株式会社矢野経済研究所 提供 注目市場レポート【食品】23年12月

【業界アウトライン】
農林水産省「令和4年漁業・養殖業生産統計」によると、2022年の国内の漁業・養殖業生産量は、1956年に現在の調査を開始して以来、過去最低を更新する385万9,000tと、前年から31万3,000t(7.5%)減少した。

アクアポニックス市場


※出典  矢野経済研究所


市場環境

・2023年度のアクアポニックス市場規模は、4億57百万円(対前年度比101.5%)と見込まれる。

・アクアポニックスは、水産養殖と植物栽培を同時に行う仕組みで、養殖で使用した水を循環させて、魚の排泄物等を植物の栄養としている。

・アクアポニックスでは、養殖で使用した水を植物栽培で使用するため、淡水魚の養殖が一般的で、養殖よりも植物の栽培面積が広くなる傾向にある。

業界動向/事業者動向

・アクアポニックスは、大規模型と中・小規模型の2つに分類され、約1,000㎡以上を大規模型と呼ぶ例が多い。日本では2010年代より導入が開始され、現在、50施設前後が存在しており、100㎡未満の小規模施設が大半を占めているが、2022年頃より大規模施設の建設・運営も開始されつつある。
・同市場は、国内での陸上養殖施設の建設数増加や、東京都や神奈川県にある水族館でのアクアポニックスの展示開始のほか、2025年度の大阪万博でも展示予定であることから、アクアポニックスの一般市民の認知が高まり、大規模施設、小規模施設ともに今後も施設数が増加するとみられる。

陸上養殖プラント市場


※出典  矢野経済研究所

市場環境

・2023年度の陸上養殖プラント市場規模は、129億12百万円(対前年度比155.2%)と見込まれる。
・陸上養殖には、海水などを継続的に引込みながら排水させる掛け流し方式、飼育水の一部を循環利用及び排水させる半閉鎖循環式、飼育水を濾過システムで浄化しながら循環利用する閉鎖循環式がある。
・同市場では、導入コストが一番少ない掛け流し方式の導入数が多いものの、養殖後の汚濁水を海に排出することになるため、環境面で課題がある。

業界動向/事業者動向

・同市場では、ここ数年、海洋汚染をはじめとする環境負荷低減や、世界的な魚介類需要の高まり、漁獲規制強化への解決策としてSDGsの観点から、閉鎖循環式陸上養殖などを採用し、社会課題の解決に寄与する目的で陸上養殖事業に参入する事業者が急激に増加している。
・掛け流し方式は、海水利用の場合は海に、淡水利用の場合も川に近い所と立地場所が限定されるため、今後も事業者数は横ばい推移することが見込まれる。一方、半閉鎖・閉鎖循環式では、大規模な陸上養殖施設の建設が相次いでおり、生産する水産品の多品種化が進むことで、市場拡大が見込まれる。

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