1997年ヒット商品番付 「こどもっち型ヒット商品」消費を励ます
「子」…子供向け(子供がえり)のヒット商品
今年は、経済に対する先行き不透明感が広がって大人の財布の紐が相対的に堅くなったこともあったが、それ以上に、子供指向の商品が子供からも大人からも支持された一年間であった。
そのなかでも「たまごっち」は、関連商品を合わせると249億円の売り上げ(バンダイ中間決算発表)を記録して、堂々と東の横綱に輝いた。一方、西の横綱『もののけ姫』は、アニメという子供向けの表現方法で自然と人間のかかわりを問いかけて、配給収入100億円を突破。さらにディズニーとの提携によって、全世界に日本アニメの実力を広めることになった。
さらに、「ロスタロット」などの顔を小さく見せる小顔化粧品が売り上げを伸ばし、テレビのCMでは野村佑香・松本恵など10代前半の少女タレント=チャイドルが大活躍した。また、キティちゃんグッズは、子供だけでなくOLなどからもひっぱりだことなった。こういった現象は、「1億総アダルト・チルドレン化」と言い表すことができるのかもしれない。
平成元年(1989年)からの番付を公開中!
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「携」…小さくて、いつでも手軽に
「こどもっち型商品」の第二の特徴は、小さくて手軽に持ち歩けることである。デスクトップ型パソコンの売り上げの伸びが頭打ちになってきたにもかかわらず、「ザウルス」やサブノート型パソコンなどの携帯情報機器は相変わらず好調である。デジタルで画像を取り込めるデジタルカメラ&ビデオカメラも好調で、デジタルビデオカメラは記録テープの生産が間に合わずに極端な品薄になった。
腕時計という成熟商品においても、機能性とデザイン性をアピールした「Gショック」が売り上げを伸ばした。また、手軽に買えるという側面では、ゲームソフトをコンビニエンスストアでも買えるようにしたデジキューブが、従来の玩具業界の流通経路に大きなインパクトを与えた。
「育」…育てる過程を楽しめる
「こどもっち型商品」の第三の特徴は、過程を楽しめることである。横綱の「たまごっち」は電子的なペットを卵から手間暇かけて育てる楽しみが大ヒットの要因であり、小学生を中心に人気の高い「ポケットモンスター」もポケモンを1匹1匹とGETしていく過程が楽しみのもとである。
アイスクリームの分野では「ねるじぇら」が、食べる前に何十回もスプーンで練るという手間がかえって受け、チャイドルを起用したCMとあいまってヒットした。また、英国の庭園の雰囲気を自宅の庭やベランダに作り出すガーデニングも、草花を育てる過程が楽しみの源泉である。
「憩」…ささやかな憩い・安心・便利で安い
「こどもっち型商品」の第四の特徴は、ささやかな憩いが得られる・安心・便利で安いといった点である。小説・映画・ドラマともに話題となった渡辺淳一原作の『失楽園』は、結末こそ悲劇的であるが、元気のない時代における大人の童話だという見方もできる。また、妹尾河童の『少年H』は、多くの人になつかしい時代を思い出させた。
虫歯になりにくい新しい甘味料を使ったキシリトール入りガムは、安心感を前面に打ち出した商品である。また、ミネラルウォーターとスポーツドリンクの中間的な清涼飲料水「サプリ」も、ビタミンや食物繊維などを豊富に含んだ健康志向が強い飲料である。安心のキーワードでは、オーガニックフーズや介護関連商品などが今後の有望株と考えられる。
便利さや安さでは、チルドルームや野菜室を切り替えて使うことができる冷蔵庫などの高付加価値白物家電が成熟商品にもかかわらずよく売れ、航空会社が競って導入したマイレージサービスや特定の用途の通話料金を割引するサービスなど、各種の割引サービスも評判になった。
芸能・スポーツ関係では、電撃的な結婚発表をした安室奈美恵やどの曲もヒットチャート上位を占めた華原朋美などを擁する小室ファミリーの勢いは衰えるところを知らず、衝撃的な事故死をとげたダイアナ元妃を追悼するエルトン・ジョンの『キャンドル・イン・ザ・ウインド』は世界中でヒットした。
平成元年(1989年)からの番付を公開中!
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(注)本番付は、大相撲の番付の形式を採用しているため「東」と「西」に分かれていますが、選ばれた商品と地理的な東西の関係は一切ありません。対象は、個別の商品に留まらず、一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象等を含みます。また、番付の順位は、出荷台数、売上高等の実績だけでなく、マーケットに与えた意義やインパクト、今後の成長性等を総合的に判断し、決定したものです。
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