2001年ヒット商品番付 すべてが変わろうとする「はじまりの年」

21世紀幕開けの年 2001年は、アメリカで起こった同時多発テロが世界的な景気の減速に追い討ちをかけ、個人消費も盛り上がりを欠いた混迷の年になってしまった。ただ日本国内では、小泉内閣が構造改革を打ち出し、変えなければならないと思いつつもそのまま先送りされてきたさまざまな課題が、ようやく変革に向けて動き出した1年でもあった。景気の減速がその動きに水を差しかねない懸念もあり、改革はいよいよ正念場にさしかかった感が強いが、今年のヒット商品番付上位には「変革」や「挑戦」を感じさせる商品がランクされた。

変革と挑戦が共感を呼ぶ

暗さが目立った社会情勢のなかでひとり気を吐いて東の横綱についたのは、日本の映画史上最大のヒット作品となった『千と千尋の神隠し』である。甘えん坊でひ弱な十歳の少女千尋が、迷い込んだ不思議な町でさまざまな苦難に遭いながら、本来の生きる力を取り戻してめざましい自己変革を遂げる。その姿を見て、多くの人が「自分もこんなふうに変われるかもしれない」と元気づけられた。当番付では、97年の「たまごっち」以来、久々の横綱登場である。


米国メジャーリーグに挑戦したイチローは、走・攻・守にわたって大活躍し、マリナーズの地区優勝にも大きく貢献した。その模様は毎日のように日本に伝えられ、日本中の人が「がんばれば夢がかなう」と励まされた。


光ファイバーの敷設を最優先に考えていた日本の情報通信インフラにも大きな変化が起こった。音声通話よりも高い周波数を利用することで既存の電話線でもブロードバンドのインターネットを実現するADSLが猛烈な勢いで普及した。ユーザーをたくさん獲得したいプロバイダーの値下げ合戦も過熱し、安くて速いインターネットが広まった。 ただ、これらに続く大型のヒット商品が少なく、西の横綱は不在、西の大関と関脇は休場してしまった。


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番付中位にも「変革組」が

乗用車の市場では、「カローラが変わる時代」というCMが印象的な「カローラ」が売り上げ首位をひた走り、低燃費と室内の広さが好評の「フィット」がこれを猛追した。 玩具業界では、社内の変革が順調に進んだタカラが、家庭用カラオケ「e-kara」や「なんちゃってビアサーバー Let’s Beer」など次々とヒット商品を出した。特に現代版ベイゴマとも言える「ベイブレード」は、品薄でなかなか手に入らず、子供にせがまれた親たちが右往左往した。 新しいアトラクションを次々と生み出していくのも、絶え間ない変革だと言える。東京ディズニーランドの隣にオープンした東京ディズニーシー(TDS)は入場者数を順調に伸ばし、一方で大阪にオープンしたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も活況をみせ、大阪経済を盛り上げた。


景気の低迷で逆風が吹いていたマンション業界にも変化がみられた。利便性の高い都心への回帰現象から、東京や大阪などの都心高層マンションが相次いで即日完売した。 多くの家庭が鍵を取り替えたのも、世相を反映した出来事。特殊な工具で鍵をこじあけるピッキング犯が多発し、ピッキングされにくい鍵の需要が急拡大した。

ひと味違った特徴をアピール

昨年前頭3枚目だった緑茶飲料「生茶」は引き続き好調をキープしたが、これを追って、緑茶やウーロン茶などをベースにしたさまざまな茶飲料が発売され市場がさらに拡大した。また、食パンでは、弾力に富んだ「もっちり」とした食感の「超熟」が人気を博した。いずれも売れ筋となったのは、今までとひと味違った特徴をアピールした商品だった。


芸能界では、新メンバーも加わってパワーアップしたモーニング娘。が多くのレギュラー番組やCMで大活躍し、テレビドラマでは沖縄を舞台にした『ちゅらさん』が高い視聴率をあげた。ドラマに登場した「ゴーヤーマン」という人形が流行するなどの波及効果もみられた。


出版分野では、『金持ち父さん 貧乏父さん』『チーズはどこへ消えた?』といった変わったタイトルの自己啓発本や、野球少年と生きる気力を失った中年男性との出会いを描いた『十二番目の天使』が多くの人に読まれた。


女性のファッションでは、若者に大きな影響力を持つ浜崎あゆみが好んで履いていたということもあって、股上が浅いローライズ・ジーンズが大流行した。また、若い女性のストッキング離れが進むなかで、片足ずつ小箱に入って売られているという目新しさも手伝って「ステイフィット」が快進撃を続けた。化粧品では、伸縮性があるジェルがしわや毛穴などの凹凸を隠す部分補整料の「レヴュー マジカルチェンジ」が売り上げを伸ばした。

はじまりの年

均質な製品を大量に生産し販売することが時代の要請であった20世紀が終わり、新しい21世紀が始まった。人々の価値観が多様化するなかで、地球環境の保護や持続可能性の配慮が重要な課題としてクローズアップされるようになった。大量生産・大量販売の産業システムに代えて、我々はどんな社会の仕組みを作っていけばいいのか。混沌としてまだ先が見えないけれど、それでも、すべてのものが静かに変わり始めた「はじまりの年」。2001年はそんな年だった。


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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。

 

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