SMBC経営懇話会 定例講演会プレミアム 開催レポート 岡田武史講演レポート「チームマネジメント ─ 今治からの挑戦 ─」
PROFILE
1956年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、古河電気工業株式会社に入社。現役引退後は指導者に転身し、日本代表やJリーグのチームの監督を務める。2014年にFC今治のオーナーに就任。また、2024年4月に誕生したFC今治高等学校里山校の学園長も務めるなど、日本サッカー界の「育成改革」、そして「地方創生」に情熱を注いでいる。
チームの運営も会社の経営も、すべて理念があってこそ
会は講演と対談の2部構成。まずは第1部、スーツ姿で登場した岡田氏は、冒頭から豊かな声量とバイタリティあふれる口調で聴衆を惹き込む。組織をどう動かし、チーム作りをしてきたかとのお題に対して、現在の取り組みを詳細に語った。
「僕はいま愛媛県の今治でサッカークラブを運営したり、高等学校の学園長もしています。これまでの経験をもとに『岡田メソッド』という原則を作ったので、それをもとに選手の育成に取り組みたいと考えていたところ、声をかけてもらいクラブのオーナーになりました。総勢6人で会社を始めたころ、ライフネット生命保険株式会社創業者の出口治明さんに言われました。『たいへんなことを始めたね。スタートアップの9割が5年以内につぶれるんだ』。続けて『でも、このリスクにチャレンジする人がいないと、社会は変わらない』とも。僕はどんなことがあっても5年間、会社をもたせるぞと決意して、必死に経営をやってきました。それで現在11年目、つぶれずどうにかやっています」
理念に沿った経営判断で積み重ねてきた実績
経営の舵を取るのは初めてだったが、黒字経営を実現できている。その要因について岡田氏は、いくつも実例を示す。
「ウチには企業理念がしっかりあります。『次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する』というものです。経営経験のない僕は、すべての経営判断をこの理念に沿って下しました。目先の利益よりも理念なんだ、と。稲盛和夫氏から学んだ『利他の心』という言葉も忘れずにいました。その結果、コロナ禍で多くのクラブが苦境に立つ中、地域のパートナー企業から『君たちが頑張っているから支援を続ける』と共感を得て、大きな黒字を実現できました。理念に基づいて行動し、信頼という目に見えない資本を積み重ねてきたことが、困難な時に地域に支えられる力となったのです」
フィロソフィーを集約する6つのキーワード
岡田氏はサッカーチーム作りにおいても、理念を大切にしてきたと続ける。
「任されたサッカーチームでもいつもフィロソフィーを作ってきました。FC今治のチーム・フィロソフィーは6つのキーワードに集約してあります。順に紹介すると、①ENJOY。プロ選手だろうと楽しむという初心を忘れてはいけない。そこを踏み外してうまくなった選手はいません。②OUR TEAM。チームはプレーする選手一人ひとりのもの。その意識があればこそチームが一体化する。③DO YOUR BEST。勝つためにベストを尽くさなければいけない、そうすれば負けても得るものがあります。④CONCENTRATION。人生は永遠に続くいまを生き切るしかないのですから、いまやれることに懸命に取り組みます。⑤IMPROVE。向上心をもって、現状に満足せず、常に成長していかなければいけません。⑥COMMUNICATION。監督と選手のコミュニケーションで大事なのは、相手の存在を認めること。主体性と多様性を受け入れながら、共通の目的のためにベストな落としどころを見つけていかなければいけません」

第1部の講演で岡田氏は、手元に原稿を用意することなど一切ないまま、豊富な体験談を次々と繰り出した。自身の想いを伝えるパフォーマンス力にも刮目させられた

失敗し続けたとしても何度もやれば成功もする
第2部は、福島敦子氏との対談形式。論点は「リーダーのあり方」「組織の変革」「人材育成」の3つ。福島氏が岡田氏へ、サッカー監督のキャリアを通して自身のリーダー像がどう変わったかを問う。
「最初に日本代表監督になって1998年フランスワールドカップに臨んだときは、頭ごなしに自分が引っ張っていく指示型リーダーでした。その後、Jリーグの監督をするようになって、横浜F・マリノスで優勝できたのですが、選手が育っている実感はもてなかった。選手が主体的にエラー&ラーンしているように見えなかったんです。そこから選手の主体性に任せる方針へ切り替えました」
福島氏はさらに、「失敗を恐れず挑戦し続ける文化を、組織にどうやって根付かせたのか」と訊く。岡田氏は「いや失敗ばかりですよ」と笑顔で受ける。
「ただ僕はいつまでもあきらめない、しつこい性格なんです。何度もやっていると、たまに成功する。皆その成功した姿を見てくれているだけです。チームを強くするには、共通の目標・目的をしっかり浸透させていくことです。どう浸透させるかは、トップが常にそれに関する言葉を発し、決断するときには目標・目的に照らしてする。それが一番です」
約2時間の熱のこもった講演会。すべての参加者にとって実り多き時間となったようだ。

第2部ではジャーナリスト福島敦子氏と対談。言葉の重みと説得力は、幾多の修羅場をくぐってきた名将ならではだろう


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◎文/山内宏泰 写真/江森康之
◎「SMBCマネジメント+」2026年3月号掲載記事
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