2008年ヒット商品番付 生活防衛意識の中、『選択と集中』が進む

2008年は、景気減速、原油高、金融信用不安に加え食の安全の脅威が襲い、消費者に生活防衛意識が芽生えた。そこで浮ついた消費マインドを引き締め、生活の原点に回帰し、「商品」「ブランド」「買う場所」を根本的に見直して選択し、「収入」と「時間」を集中した。そこで、改めて見直されたのは「家庭」であり、消費は「家チカ(家の近く)」や「家ナカ(家の中)」を中心に進んだ。

横綱不在時代の幕開けか?

10年前の1998年のヒット商品番付は、『消費マインドが冷え込み、5年ぶりの「横綱不在」の年となった』という解説で始まった。2008年も、社会にインパクトを与える実力と人気を併せ持つヒット商品は見当たらず、横綱不在の年となった。10年前は、その後3年間横綱不在が続いたが、今回も大型ヒット商品が生まれにくい環境は続くと思われる。だが、それは消費の冷え込みを示すのでなく、選択の対象が変わったとみるべきであり、消費者の心をとらえるヒット商品は必ず生まれてくるだろう。

生活の原点を見直す

2008年4月、埼玉県に開業した「三井アウトレットパーク入間」には首都圏の消費者が殺到し、周辺道路が大渋滞して話題に。また秋には仙台で相次いで2箇所に開業するなど、ブランド品が低価格で買え、レジャー施設として1日楽しめるアウトレットモールブームが起きた。また、使わない機能を削ぎ落とした小型・軽量のミニノートPC5万円パソコンが、買い替えや2台目需要を喚起。参入メーカーは20社に達したのに加え、2008年10月の販売数量では、ノートパソコン全体の25%を占めるなど、急激な勢いでマーケットシェアを伸ばしている。


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お金を使わずに楽しんだ消費者

生活防衛意識を持った消費者は、足元を見渡して「家チカ」や「家ナカ」の魅力に気づいた。レジャーを「家チカ」の行楽地や「家ナカ」のバーベキューやホームパーティですませれば、移動にかかる費用をリッチな食事に回すことができる。「家チカ」「家ナカ」を家族で楽しむ時に必要なものは、世代を問わず話題にできる共通のコンテンツとなる。


2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』は、1月6日の放送開始以来、常に視聴率20%以上を記録した。主演の宮崎あおいの人気と、わかりやすいストーリー展開で、視聴者は世代を超えて広がった。『篤姫』の故郷・鹿児島への経済効果は、200億円以上とも言われる。


食品偽造事件が相次ぐ中、本物・安心に目を向けた消費者が注目したのは、タレントの田中義剛氏が牧場長を務める北海道十勝の「花畑牧場」。厳選された素材を使って手作りされる「生キャラメル」は、1箱12粒入りで850円と高めにもかかわらず、千歳空港では行列をつくり入荷しだい即刻売れ切れ状況が続いた。さらに08年6月に楽天市場に出店すると、発売後2分間で完売するなど人気が過熱。


消費者は、「家ナカ」にある薄型テレビ、DVDレコーダー、Wiiなどのゲーム機器など、生活を楽しむインフラが整っていることに目を向けた。そこに登場した「Wii Fit」は、専用ボードに内蔵したセンサーにより、家族全員でゲームを楽しみながら「家ナカ」でフィットネスや運動ができるゲーム機器。2007年12月1日の発売以来、2008年9月末までに260万本を売るヒット商品となった。


「東京マラソン」の登場で、都市部ではマラソンブームが起きていたのに加え、2008年4月から始まった企業のメタボ健診義務化の影響も重なり走る人が急増。マラソンシューズやウェア、自転車の販売数が伸びている。ガソリンの価格高騰により、通勤でも自動車から乗り換える人も続出。都市部では「ランニング&自転車」のライフスタイルが台頭した。

