SWOT分析とは? 議論を深める具体例やミーティングの進め方を解説

SWOT分析は、3Cや4P、PEST分析などと並んで事業戦略を立案する際によく利用されるフレームワークです。

孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」という一説をご存じの方は多いと思いますが、SWOT分析の基本的な考え方は同じです。

ビジネスでは、「彼」は顧客・ライバル企業・ファンダメンタル(社会情勢)といった外部環境になり、「己」は自社の内部環境と言えます。

SWOT分析を行うことで、自社を取り巻く外部環境と自社の内部環境を正確に把握し、自社にとっての事業機会や事業における成功要因(KSF=Key Success Factor)を検討することが出来ます。

SWOT分析は、社会人の一般常識とも言えるフレームワークですが、上手く使えていない事例も見受けられます。

本記事では、具体例を多くご紹介していますので、ご活用いただければと思います。

1.戦略立案とSWOT分析

中期計画の策定や新規事業の検討に用いられることが多いSWOT分析ですが、どのように利用をされているかについて概略をご説明します。

 

(1)戦略立案のステップ

 一般的に、企業戦略を立案するにあたっては、以下のようなステップで行います。



経営理念やビジョンを基に、環境分析を行い、その上で自社が取りうる全体戦略を決定し、個別戦略にブレイクダウンしていきます。

 

SWOT分析は、環境分析と全体戦略の策定に力を発揮するフレームワークと言えます。

 

(2)環境分析のSWOT分析

環境分析の対象となるのが、以下の2つです。

 

●内部環境=自社

●外部環境=競合・顧客

 

SWOT分析は、自社の外部環境に潜む機会(O=Opportunity)、脅威(T=Threat)を検討・考慮した上で、自社が持つ強み(SStrength)と弱み(WWeakness)を確認・評価し、全体戦略の策定に繋げていきます。

 

強みと機会は自社にとってプラス要因であり、弱みと脅威はマイナス要因であることから、「プラス・マイナス」と「内部・外部」の2軸により以下のようなマトリクスが作成できます。

 


 

(3)全体戦略の策定に繋げるクロスSWOT分析(TOWSマトリックスともいわれる)

SWOT分析で洗い出した「強み」「弱み」「機会」「脅威」をそれぞれ掛け合わせることで、以下のように各領域の検討観点が見えてきます。

 


 

クロスSWOT分析では、内部環境と外部環境を組み合わせて、「強み×機会(積極化)」、「強み×脅威(差別化)」、「弱み×機会(改善)」、「弱み×脅威(防衛・撤退)」という4つの領域で、戦略を明確にします。

 

①強み(S× 機会(O)=積極化戦略

自社の「強み」を活かして、「機会(ビジネスチャンス)」に対して、どんな行動や施策をとれば良いのかを検討します。

 

「強み×機会」領域は、自社の最大のビジネスチャンスです。戦略策定は、「積極化戦略(強み×機会)」を最優先に考えていきましょう。

 

なるべく多く洗い出すことが大切です。経営資源には限りがありますが、戦略のオプションは多く持ち、最終的に優先順位を意識して、絞り込みを行います。

 

②強み(S× 脅威(T)=差別化戦略

競争の激化や市場縮小などの「脅威」に対して、自社の「強み」を使って、どう切り抜けていくかを考える戦略です。

 

「強み×脅威」領域は、「防衛する」ということが大きな方向性となりので、具体的には、競合他社に対する差別化などが戦略の中心になります。

 

③弱み(W× 機会(O)=改善戦略

ビジネスチャンス(機会)を活かすために、自社の弱みを補強したり、改善したりする戦略です。

 

「弱み」を克服するのには時間がかかることが多いので、少しずつ段階的に進める必要があります。

 

市場環境そのものは好条件であるため、「強み×機会」に転化できるよう、成果を出すのは中期となりますが、そのための仕掛けや準備は、具体策を検討する姿勢が必要です。

 

④弱み(W× 脅威(T)=防衛・撤退

「脅威」の影響を最小限にとどめるための防衛的な戦略となります。

「弱み×脅威」領域では、目の前に脅威が迫っているのに自社の内部環境から対応できず致命傷となりかねません。最悪の場合は、事業の撤退も視野に入れる必要があります。

 

これらの項目で一度整理することで、全体戦略のオプションを洗い出すことができ、優先順位をつけることで、戦略の立案・検討をしやすくなります。

 

