Netpress 第2510号 「成功体験」で育てる! Z世代社員の就労観と離職を防ぐマネジメント
1.近年、上司世代とZ世代との就労観や価値観の違いは、これまで以上に鮮明になっています。
2.Z世代の就労観と離職の背景、中小企業が取り組むべき実務的な対応策について紹介します。
1.Z世代の就労観と離職の背景
Z世代は、個人や個性が尊重される環境で育ち、インターネットやスマートフォンが身近にある環境で育ってきました。そのため、情報を即座に得られることや、無駄に待たされないことに対する感覚が極めて鋭く、限られた時間をいかに有効に使うかを重視する、いわゆる「タイパ重視」の価値観が根付いています。
そうしたなか、Z世代の「急な退職」に悩む声が多く聞かれます。何が起きているのかを理解するためには、彼ら・彼女らの背景にある環境の理解が必要です。そもそも、Z世代は終身雇用を前提に置いていません。転職が当たり前の選択肢となるなかで、彼ら・彼女らは自分の限られた時間を踏まえ、「この会社で働くことが時間の投資先として適切かどうか」を常に判断しています。その結果、以下の2つの理由から離職に至るケースが少なくありません。
(1) 「時間の投資先」として魅力が感じられない
1つ目の理由は、「時間の投資先」として魅力を感じられなくなった場合です。
社員は、企業に「キャリア資産」を提供し、対価として金銭報酬を得ています。キャリア資産とは、労働時間や提供できるスキル、活用できる人脈などを指します。若手社員はスキルが未熟で、人脈も少ないため、提供できる最大のキャリア資産は「時間」になります。しかし、いくら時間を提供しても、仕事に意義や成長実感を見いだせない状況が続くと、「この会社に居続けてもリターンがないのでは」と感じ、「時間の投資先」としてよりふさわしい企業を検討し始めるのです。
「石の上にも3年」というような前提は当然なく、比較的ドライに会社を選ぶと捉えるほうが理解しやすいでしょう。
(2) 「個人」としての判断を優先する
2つ目の理由は、「個人」としての判断を優先する場合です。
アメリカの経営学者であるチェスター・バーナードは、組織に所属する人間には「個人人格」と「組織人格」の2つがあると唱えています。個人人格とは、自由な意思や動機に基づき、何にどのくらいの時間や労力を割くかを自分で決めている人格です。一方、組織人格とは、組織の指示により、ある役割を担うことを求められながら行動している人格です。
もともと個人人格と組織人格は同時に存在し、どちらか一方ではなく「どちらも」大切にできるよう、バランスを取ることが重要ですが、Z世代は「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が代表するように、「分けて捉える」傾向が強いのです。
こうしたなかで、組織人格としては「頑張ります」と答えていても、個人人格側で不満がたまっていると、あるとき突然、個人人格が顔を出して「退職します」という発言に変わります。上司世代から見ると、こうした退職は「急に」「耐えられずに」起きたように映るかもしれません。しかし実際には、Z世代の就労観や、彼ら・彼女らが時間の投資先を吟味していること、さらに個人人格と組織人格のバランスに悩みやすいことを十分に理解しないまま接してしまった結果として生じているケースが多いのです。
2.若手社員が陥りやすい3つの症例
入社直後においては、特に個人人格と組織人格のバランスに悩みがちです。それまで個人人格を軸に意思決定してきたにもかかわらず、突然、組織人格としての役割を求められ、どう対峙すればよいか悩んだ結果、個人を守るために離職を決断することがあります。そのため、上司が離職につながりやすいポイントを理解しながら、部下と向き合うことが欠かせません。
では、入社したばかりの若手社員は、どのような症例(状態)になると離職を決断するのでしょうか。
(1) 意味不足
1つ目の症例は、仕事に意味を感じられず、やる気を喪失している状態です。
就職活動では事業や仕事に魅力を感じ、「入社後にやりたいこと」を語っていたにもかかわらず、実際に働き始めると想像していたほど仕事が面白くない、といった状態が続くと、「やりたいことと違う」という思いが強まり、やがて職場から逃げたいと感じるようになります。上司からすれば、「あと1年くらい踏ん張っていれば仕事が面白くなってくるぞ」と言いたいところですが、「タイパ重視」のZ世代は、短い時間でも成果や満足を得ることを求める傾向にあります。
(2) 評価不足
2つ目の症例は、自分への評価に対する納得感が得られず、意欲を失っている状態です。
就職活動で内定をもらうと、学生によっては、内定先企業の先輩社員からあの手この手で決断を迫られることがあります。そして「君なら絶対に活躍できる」などと声を掛けられ、自信満々で入社したものの、思ったほど評価されない現実に直面します。特に周囲が褒められている場面を見ると、自分は相対的に認められていないと感じやすくなります。
(3) 力量不足
3つ目の症例は、仕事の難しさに対して力量が追いつかず、不安が強まっている状態です。
学生時代の成功体験を持つ若手社員ほど、仕事でつまずいた際のギャップは大きく、失敗を指摘されるたびに自信を失い、「自分には無理だ」と感じてしまいます。
3.上司が心がけておきたいポイント
若手社員は、慣れない環境のなかでもがき苦しんでいます。この時期を乗り越えるためには、組織人格としての役割を全うしながら、小さな成功体験を積み重ねるプロセスが欠かせません。「できた→褒められた→面白い」という体験を繰り返すことで、上記の3つの症例から解放されていくのです。
この成功体験を若手社員が得るために、上司が心がけておきたいポイントを3つ紹介します。
(1) 仕事をスモールステップにする
まずは、「できた」という実感を若手社員に持ってもらうことが大切です。
無理に仕事のハードルを上げず、「小さな仕事を任せて、やりきったら褒める」を繰り返します。そのためには、仕事を細分化するタスクマネジメントと、即時にフィードバックする仕組みづくりが必要です。
(2) 仕事の評価ポイントを多様化させる
次に、できたことに対して「褒められた」と思ってもらうようにします。
目に見える成果を上げた人を褒めるのは簡単ですが、若手社員は裏方業務が多く、スポットライトが当たりにくいものです。だからこそ、上司には「縁の下」に目を向け、目立ちにくい行動にスポットライトを当てる意識が求められます。業務のスピードアップやミスの減少など、さまざまな評価ポイントを用意して若手社員を褒めるようにしましょう。
(3) 仕事に意義付けをする
仕事ができて褒められた後は、「仕事が『面白い』」と思ってもらうことが重要です。
そのためには、若手社員が仕事に意義を見いだせるように導いていく必要があります。上司としては、「この仕事は地味に見えるが、会社を大きなリスクから守っている」などと伝え、仕事に意義付けをするようにしましょう。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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