Netpress 第2190号 飲酒運転根絶に向けて アルコールチェックの義務化への対応
1.事業所における飲酒運転を根絶するため、アルコールチェックに関する道路交通法施行規則が改正され、順次施行されています。
2.安全運転管理者が、運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認することが、2022年4月より義務化されています。
3.2022年10月からは、安全運転管理者が、アルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無の確認を行うことが義務化されます。
日本橋総合法律事務所
弁護士 日野 修一
1.改正の経緯
2021年6月に、千葉県八街市で、トラックが歩いて下校中の小学生の列に突っ込み、5人が死傷するという痛ましい事故が起こりました。
加害者はトラック運転手であるにもかかわらず、常習的に飲酒運転を繰り返し、その結果事故を起こしていたこと、会社は安全運転管理者を置かず、運転者の状態を十分には把握していなかったことが後日判明しました。
この事件を受け、事業所における飲酒運転を根絶するため、道路交通法施行規則が一部改正され、安全運転管理者の業務について、拡充が図られることとなりました。
2.安全運転管理者の選任について
一定台数以上の自動車を使用する者(会社、法人など)は、自動車の使用の本拠ごとに、安全運転管理者の選任を行わなければなりません。
注意点は、会社ごとではなく、「使用の本拠ごと」に選任を行わなければならない、ということです。つまり、事業所、支店、営業所などの拠点ごとに、安全運転管理者を選任する必要があるか判断されるということです。
一定台数以上とは、「①乗車定員が11人以上の自動車1台以上」または「②その他の自動車5台以上」をいいます。いわゆる「白ナンバー」の車両も対象となります。なお、自動二輪車(バイク)は、1台を0.5台として計算します。いわゆる原付バイクは、台数に含めません。
安全運転管理者を選任したときは、選任の日から15日以内に、事業所を管轄する警察署に必要書類を提出する必要があります。
3.今回の改正内容
以前より、安全運転管理者が運転前の運転者の状態を確認する義務はありましたが、確認方法は具体的には定められていませんでした。
また、運転後の状態を確認する義務はありませんでした。
今回の法改正により、以下の事項が義務化されました。
(1)2022年4月から義務化 ・運転前後の運転者に対し、状態を目視等で確認して、酒気帯びの有無を確認すること(具体的には、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などで確認する) ・確認の内容を記録し、その記録を1年間保存すること |
(2)2022年10月から義務化 ・アルコール検知器を用いて酒気帯びの有無を確認すること ・アルコール検知器を常時有効に保持すること |
アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知し、アルコールの有無や濃度を警告音、警告灯、数値等により確認できれば、特段の性能は要求されません。また、アルコールを感知するとエンジンがかからないような、車両の機能によって確認することでもよいとされています。
「常時有効に保持」とは、アルコール検知器が正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことをいいます。適切に使用、管理するだけでなく、定期的に故障してないかを確認する必要があります。
現時点ですでに対応が可能であれば、10月の施行を待たずに、アルコール検知器による確認を始めても、もちろん構いません。
4.注意点
改正により、運転者の「運転前後」に確認する義務が新設されましたが、必ずしも個々の運転の直前、直後にその都度行わなければならないというわけではありません。運転を含む業務の開始時や出勤時、業務終了時や退勤時に確認することで足りるとされています。
安全運転管理者による確認は、対面での確認が原則ですが、運転者が直行直帰をする場合など、対面での確認が困難な場合は、適宜の方法で実施すればよいとされています。たとえば、以下のような方法です。
運転者に携帯型のアルコール検知器を携帯させたうえで、
①カメラ等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、声の調子等を確認し、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
②携帯電話、業務無線など、運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法
事業所に安全運転管理者が不在の場合は、安全運転管理者の業務を補助する者が確認をすることでも差し支えないとされています。
5.最後に
今回の改正を踏まえて、まずは事業所ごとに車両台数の確認をしたうえで、安全運転管理者の選任を行うべき台数を使用している場合は、次の措置を行う必要があります。
・安全運転管理者の選任と届出
・アルコール検知器を準備したうえでの確認体制の確立
・確認結果の記録化の体制整備
運転者が飲酒運転をしてはならないのは当然のことですが、個々の運転者の自覚やモラルに任せておけばいいというものではありません。会社としても、絶対に飲酒運転をさせないという強い決意のもとで、法律に定める具体的な確認を遺漏なく行うために準備を進めていく必要があります。
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