Netpress 第2512号 対応方法は? もし、投資詐欺被害に遭ってしまったら……
1.昨今、SNS、LINEグループ、専用の取引口座アプリ等を利用した投資詐欺が増加しています。
2.その手口は非常に巧妙で、法的手続を執っても、被害金額を十分に回収することができず、費用倒れになる場合があります。
3.そのような実情をご理解いただいたうえで、ここでは、投資詐欺被害に遭った際の対応方法を解説します。
1.振り込め詐欺救済法に基づく対応
振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺のみならず、人の財産を害する犯罪行為(投資詐欺、インターネットオークション詐欺、出会い系サイト詐欺等)であって、預貯金口座への振込みが利用されたもの全般を、「振込利用犯罪行為」と定義しています。
そして、犯罪利用預金口座を、裁判によらず一定の手続により利用停止・失権させたうえで、その口座の預貯金相当額を、被害回復分配金として被害者に支払う、という被害回復制度を用意しています。
以下、被害回復の手続の概要を説明します。
(1) 金融機関に対する情報提供による口座凍結
被害回復に向け、第一に、振込先口座を凍結し、残高減少を防ぎます。
そのために、同口座の取扱金融機関に情報提供をする必要があります。警察に被害届を出していれば、警察から金融機関へ情報提供をしてくれるようですが、被害者自身でも情報提供をするべきです。
情報提供を受けた金融機関は、調査の後、その口座が犯罪利用預金口座であると認定した場合、取引停止等の措置(口座凍結)を講じます(法第3条第1項)。
(2) 失権手続
口座凍結後、金融機関の求めに応じて、預金保険機構が、犯罪利用預金口座の失権公告をします(預金保険機構・振り込め詐欺救済法に基づく公告等システム https://furikomesagi.dic.go.jp/)。
失権公告後、一定期間(60日間以上)内に法的手続等の「権利行使等」がなされなければ、預金者は、預金に対する権利を失い、預金を被害者に分配する支払手続に進みます。しかし、権利行使等がなされると、失権手続は終了し、支払手続まで進みません。
失権公告により預金口座に残高があることが周知されると、他の被害者が回収のために法的手続に及ぶ可能性があります。一定程度の残高がある場合には、早期に民事手続(後述)にシフトしたほうがよいかもしれません。
(3) 支払手続
失権手続後、金融機関の求めに応じて、預金保険機構が、被害回復分配金支払いのための公告をします。
被害者は、金融機関に対して、申請期間内に、本人確認書類とともに支払申請書を提出することで、被害回復分配金を受領できます。
ただし、支払申請者が複数いるような場合には、各自の被害金額に応じて、預金額が按分されてしまいますので、注意してください。
2.民事手続による対応
本来であれば、主犯格等の実行犯に対して損害賠償請求をしたいところですが、実行犯の住所氏名等を特定することはほぼ不可能です。
被害回復の糸口となるのは、振込先口座の情報(振込明細書)です。その口座は、犯罪グループが「闇バイト」等で第三者から売買・貸与等を受けたものであることが多いです。
犯罪収益移転防止法の諸規定からすれば、自己名義の預金口座の提供行為は原則として許されず、口座提供者は、詐欺の実行行為を幇助したものとして、実行犯との間で共同不法行為責任を負うという裁判例があります(東京地判令和5年2月22日2023WLJPCA02228005)。
そこで、以下、振込先口座名義人に対する損害賠償請求の手順を解説します。
(1) 振込先口座名義人の特定(弁護士会照会)
被告の氏名(漢字)と住所がわからなければ、提訴しても訴状等の送達ができません。
弁護士は、弁護士会を通じて、振込先口座の取扱金融機関に対して、その口座の名義人の住所、氏名、口座残高等の情報を照会することができます(弁護士会照会。照会手数料は照会先金融機関1社あたり約1万円)。
たいていの場合、犯行グループは、入金されると即日、別口座に転々送金してしまい、振込先口座の残高は皆無であるケースが多いため、弁護士会照会の際は、前述の照会事項に加えて、別の口座に預金が送金されていた場合の当該送金先(再送金先)の情報も併せて照会するとよいでしょう。
再送金先口座が判明すれば、追加で弁護士会照会を行い、口座名義人や残高を特定していきます。しかし、金融機関が再送金先に関する回答を拒否したり、海外口座等に再送金されたりしてしまうと、それ以上は追跡することができません。
(2) 民事手続による回収(仮差押、民事訴訟、差押)
振込先口座に相当程度残高があり、かつ、口座名義人の住所氏名が判明したら、裁判所に対して、預金債権の仮差押命令申立てをし、仮差押命令の効力発生後、民事訴訟(口座名義人に対する、共同不法行為に基づく損害賠償請求訴訟)を提起します。
訴訟において、被告(口座名義人)は、「自身の口座を貸与・売買したのみで、犯罪利用されることなど認識しておらず、故意過失はなかった」等と反論してくることがあります。
これに対しては、「預金口座の悪用が大きな社会問題となっている現状において、自己名義の預金口座のキャッシュカード及び暗証番号を第三者に提供する行為がおよそ通常の商取引からかい離した、犯罪につながりかねないものであることは、社会常識として一般に明らか」であり、被告は預金口座の不正利用を認識し得たとして、少なくとも過失は認められると考えます(前記裁判例参照)。
そして、債務名義(請求認容判決の確定等)を得た後においても、被告が任意に支払わない場合には、仮差押済みの口座への強制執行のため、裁判所に対して債権差押命令申立てをし、取立てをすることで、被害回復を図ります。
以上が民事手続の概要になります。とりわけ弁護士会照会は弁護士でなければできないため、弁護士への依頼が必要になりますが、弁護士費用等がかかりますので、預金保険機構の公告で口座残高を確認した時点で、方針を決めるのがよいと思います。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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