Netpress 第2517号 マンションの「2つの老い」に対処 区分所有法改正の概要と実務対応について
1.老朽化マンション等の管理と再生の円滑化等を図るために、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が改正され、2026年4月1日から施行されました。
2.改正法では、マンション管理の円滑化の観点から、集会決議要件の緩和や財産管理制度の創設などが行われています。
3.また、マンション再生の円滑化の観点から、建替え決議要件の緩和や建替え以外の再生手法を多様化する仕組みが創設されています。
1.区分所有法改正の背景と課題(「2つの老い」の深刻化)
日本の分譲マンションは、ストック総数が700万戸を超え、国民の1割以上が居住する重要な社会基盤となっていますが、現在は「建物」と「居住者」の「2つの老い」という深刻な課題に直面しています。
国土交通省の推計では、築40年以上のマンションは今後20年で約3.3倍に急増すると見込まれており、建物の安全確保や修繕が急務となっています。
一方で居住者の高齢化も進み、管理組合活動への無関心、所有者不明、非居住化が進行した結果、管理や再生に必要な決議の成立が著しく困難になっています。
今回の改正は、こうした管理不全を防ぎ、マンションの管理・再生を円滑に進めることを目的としています。
2.管理の円滑化の観点からの改正内容
改正法では、マンションの日常的な管理を円滑に進めるため、集会決議に関するルールが大きく見直されることになりました。
特に、所有者の実態に合わせた柔軟な意思決定を可能にするための新たな仕組みが導入されています。
(1) 所在等不明区分所有者への対応
従来、所在等不明者は事実上の反対票として扱われ、決議成立の大きな障壁でした。
改正法では、管理者等が裁判所に申し立て、公告等の手続を経ることで「所在等不明区分所有者の除外決定」を得られる制度が創設されました。
これにより、所在等不明者は集会における決議の母数(頭数と議決権)から除外でき、その効力は以後の集会決議全般に及ぶことになります。
(2) 集会決議の円滑化
区分所有者の関心の低下等により集会への出席率が低いマンションにおいても必要な意思決定を行えるよう、決議の母数を全区分所有者から出席者に変更できる制度(出席者多数決)が新設されました。
普通決議(役員の選任・解任、共用部分の管理等)については、従来は全区分所有者の過半数が必要でしたが、出席者の過半数での決議が可能となりました。
また、特別決議(規約の設定・変更・廃止、共用部分の変更等)についても、要件を満たせば出席者の多数決で決議可能となりました。
ただし、特別決議が必要な事項(建替えを除く)については、区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を有する者が出席するという定足数が設けられています。
(3) 共用部分の変更(重大変更)の要件緩和
共用部分の形状または効用の著しい変更を伴う重大変更は、従来、4分の3以上の賛成が必要でした。
改正法では、次の場合に限り、要件が3分の2以上に緩和され、必須の修繕が実施しやすくなりました。
| ① | 設置・保存の瑕疵による権利侵害のおそれがある場合 | …… | 例:倒壊のおそれがある立体駐車場を取り壊す場合 |
| ② | バリアフリー化のために必要な場合 | …… | 例:高齢者や障害者等のためのスロープ設置等 |
(4) 管理不全・所有者不明専有部分への対応
所有者の所在が不明の専有部分や、ゴミ屋敷など管理が不適切な状態にある専有部分に対応するため、裁判所が関与する新たな財産管理制度が導入されました。
利害関係人(管理者など)の請求により、裁判所が管理人を選任し、専有部分の売却も含めた適切な管理・処分を行えるようになりました。
3.再生の円滑化の観点からの改正内容
(1) 建替え決議要件の緩和
建替え決議は従来、各5分の4以上の極めて高い賛成が必要でした。
改正法では、次のような客観的要件を満たす場合、決議要件が各4分の3以上に緩和されました。
- 耐震性の不足
- 火災安全性の不足
- 外壁剥落等の危険
- 衛生上の有害性
- バリアフリー基準不適合
ただし、単なる経年劣化や老朽化だけでは緩和されず、専門家による診断等に基づき具体的な劣化が認められる場合に適用されることになります。
(2) 建替え決議後の賃貸借の終了
建替えの障害の一つであった賃借人の退去問題に対応するため、建替え決議成立後、移転費用等を含む「正当な補償」の提供を条件に、建替え参加者が賃貸借契約の終了を請求できる新制度が創設されました。
請求から6か月が経過すると賃貸借契約は終了することになります。
(3) 再生手法の多様化
建替え以外の再生手法として、建物と敷地の一括売却、建物を取り壊した上での敷地売却、建物の取壊しを可能とする制度が創設され、出口戦略が明確化されました。
4.実務対応に向けて
改正法を有効活用するためには、所在等不明者の除外や出席者多数決の導入等に関する管理規約の改定が必要となる場合があり、早急な検討が求められます。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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