皆様の会社では、ディーセント・ワーク（働きがいのある人間らしい仕事）についてどのように取り組まれていますでしょうか。

政府ではビジネスと人権に関する行動計画が作成され、企業による人権尊重の重要性について国際的な関心が高まっています。特に労働分野ではディーセント・ワークの実現に引き続き努めるとしています。また、SDGs（持続可能な開発目標）にも出てくるキーワードとしても注目を集めています。

１．ディーセント・ワークの定義

ディーセント・ワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」<第87回ILO総会 事務局長報告>のことを指します。具体的に、この内容は4つに整理されています。

1. 働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること
2. 労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること
3. 家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること
4. 公正な扱い、男女平等な扱いを受けること

また、ディーセント・ワークの実現のために4つの戦略目標を定めています。

(１)雇用の促進

(２)社会的保護の方策の展開及び強化

(３)社会対話の促進

(４)労働における基本的原則及び権利の尊重、促進及び実現

政府が推し進める具体的な取組として、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の抑制や勤務間インターバルの設定、女性活躍推進や高年齢者の雇用促進などの動きがその1つと言えます。

２．ディーセント・ワーク実現への取組

「ディーセント・ワークと企業経営に関する調査研究事業報告書」（みずほ情報総研株式会社　平成24年3月）の調査では、「ディーセント・ワークを実現できる職場かどうか」を判断するために、以下の軸を用いています。以下の制度への取り組みを評価し、スコア化しています。

◆ディーセントワークの達成度を判定するための軸（抜粋）◆

①ＷＬＢ軸：「ワーク」と「ライフ」をバランスさせながら、いくつになっても働き続けることができる職場かどうかを示す軸

・長時間労働是正・解消、年次有給休暇促進

②公正平等軸：性別や雇用形態を問わず、すべての労働者が「公正」「平等」に活躍できる職場かどうかを示す軸

・人事評価や昇進・昇格基準の明確化、ポジティブアクション

③自己鍛錬軸：能力開発機会が確保され、自己の鍛錬ができる職場かどうかを示す軸

・非正規能力開発、自己啓発支援、自己申告・社内公募

④収入軸：持続可能な生計に足る収入を得ることができる職場かどうかを示す軸

・正社員、非正社員における定昇・ベア・業績評価、法定外福利厚生費

⑤労働者の権利軸：労働三権などの働く上での権利が確保され、発言が行いやすく、それが認められる職場かどうかを示す軸

・労働組合の組織率、苦情処理機関

⑥安全衛生軸：安全な環境が確保されている職場かどうかを示す軸

・長時間労働者の面談、メンタルヘルス対策

⑦セーフティネット軸：最低限（以上）の公的な雇用保険、医療・年金制度などに確実に加入している職場かどうかを示す軸

・私傷病休暇制度、復職支援制度

※「ディーセント・ワークと企業経営に関する調査研究事業報告書」（みずほ情報総研株式会社　平成24年3月）

３．ディーセント・ワーク達成度と成果との関連

結果として、上記の軸をスコア化したディーセント・ワーク達成度と今の仕事・働き方に対する従業員満足度には相関関係があり、すなわち「ディーセント・ワークが実現されている企業ほど、そこで働く従業員の仕事・働き方に対する満足度が高い」ことが明らかになりました。

このことより、企業におけるディーセント・ワーク実現に向けた取組が、従業員の働きやすさ向上に寄与している可能性があることが示されています。

近年では、企業の社会的責任に関する取り組みが広がってきています。こちらでご紹介した調査によりますと、ディーセント・ワーク実現に向けた取組が高まると、従業員は働きやすさを感じ、勤続年数が長くなる傾向が見られています。政府によるディーセント・ワーク実現に向けた発信状況を踏まえると、このようなテーマが今後より積極的に推進されると想定されます。

詳細について以下のリンクをご参照ください。

※関連リンク

〇厚生労働省「ディーセント・ワークと企業経営に関する調査研究事業」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudouseisaku/decentwork.html

〇厚生労働省「ディーセント・ワーク（働きがいのある人間らしい仕事）について」

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kokusai/ilo/decent_work.html