Netpress 第2131号 SDGs時代への対応 求められる情報発信とそれを支える「軸」と「実態」

Point
1.環境変化を捉える一方で、「変えるもの」「変えないもの」を見極める「軸」を強化する必要があります。
2.軸となる「企業の価値観」に加えて、どのような取り組みを行っているのかという「実態」が重要になります。
3.自社目線(Me視点)ではなく、価値を享受するステークホルダーの目線(You視点)で発信しましょう。


クロスメディア・コミュニケーションズ株式会社
代表取締役 美奈子・ブレッドスミス


1.環境変化を捉えながらも、流されないために必要な「軸」


前回(2021年10月の第2113号「ステークホルダーとの信頼醸成のための情報発信」)では、以下の3つの点についてお伝えしました。


①個人最適化等の情報プラットフォームや検索技術等の変化により、企業の情報がステークホルダーに届きにくくなっている点


②個人が感情や意見を発信しやすくなったコミュニケーション環境によって、企業やブランドに対しても「共感」や「賛同」が可視化されるようになった点


③企業の価値観や経営姿勢が、一般生活者だけではなく、取引先等からの評価にも影響を及ぼす可能性がある点


これらに言及しながら、従来の「自社の伝えたいことを伝える」一方通行の情報発信から、ステークホルダーが求める情報や社会の期待に応える姿勢を発信することの重要性に触れました。つまり、マスメディアだけではなく、企業も一般生活者も自由に情報を発信できる状況下においては、企業のコミュニケーション活動の「発信」に加えて、社会の声に耳を傾ける「傾聴」を取り入れることが不可欠です。


しかしながら、社会を十把一絡げにすることはできません。既存の社員や取引先、顧客だけでも多様な価値観を有していると考えられます。「傾聴」した社会の声や意見をどう分析・精査し、事業や社内にどう生かすのかを考慮しなければ、あとで振り返った時に「ただ社会に流された」「振り回された」と評価せざるを得ない状況が危惧されます。


だからこそ、経営環境が目まぐるしく変わる今日において、いま一度、自社の価値観を見つめ直し、「変えるもの」「変えないもの」を見極める「軸」を強化する必要があると考えます。


2.軸となる「企業の価値観」に加え、重要となるのは「実態」


外部から聞こえてくる多様な価値観や考えを自社としてどのように捉えるべきか、その判断の軸となるのは「企業の価値観」、つまり企業理念や企業の存在意義、行動指針、経営方針等です。


昨今、SDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の持続可能な開発目標)が注目されています。しかし、実態が伴わないなかでこれらに取り組んでいるようなメッセージを発信してしまえば、「SDGsウォッシュ」と呼ばれる自社のための表面上の取り繕いや粉飾という解釈をされかねません。


つまり、SDGsだけではなく、「傾聴」した社会の声に対して、現状どの程度取り組めているか、今後の経営戦略や方針として事業や制度等に反映させて本気で取り組むものであるかなど、自社の「軸」や「実態」と照らし合わせながら、発信すべき状態にあるか、その場合はどの程度、どのような内容を発信すべきかを慎重に判断しなければなりません。


3.「企業の価値観」と「実態」の可視化の具体例


仮に「傾聴」した声が、女性の活躍推進や男女平等に関して企業に対応を求めるものだったとします。その背景には、少子高齢化や労働人口の減少等の社会課題があり、SDGsで掲げられている項目の一つである「ジェンダー平等を実現しよう」にも当てはまります。


このテーマで企業が信頼醸成のための発信を行う際のアプローチの一例として、次のようなものが散見されます。


例1:「私たちは女性が活躍できる職場づくりを進めています」という宣言


例2:「えるぼし認定」「くるみん認定」取得の掲示


この具体例は、「企業の価値観」の一つで、経営方針に即した動きであると想像できます。この企業姿勢に異を唱える余地はまったくありませんが、今回は「共感」「賛同」につながる情報発信の手法や真の「企業の価値観」が論点です。


そこで、この宣言や認定の掲示そのものの良否ではなく、ソーシャルメディアや個人の発信、「いいね!」等の共感が可視化される今日の環境に適したアプローチの一例を紹介しましょう。下図を見てください。



これは、「えるぼし認定」「くるみん認定」取得そのものの発信から、当事者の実感にスポットライトを当てることへと観点を変えることを示しています。


たとえば、社員のエピソードとして、「もうすぐ10か月になる娘の予防接種のため、1時間単位で取得できる子の看護休暇制度を使いました。仕事と子育てを両立するうえで、柔軟に時間を調整できる環境があるのは大変心強いです。」という社員の実体験があったとします。この場合に、認定取得の事実だけを発信するよりも、その価値を享受する社員の実態が見えるほうが信頼性も増し、情緒的な共感につながるという認識です。


つまり、自社目線(Me視点)で発信するのではなく、価値を享受するステークホルダーの目線(You視点)で発信することにより、共感を通じた信頼醸成を図るのが狙いです。


事実情報の発信はニュースリリースやウェブサイトへ掲示するだけに留まりますが、企業の価値を享受する人はステークホルダーの数だけ存在し、またその数だけ企業の多様な価値を示すことが可能となります。しかしながら、そこにはステークホルダーが価値を享受している「実感」を持てる『実態が存在する「事実」』が不可欠です。



企業経営に携わる方々には、自社の企業理念や経営方針に基づいて「わが社は、誰に、どのような価値を提供しているのか」「ステークホルダーは、その価値を実感しているのか」ということを、コミュニケーション活動を通じて再点検していただければと思います。


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