2000年ヒット商品番付 20世紀型ヒット商品の次に来るものは?

20世紀最後の年2000年は、景気が緩やかな回復軌道をたどったものの、個人消費は総じて低調に終わり、「ヒット商品番付」も去年に続き横綱不在となった。この背景には、なかなか改善に向かわない雇用・所得環境や高齢化社会を控えた先行きの不安感などがあるが、もっと深いところで、人々が20世紀型の消費行動やヒット商品に疑問を感じ始めたことが強く影響している。そして20世紀の殻をもう一歩のところで破れなかったのが、今年のヒット商品の姿である。

健闘した東西の大関

横綱不在の番付のなかで大健闘したのが、カジュアルブランド「ユニクロ」である。フリース、Tシャツ、デニムジャケットと次々に企画商品を発売し、高いレベルでの質と価格のバランスが世代を超えて支持された。商品アイテムを徹底的に絞り込み、中国の契約工場で大量に作って一気に売り切るというビジネスモデルは、既存の小売業の殻を打ち破ったと言ってもいいだろう。


快走する「ユニクロ」に追いすがったのが、昨年に続いて大関となった「iモード」である。「つながらない」というトラブルが何度か発生したものの、今年8月には契約者数が1000万人を突破。その後も順調に数を増やして、現在は1400万人を超えている。「親指でネット」は街角のごく普通の光景となった。


平成元年(1989年)からの番付を公開中!

その他の年のヒット商品番付はこちら

力の衰え?

人気ゲーム機の後継機として華々しくデビューした「プレイステーション2」は、高度な画像表示能力に加えて、DVD再生などゲーム機を超える機能を備え、ちょうど立ち上がり期にあったDVD市場にも大きなインパクトを与えた。ただ、あまりに高性能すぎて、対応するソフトの開発に膨大な費用が掛かるようになってしまった面もあるという。


毎回新作の発売日には長蛇の列ができる人気ゲームソフト「ドラゴンクエスト」の最新作「ドラゴンクエスト7」は、やはり貫禄を見せ過去の記録を塗り替える380万本以上の売り上げをあげた。ただ、発売日当日の行列の長さは従来ほどではなく、かつてのようなフィーバーぶりはみられなかった。

広範な影響力

沖縄サミット前後から、テレビや新聞などで一日に何度も目にするようになったキーワードがIT革命である。この言葉をタイトルに冠したさまざまな本が書店の店頭に並び、情報化に遅れを取ってはいけないと焦る人々が急いで買い求めた。現実の世界でも、「革命」と呼べるほどの大きな変化が待たれるところである。


若者に大きな影響力を持つ浜崎あゆみは、CDの売り上げだけでなく、口紅や携帯電話などさまざまな商品の売り上げに貢献し、「あゆ効果」を発揮した。


シドニーオリンピック中継では、高橋尚子や田村亮子などの活躍ぶりが、日本人全員の目をテレビの画面に釘付けにした。また、一般から公募された男女が台本に沿ってドラマを演じる『未来日記』は、テーマ曲に使われたサザンオールスターズの『TSUNAMI』や福山雅治の『桜坂』も爆発的なヒットとなり、さらにその波及効果はグッズやイベントなどにも広がった。

ひと味違う何か

缶入りやペットボトル入りの飲料としてすっかり定着した緑茶飲料のなかでは、生茶葉の成分を抽出した「生茶」が大健闘をみせた。また、エスプレッソを主体にしたシアトル系コーヒーショップ「スターバックスコーヒー」も、きれいで落ち着いた雰囲気(しかも禁煙)の店舗が好評で、店舗網を急拡大した。これらは従来とはひと味違う何かが、ヒットの要因となった。


同様に「プロビオヨーグルトLG21」も、胃潰瘍などの原因となるヘリコバクターピロリ菌を抑制する乳酸菌LG21を配合している点がポイント。また、天津甘栗の皮をむいて食べやすくした「甘栗むいちゃいました」も、従来ありそうでなかったものである。子供から大人まで楽しめる『ハリー・ポッター』シリーズの2作も、ベストセラーとなった。


デジタルカメラでは、「IXY DIGITAL」が好調な売り上げをみせた。銀塩カメラで人気の高い「IXY」のデザインを踏襲し、あえて画素数は抑えて携帯性を重視した点が受け入れられた。携帯情報機器では、小型軽量で軽快な動作の「パーム」がユーザーの心をつかんだ。


長く不振が続く演歌界では、さくらんぼ農場を経営する異色演歌歌手大泉逸郎の『孫』が百八十万枚を超える大ヒットとなった。パラパラは、大勢がいっしょに踊る腕の動きを中心とした踊り。過去二回ほどブームがあった後はすたれていたが、SMAPの木村拓哉がテレビ番組のなかで踊ったのをきっかけにブームが再燃した。昨年大流行した厚底ブーツの勢いが沈静化しつつあるなか、今年はカジュアルなミュール(フランス語でつっかけサンダル)が目立った。


平成元年(1989年)からの番付を公開中!

その他の年のヒット商品番付はこちら


(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。

 

プロフィール

InfoLounge編集部

SMBCビジネスクラブ「InfoLounge(インフォラウンジ)」は、企業経営や人材育成、法務、労務などの領域で、実務に今すぐ役立つ情報をお届けするコミュニティサイトです。著名人へのインタビュー記事や注目企業への取材レポートのほか、実務支援コンテンツ、動画、セミナー・お役立ち資料など、盛りだくさんの内容で様々な情報をお届けします。

受付中のセミナー・資料ダウンロード・アンケート