そのためには、以下のポイントに留意して、業務の無駄を見極め、排除することが重要です。
(1)仕事の価値を評価する
すべての業務が同じ価値を持つわけではありません。経営者やマネージャーは、各業務が組織の目標にどのように貢献しているかを常に評価する必要があります。
価値の低い、あるいは目標達成に寄与しない業務を特定し、部下にそのような仕事をさせないようにすることが経営サイドに求められます。
(2)手戻りを減らす
業務の手戻りは時間の浪費です。完成物が明確になっていないまま部下に指示を与えたり、計画が十分でなかったりすることが、手戻りの主な原因です。
「とりあえずやってみて」という曖昧な指示をやめ、部下と議論しながら、完成イメージをすり合わせた後に、作業に着手させる習慣をマネージャー自身に身に着けさせてください。
部下の手戻りが多いのは、マネージャーの仕事の与え方に問題があるのです。
(3)意味のある仕事に集中する
部下が本当に意味のある仕事に集中できるように環境を整えることが経営サイドの役割です。これは目標に直結する業務に経営資源(時間)を集中させることを意味します。
組織の役割分担が明確化され、縦割り組織になるほど、いざというときのエクスキューズのための資料や打ち合わせが増える傾向があります。
このような仕事をさせないためには、経営サイドのリーダーシップが必要です。実質的な成果に結びつく活動に社員の活動時間を割くべきです。
意味のある仕事に集中することを第一に考えるようにしましょう。
(4)業務プロセスの見直しと効率化
これまで当たり前と思って取り組んでいた仕事でも、その多くは「やめる」か「減らす」ことが可能です。
「今やっている仕事をITに置き換える」という発想ではなく、「いっそのこと、やめてしまえないか?」という発想で業務を見直してみてください。
意外に、やめてしまっても困らない仕事は多いものです。
3.小手先の時短をやめる
経営者やマネージャーにとって、時短は単に作業時間を短縮することではなく、業務の本質を見直し、重要なことに集中するための戦略です。
組織の目標達成に直結しない活動を削減し、資源を有効活用することが、持続可能な成長への鍵となります。
時短の基本は、「どう効率化するか」ではなく、「何をさせないか」にあるということを念頭に置き、経営資源の最適化を図ることが求められます。
また、「何のために時短をするのか?」を明確にし、時短そのものを目的化しないことも重要です。
(1)効率化を超えた価値創造
時短の取り組みを進める際には、単に効率化を目指すのではなく、価値創造の観点を持つことが大切です。
業務プロセスの改善や効率化を通じて、新たな価値を生み出し、顧客満足度の向上や新たなビジネスチャンスの創出につなげることができます。
(2)継続的な見直しと改善
時短は一過性ではなく、継続的な取り組み(見直しと改善)が必要となります。当然のことながら、市場環境や組織の状況は常に変化します。
特にICT技術は日進月歩であり、ついこの前まで人手を介してしかできなかった作業が、人間よりも高い精度で機械化できるようになっているというケースは珍しくありません。
このような変化への対応は、社員に任せるボトムアップ型ではなく、経営者や管理部門が定期的に業務プロセスを見直し、改善を繰り返すトップダウン型が有効です。
4.おわりに
経営資源のなかで最も重要な「時間」を効果的に活用することは、中堅・中小企業にとって競争優位を生み出す源泉となります。
時短は細かな改善の積み上げも確かに重要ですが、経営層が思い切って「何を捨てるか」を決めるほうが簡単で、より大きな効果を上げます。
「この仕事はなぜ行っているのか?」「本当にこの書類は必要なのか?」といったゼロベース思考で、「捨てる仕事」を見つけ、浮いた時間を創造的な仕事に充てるよう組織文化を変革し、高収益企業への体質転換を目指していただきたいと思います。
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