2.SWOT分析の具体的な進め方

(1)外部環境の分析

SWOT分析は、名称の頭にある(S)から検討を始めるかというとそうではありません。

 

内部環境の「強み」「弱み」は、外部環境の変化により影響を受けることが多くありますので、外部環境の分析から始めるのが定石です。

 

例を示しますと、円高傾向が続く場合、海外から資材を多く輸入していることは「強み」となりますが、外部環境が変化し、円安傾向が続く場合は、「弱み」となるからです。

 

外部環境の「機会」と「脅威」は、マクロ環境とミクロ環境の2点で考えていきます。

それぞれに、会社や事業によって、プラスに働く場合(機会)と、マイナスに働く場合(脅威)があります。自社にとってどうなのかという視点で考えていきましょう。

 

①マクロ環境 

企業を取り巻く外部環境のうち、事業活動に影響を与える可能性のある要因を政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点で特定し、将来の動向を分析していくフレームワークである「PEST分析」を使って自社に影響のあるものを考えてみましょう。

 

「政治」(Politics)      :法律の改正や政治動向

「経済」(Economics      :景気動向や金利

「社会」(Society)   :人口動態や生活スタイル

「技術」(Technology) :新技術の登場や技術の陳腐化

 

②ミクロ環境

外部環境や競合の状況から事業のKSFKey Success Factor:成功要因)を導き、事業を成功に導くために用いられるフレームワークである「3C分析」やSWOT分析の「T」脅威を分析するモデルである「5フォース分析」を使って、自社に影響のあるものを考えてみましょう。

C分析

「市場・顧客」Customer :市場の成長性や顧客ニーズの変化

「競合」Competitor      :競合他社の状況や商品

「自社」Company    : 自社の評判や強み弱み

 

5フォース

新規参入の脅威    :entry

競合の脅威      :rivalry

代替品の脅威     :substitutes

供給者の脅威     :suppliers

購入者(顧客)の脅威 :buyers

  

③具体例

日頃から、考えていないと議論がなかなか進まない可能性もありますので、以下の具体例を参考に、ミーティングのリーダーは、頭出しを行う等の工夫が必要です。

 



(2)内部環境の分析

外部要因である「機会」「脅威」と比較すると自社の要因である「強み」「弱み」は比較的活発に議論が進むはずです。

 

注意すべきは、「強み」「弱み」は、比較対象をどこにおくかという点で、事前にメンバーで擦り合わせを行っておかなければ、議論がかみ合わなくなります。

 

当然ですが、自分たちよりレベルの低い同業者と比較した場合では「強み」が多くなりますし、上場企業などの一流企業と比較すれば「弱み」が多くなります。

 

先に実施した「外部分析」で行った、自社のターゲットとするマーケットで競合する同業者や仮想業者を比較対象としてください。

 

VRIO分析の実施

企業の強みと弱みを分析する代表的なフレームワークである「VRIO分析」を参考に自社の分析を行っていきましょう。

 

Value(経済価値)     :企業の有する経営資源が「経済的な価値がある」か

Rareness(希少性)    :他社にない経営資源があるか

Imitability(模倣可能性) :経営資源を他社が模倣しやすいか

Organization(組織)   :経営資源を有効に活用できる組織かどうか

 

②「強み」「弱み」の見つけ方

初めてSWOT分析を行う場合はVRIO分析を行っても、「うちには強みはない」という意見しか出ないことが多々あると思います。

 

仮に「弱み」ばかりでは、何年も何十年も事業が続いているということはありえません。思いつかない時は、以下のような視点から考えてみましょう。

 

ⅰ)適切な競合他社との比較

顧客は、競合他社の商品やサービスと自社のそれとを比較しています。他社の調査を行うことで、自社の「強み」「弱み」を考えてみます。

 

ⅱ)顧客の視点から考える

顧客から自社の商品を選んでいただける理由や、要望事項・クレームなどをアンケートで意見を集めたり、取引先からヒアリングすることで、顧客の視点に立った、自社の「強み」「弱み」が見えてきます。

 

ⅲ)広く様々な部署の従業員に聞いてみる

日々の業務の中で、顧客と接する従業員は自社の「強み」「弱み」を実感しているはずです。

 

又、営業、経理、製造などの部門によって視点は異なります。SWOT分析を行い全体戦略の策定を行う場合には、議論に参加するメンバーは、異なる部署の従業員を指名することも必要です。

