Netpress 第2499号 人事・総務担当者の方へ 新入社員を迎え入れる際の留意点
1.新入社員の受け入れは、単なる人員補充ではなく、組織の将来を左右する重要なプロセスです。
2.法令を踏まえた適切な対応と、職場定着のための環境づくりを両立させていくことが重要なテーマとなります。
3.ここでは、入社前から入社後90日間までの流れを3つに分け、実務上留意しておきたいポイントを整理します。
1.入社前から始まる「法令遵守」と「コミュニケーション設計」
(1) 入社前アルバイト・インターン時の法的要件とリスクの把握
内定者アルバイトやインターン、事前研修などを実施する際は、「教育目的」であっても実態に応じた対応が求められます。指揮命令下で業務性が認められる場合、労働基準法上の労働者に該当する可能性があるため、賃金支払い、労働時間管理、労災保険の適用の有無を確認する必要があります。特に現場運用との乖離を防ぐため、関連部署と情報共有することが重要であり、結果として労務トラブルの予防につながります。
【実務対応例】
- 事前研修前に「内容・時間・報酬の有無」を整理し、文書化する
- 配属先には「教育目的でも業務性が認められる場合に労働者性が生じうる」点を事前に説明する
(2) 入社前情報の扱いとバイアス対策
採用過程で知り得た情報は、個人情報保護の観点のみならず、公正な人事運営のためにも慎重な取り扱いが求められます。採用選考時の評価情報や個人的事情が過度に共有されると、無意識のバイアスを生み、入社後の配属先等に影響を及ぼすおそれがあります。情報共有の範囲を管理し、先入観に左右されない運用を行いましょう。
【実務対応例】
- 「誰に・どこまで・何を伝えるか」を整理し、情報共有の基準を明確にする
- 管理職に「先入観を持たない受け入れ」の注意点を伝える
(3) 入社前のコミュニケーションを工夫しよう
入社前のコミュニケーションは、労働条件通知や事務連絡にとどまらず、信頼関係形成の第一歩となります。
社内の良い面だけではなく、職場の雰囲気や働き方を実情に近い形で伝えることが、入社後のギャップ防止につながります。また、相談窓口や連絡体制を明確に伝えることは、新入社員の安心感を高めます。
【実務対応例】
- 社内の雰囲気や業務の流れについて、現場社員のメッセージや1日のスケジュール例を紹介する
- 「困った時はここに相談」という明確な窓口案内(担当者名、メール・電話番号)を伝える
- 初出勤までの流れを時系列でまとめた「入社前ガイドブック」を共有する
2.入社直後の“誤解”を防ぐための制度説明
(1) 「ありがちな誤解」を前提に労働条件を説明する
就業規則などの説明は形式的に行われがちですが、理解のズレが後の労務トラブルにつながることがあります。固定残業手当、年次有給休暇など、“よくある問い合わせや誤解”を説明することで、新入社員の理解を深めましょう。
【実務対応例】
- 固定残業手当の計算方法を伝える
- 年次有給休暇は「いつ・誰に・どう申請するか」を具体的に示す
(2) 企業が求める情報セキュリティの基本
情報セキュリティに関するトラブルの多くは、不注意や知識不足に起因します。私物端末の使用やSNSへの投稿など、身近な行動に潜むリスクを具体的に示し、関係法令を踏まえた基本ルールを入社初期に周知することが重要です。
【実務対応例】
- 「これはOK、これはNG」といった具体例を伝える
- SNS投稿時の注意点を事例で説明する
(3) 「社内規程」は公正な職場運営を支えるガイドライン
社内規程は堅苦しいものではなく、判断の根拠を示し、一貫した運用を可能にするガイドラインです。誰かを縛るためではなく、誰もが同じルールで守られる仕組みであることを伝えることが、理解促進につながります。
【実務対応例】
- 「迷ったときに立ち返るルール」として説明する
- 懲戒規程は“罰”ではなく、予防のためと伝える
3.定着を左右する「最初の90日間」
職場に適応できるかどうかは、入社後おおよそ90日間の経験によって大きく左右されるとされています。
(1) 初期面談は「表情の小さな変化」に注目する
新入社員は、不安や違和感を言葉にしづらい傾向にあるため、面談では、発言内容だけでなく表情や声のトーンにも目を向けることが重要です。こうした関わりは、メンタルヘルス不調の予防や早期対応にもつながります。短時間でも定期的に実施することが効果的です。
【実務対応例】
- 以前より声が小さいなど、変化に注目する
- 「大丈夫です」と答える頻度が不自然に増えていないか留意する
- 「最近、仕事で戸惑った場面はあった?」など、具体的場面に寄せて聞く
(2) 育成担当者の負荷軽減と「見えない不公平感」を調整する
育成担当者は、通常業務と並行して新入社員の育成にも対応する必要があり、業務過多になりがちです。忙しいなかで指導のタイミングに差が生じ、新入社員の間に見えない不公平感が生じることもあります。人事・総務は、育成体制全体を俯瞰し、役割分担や共有の仕組みを整えることが求められます。
【実務対応例】
- 育成担当者同士で情報共有ができる場を設ける
- 指導のポイントをまとめた資料を共有する
(3) 職場の“つながり感”を意図的に設計しよう
新入社員の定着には、「居場所がある」と感じられることが重要です。人事・総務が中心となり、日常的な関わりを意識的に支えることが、働きやすい職場づくりの土台となります。
【実務対応例】
- 上司・先輩によるあいさつや声かけを促す
- 雑談やランチ同行を通じた関わりを提案する
- 人事・総務が定期的に様子を見に行き、気軽な雑談を交わす
新入社員の受け入れは、会社全体で支える大切なプロセスです。人事・総務を中心に入社前から丁寧に関わることで新入社員の安心感が育まれ、定着と信頼関係構築につながります。安心して働ける職場づくりを進めていきましょう。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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