小粒ながら、家チカ・家ナカのニーズを満たす

通信機能を使って複数のプレイヤーが協力して共通のモンスターを倒すPSPゲームソフト「モンスターハンターポータブル2nd G」は、2008年3月の発売後、約半年間で240万本を販売。 家族で共通の話題にできる「邦画」にも、注目が集まった。「ザ・マジックアワー」(興行収入50億円)、劇場版「相棒」(興行収入45億円)に引き続き、『崖の上のポニョ』の興行収入は、トータルで150億円となる見通し。同様に、スポーツ観戦も世代を超えた話題を提供する。2008年に開催された「北京オリンピック」では、スポーツ選手のアイドル化が進み、消費者はアスリートの活躍に「家ナカ」で一喜一憂した。2008年2月に光ディスクの規格争いが終わり、絶好の販売チャンスとみた量販店などではブルーレイレコーダーの専門コーナーを設け、「ブルーレイ元年」として拡販を続けた。


もち米を使用した特殊製法により、温かい普通のご飯(うるち米)に混ぜるだけで赤飯のような食感になる「おむすび山 赤飯風味」は、発売2ヶ月間で300万袋を突破。これは赤飯風おむすび1200万個分に相当する。さいたま市大宮区に2007年10月にオープンした「鉄道博物館」は、入館者数は当初の見込みを大きく上回り1年間で188万4400人となった。


2008年9月に一眼レフカメラで世界初の動画撮影機能を搭載したニコンの中級機「D90」は、カメラ再入門者や新規ユーザーの支持を得てデジタルカメラ市場が伸び悩む中でも好調な売れ行きを見せている。 百貨店の婦人服売り場の売り上げが1年以上前年を下回る中で、スウェーデンのアパレルブランド「H&M」が日本初上陸し、銀座店がオープン。長い行列が話題に。同11月に原宿へ出店、こちらも長い行列ができた。


「家ナカ」の定番として、カレー鍋が人気を集めている。食品加工大手が鍋の素市場に相次いで参入し、鍋ブームを作り出した。鍋の素のバリエーション拡大が、「家ナカ」重視の消費者ニーズをとらえてヒットしたといえる。

着用して歩くことで歩幅が広がり、エクササイズにつながる高機能下着「クロスウォーカー」は年間販売目標20万枚を発売2ヶ月で突破、約7ヶ月で50万枚を販売した。


フジテレビのクイズ番組から飛び出した「おバカキャラ」のタレントたちは、世間があきれる位の珍回答を出すおバカっぷりだが、愛されるキャラクターで「家ナカ」を和ませて人気に。

血液型別に自分の性格を他人にわかりやすく説明するテーマで出版された「B型自分の説明書」(文芸社)。2008年8月の「O型自分の説明書」で4タイプが揃い、「血液型・自分の説明書」シリーズ累計として500万部のベストセラーとなった。他人とのコミュニケーションのため、互いの性格への理解を進められる点が人気となっている。

横綱不在を阻止するヒット商品は何か

今年の傾向によると、消費者が「選択と集中」を進めるときの基準は、「価格」「安全」「エコ」「健康」「交流(つながり)」であった。これは来年も続くとみられ、ヒット商品もこれらのテーマから生まれることだろう。特にこれらのテーマで画期的なイノベーションが起これば大ヒット商品になる可能性がある。


2006年10月から始まった番号ポータビリティ(MNP)制度により、各携帯電話会社が2年間の長期連続契約を導入したため、買い替え需要にストップがかかっていた。その期限が終わる2009年は、携帯電話の新機種購入ラッシュとなるであろう。さらに、パソコン並みの性能を持つ「Google携帯」が発売される等、高性能な多機能携帯電話(スマートフォン)の登場も見込まれ、「iPhone」VS「Google携帯」VS「新スマートフォン」の競争に注目が集まる。


景気後退のときは価格の割に娯楽性が高いゲームが流行する。シリーズ累計で4600万本以上のセールスを記録しているRPG「ドラゴンクエスト」シリーズ最新作、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』の発売が2009年3月と決定。どこまで販売数を伸ばすかに注目が集まる。


輸出企業が円高で苦しむなか、割安感がでてきた海外旅行でも、燃料チャージがかからない近距離の海外ツアーが人気となるか。国別では、特に韓国に注目。韓国ブランドの安価で高品質の化粧品は現在、人気を集めており、韓流ブーム後から日本でも徐々に市場を開拓してきた韓国の人気スターも脚光を浴びるかもしれない。また、不況の中で、団塊世代の購買力に期待がかかる国内旅行では、「料理」「楽器」「落語」などをマスターするプチ研修型ツアーや、ここ数年、急増している「ご当地検定」を受けて合格するツアーなど、単なる観光旅行を超えた「付加価値ツアー」に期待。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。


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