 

③具体例

以下に具体例をお示ししますが、注意点は内部環境と外部環境を間違えないことです。

 

外部環境は「影響を受けるだけで、自社の力では変えようがないもの」であり、内部環境は、「自社が原因のもの、自社が頑張ればなんとかなるかもしれないもの」であると考えてください。

 


3.クロス分析による戦略の検討

SWOT分析で強み・弱み・機会・脅威が整理できたら、「クロスSWOT分析」で戦略の方向について考えていきます。

 

(1)クロスSWOTの行い方

先ほど、それぞれの枠の戦略について、説明をしましたが、再度簡単にまとめておきます。

 

強み×機会 :強みを最大限に活かしてチャンスを掴む

強み×脅威 :強みを活用することによって、脅威の影響を抑える

弱み×機会 :弱みを克服することで、チャンスを掴む

弱み×脅威 :弱みと脅威によるマイナスの影響を最小限に抑える、または撤退する

 

具体的事例として日本マクドナルドの簡単なクロスSWOTをご覧ください。



 

日本マクドナルドでは、

 

2010年に家庭への宅配サービス「マックデリバリー」の開始

2013年には500円台の大型バーガーの導入

●幅広い利用方法に対応したモバイルオーダ―

●夜間一人の夕食をイメージしたCMの展開

 

などを具体的に展開していることをご存じだと思います。

 

クロスSWOTをご覧いただければ、日本マクドナルドの実際の戦略に至る意思決定のプロセスが想像できるのではないでしょうか。

 

(2)戦略の優先順位決め

日本マクドナルドのような大企業では、各ゾーンから出たそれぞれの重要な戦略について、同時に対応をすることが可能ですが、一般的な企業では、どこから手を付けるかの優先順位を決めなければなりません。

 

目的に合わせた優先順位の決定

優先順位の決定は、

ⅰ)テーマや重要性、緊急度によって、大きく「単年度」と「中期」に分ける。

ⅱ)「単年度」について、緊急度に応じて優先順位を決める

ⅲ)「中期」の中の、仕掛けや準備を今年度中に実行すべきものを挙げる

ことで、今期の個別の事業計画に繋げていきます。

 

ルーティンや緊急度の高い戦略への対応だけで中々、中期計画に向けた仕掛けや準備までは難しいという声はよくお聞きします。

 

SWOT分析を行うメリットの一つに、メンバーでしっかり議論することで、動機付けになるということがあります。是非、具体的な実行計画に落とし込んで、進めていきましょう。

 

4.単年度対策の実行計画化

ここまでのところで、SWOT分析・クロスSWOT分析から、全体計画・個別事業計画の策定と単年度対策の立案までがほぼ終了です。

 

PDCAサイクルでいえば、「P」(計画)の段階がほぼ終了しましたので、次に「D」(実行)に移っていきます。

 

「D」に必要なアクションプランについては、数字で把握できる指標を積極的に用いるなどして、誰が見ても分かりやすく、進捗管理が可能な具体性のある数値目標や期限を設定することが重要です。

 

アクションプランについては、実行に必要な以下の5W2Hの要素を意識して検討を重ね進捗管理を行っていきましょう。

 

5WH

 

ⅰ)誰が(Who

ⅱ)いつ(When

ⅲ)どこで(Where

ⅳ)何を(What

ⅴ)なぜ(Why

ⅵ)どのように(How

ⅶ)いくらで(How much

5.SWOT分析の活用方法

SWOT分析は、経営全体・事業全体の現状を把握するだけでなく、様々な項目やテーマごとに利用することが可能です。

 

たとえば、商品やサービスをテーマとした場合、「商品やサービス」の強み・弱み・機会・脅威を分析したり、個人の就職活動が上手くいかない時には「自分自身」をテーマにして面接戦略を立てたりすることも可能です。

 

6.まとめ

SWOT分析では、自社の経営や事業を取り巻く環境を多面的に分析することができます。

 

またメンバー全員で、強み・弱み・機会・脅威の4つのマスを様々な視点から思いつくままに箇条書きで埋めて、事業計画の作成、戦略の明確化する作業を通して、メンバーのモチベーションを向上させる効果も期待できます。

 

是非、SWOT分析の正しい使い方を身に付けて、活用してください。


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SMBCコンサルティング株式会社 ソリューション開発部 教育事業グループ

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