株式会社矢野経済研究所 提供 注目市場レポート【マテリアル】23年9月

【業界アウトライン】
化学産業は製造時にCO2を多量に排出する産業分野である。経済産業省は、廃プラ・CO2等への原料転換及び分解炉の燃料転換により、多様な化学品を生産する体制を維持しつつ、カーボンニュートラルの実現を目指すとしている。

ポリエチレン(PE)市場


※出典  矢野経済研究所


市場環境

・2023年のポリエチレン市場規模は、233万3,000t(対前年比102.7%)と見込まれる。

・同市場では、HDPE、LDPE、EVA、エチレン系コポリマー、L-LDPE、V-LDPE、プラストマーを対象としている。

・同市場は、コロナ禍の収束で人流回復による消費の持ち直しや、インバウンドによる需要増加が期待されており、前年を上回る出荷量が見込まれる。

業界動向/事業者動向

・国内PE市場は、人口減少に伴う自然減、安価な海外品の流入、薄肉化・脱プラスチックなど、国内生産を下押しする要因が並ぶことで微減傾向が続く見通しとなる。
・PEメーカー各社は高機能・高性能化の追求による新規用途開拓や異素材代替などに注力するほか、近年ではカーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けて、バイオマス原料やリサイクル原料を使用したPE製品の開発や、リサイクル適性に優れるモノマテリアル化対応などに取り組む動きもみられる。

セルロースナノファイバー(Cellulose Nano Fiber:CNF)市場


※出典  矢野経済研究所

市場環境

・2023年のセルロースナノファイバー市場規模は、59億6千万円(対前年比103.7%)と見込まれる。
・CNFの開発当初は、モビリティや家電、建材など幅広い分野で、金属やガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などからの代替が期待されたが、現状では化粧品や食品、インク、塗料等向けの機能性添加剤での用途や、スポーツシューズや日用雑貨などの製品での採用実績に留まっている。

業界動向/事業者動向

・CNFと樹脂との複合材料は、自動車や家電、建材など幅広い用途で需要拡大が期待されているが、CNF複合樹脂の耐衝撃性はボリュームゾーンとなる自動車部材に求められる強度に届いておらず、CNF複合樹脂を展開する各事業者では、耐衝撃性向上を最優先とした開発が進められている。
・一方で、人が乗らないドローンやスピードの出ない次世代モビリティなどは、自動車ほどの耐衝撃性が求められず、軽量化に対するニーズは強いことから、まずはこれらの部材での採用実績を作り、自動車のエンジンルーム内ユニット部品への採用や、内外装部品への足掛かりとする動きも想定される。

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