Netpress 第2501号 売掛金を確実に回収! 「未入金発生時」の初動対応と交渉術
1.売掛金の未回収は中小企業の資金繰りを直撃し、連鎖倒産にもつながる重大リスクとなります。
2.入金遅延が判明した際の初動対応を中心に、具体的な交渉方法や法的手段について解説します。
1.入金遅延が判明した際の初動対応
入金遅延の発生から時間が経てば経つほど回収率は下がるため、初動がその後の回収を大きく左右します。
(1) 入金遅延判明後の即時対応
① 事実の確認
経理担当者は、指定口座への入金の有無、金額、振込名義を再度確認します。請求書の誤送付などのミスが自社側にないかも確認しましょう。
② 初回の電話連絡
当日中に、先方の担当者に対し「ご入金が確認できないのですが、何かお間違いでしょうか?」と、まずは確認ベースで丁寧かつ迅速に電話連絡をします。
③ 遅延理由のヒアリング
資金繰りの問題か、請求書処理のミスか、はたまた取引内容への不満かなど、具体的な遅延理由を聞き出します。
④ 入金期日の確認と合意
電話口で「○月○日までに必ずご入金をお願いします」と、具体的な期日を伝え、相手の合意を得ます。次回期日への延期をせず、できれば翌日、遅くとも10日以内の支払期日にすべきです。
⑤ 確認内容の送付
電話での合意内容をメールなどで送付します。件名には「【重要】お支払日に関するご確認」などと明記します。
(2) 初動対応の絶対原則
① スピード
対応スピードは回収率に大きく影響します。未入金が判明したら即日連絡を入れ、同時に上司にも報告しましょう。
② 記録
電話、メール、面談など、すべてのやり取りを日時、担当者名、内容とともに詳細に記録・保存します。これは後々、法的手段を取る際の重要な証拠となります。
③ 毅然とした対応
支払いの義務については毅然とした態度で臨み、曖昧な返答を許容してはなりません。ただし、取引継続の可能性も考慮し、丁寧な言葉遣いを心がけるようにしましょう。
④ 相殺の実施
その取引先に対する未払債務があれば、未入金の売掛金と相殺します。相殺は、債権者の一方的な意思表示で行うことが可能です。債務で相殺する場合は、取引先に事前に通知すれば問題ありません。
⑤ 取引の制限・停止
未入金が解消されるまで、新たな納品やサービスの提供の制限・停止を検討し、未入金額を増やさないようにします。
2.支払意思の有無による交渉戦略
相手側に支払う意思があるかどうかによって、交渉の戦略は大きく変わります。
(1) 支払意思がある場合
まだ回収が容易な状況です。支払期日を明確にし、フォローアップを徹底します。ソフトな対応をして支払意思を失わせないようにすることも大事です。
① 具体的な支払日時の約束
「近いうちに」など曖昧ではなく、「○月○日午前中」と具体的に指定させます。10日以内の入金としましょう。
② 全額支払いが困難な場合
期日に全額の支払いが困難な場合、分割払いの提案も有効です。この段階では分割回数を極力少なくします。
(2) 支払意思がない場合
資金繰りが深刻で支払意思が乏しい場合は、債権保全のための確実な行動と具体的な合意形成を目指します。
① 取引の停止
すべての取引を停止します。取引継続の場合は、少なくとも先払いを取引継続の条件にします。
② 取引先訪問、商品の回収
速やかに取引先を訪問し、支払いを要求します。支払いを了承した場合は、その場で振込みをしてもらいましょう。あわせて、少額であっても現金回収も行うべきです。
支払いが見込めない場合は、必ず取引先の承諾を得たうえで、納品した自社商品の回収も行います。
さらに、差押えができそうな財産(不動産、車両、機械設備)を確認し、型式等の具体的な情報を記録しましょう。
③ 内容証明郵便による催告
弁護士名義で内容証明郵便を送付します。これにより、その時より6か月間時効期間を延ばせるとともに、相手に「法的手段も辞さない」という強い警告を行います。ただし、内容証明郵便に支払いを強制する法的効力はありません。
④ 債務確認書の提出依頼
「○年○月○日現在、○円の未払代金があることを確認する」と記載した債務確認書の提出を要求し、責任者の記名・捺印ももらいます。これは裁判で有力な証拠と認められます。
⑤ 役員クラスとの直接交渉
取引先担当者ではらちが明かない場合は、相手先の社長や役員といった決定権を持つ人物との面談を要求します。
そのうえで、支払いが困難であれば、代替案として分割払いや担保の提供・保証人追加を要求します。
また、「金銭準消費貸借契約書」の締結による売掛金から貸付金への変更も有効です。貸付金へ変更することにより、相手に心理的な効果を与えるとともに、利息の請求もできるようになります。
⑥ 分割払いにする場合の対策
分割払いでは、必ず「債務弁済契約書」または「和解契約書」を作成しましょう。そこには「一度でも支払いを怠った場合、残りの全額を一括で支払わなければならない」とする期限の利益喪失条項を入れ、取引先を牽制します。
さらに、債務弁済契約書を公正証書にして、「債務者が支払いを怠った場合、直ちに強制執行に服する」との文言を加えることで、支払いを怠った場合に改めて訴訟を経ることなく、即座に強制執行(差押え)の申立が可能になります。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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