Netpress 第2272号 要否は? 金額は? 印紙税を判断する際の7つの着眼点

Point
1.業務ではさまざまな文書が作成されますが、その際に判断を求められるのが印紙税の要否とその金額です。
2.ここでは、印紙税の要否と金額を判断する際に押さえておきたい7つの着眼点について解説します。


鳥飼総合法律事務所
弁護士 山田 重則


印紙税の判断について、目の前にある文書と類似する文書を文献等から探し出すという方法では、おのずから限界があります。目の前にある文書とまったく同じ文書が文献等に載っているとは限らないためです。


どのような文書であっても正確に判断するための着眼点は、次のとおりです。この7つの着眼点に沿って判断することで、漏れのない正しい判断が可能になります。



第1号~第20号文書の課税事項の記載があるか

課税事項を証明する目的で作成されたか

契約書に当たるか(第1号、2号、5号、7号、12号~15号文書の場合)

記載金額はいくらか

複数の課税事項が記載されている場合、どの号の文書に所属するか

非課税規定の適用はないか

「作成した」といえるか


●着眼点①……課税事項の記載があるか

印紙税法は、印紙税が課される文書として、第1号から第20号までの20種類の文書を定めています。


「課税事項の記載」とは、請負に関する契約書(第2号文書)を例に挙げると、「請負に関して契約当事者が合意した事実の記載」がある場合、その文書には第2号文書の「課税事項の記載」があるといえます。


このように、「〇〇に関する契約書」の課税事項の記載とは、「〇〇に関して契約当事者が合意した事実の記載」と理解すれば足ります。


課税事項は、課税文書の数だけありますので、20種類の課税事項があります。なお、ある文書に1つも課税事項が含まれず、印紙税が課されない文書を「不課税文書」といいます。

●着眼点②……課税事項を証明する目的で作成されたか

印紙税が課されるためには、文書の作成者が、「課税事項を証明するためにその文書を作成した」といえることも必要です。もっとも、この点は、文書に記載された文言等から客観的に判断されます。そのため、通常は、文書に課税事項の記載があれば、その証明目的もあると判断されるといえます。

●着眼点③……契約書に当たるか(第1号、2号、5号、7号、12号~15号文書の場合)

20種類の課税文書のなかには、「〇〇に関する契約書」という類型が含まれています。


たとえば、「請負に関する契約書」について、ある文書が「請負に関する契約書」に当たるためには、そもそもその文書が「契約書」、すなわち「契約当事者間の意思表示の合致を証明することができる文書」といえる必要があります。


また、ある文書が「契約書」に当たるためには、契約当事者間の意思表示の合致を証明することができる文書といえることに加えて、その文書に契約上の「重要な事項」の記載が1つ以上あることが必要です。


この「重要な事項」については、印紙税法基本通達別表第2において、契約類型ごとに定められています。

●着眼点④……記載金額はいくらか

課税文書のなかには、文書に記載された金額の多寡に応じて印紙税の金額が決まる文書があります。


「記載金額」とは、契約書に記載された契約金額や受取書に記載された受取金額等をいいます。


たとえば、請負代金として300万円と記載された請負に関する契約書の印紙税は1通1,000円ですが、これが1,000万円になると1通1万円になります。このように記載金額は、印紙税の金額に大きく影響を与えます。

●着眼点⑤……どの号の文書に所属するか

前述のとおり課税事項は20種類あるため、ある文書に2種類以上の課税事項の記載があるという場合が起こります。


たとえば、土地の賃貸借契約書に敷金受領の事実が記載されている場合、この文書には契約当事者間で土地の賃借権の設定に関して合意した事実(第1号の2文書)と、金銭を受領した事実(第17号文書)という2つの課税事項が記載されています。


この場合、その文書を土地の賃借権の設定に関する契約書(第1号の2文書)として取り扱うのか、それとも金銭を受受領した文書(第17号文書)として取り扱うのかが問題となります。


このように、1つの文書に複数の課税事項の記載がある場合、どの課税文書として取り扱うのかというのが「所属の決定」という問題です。所属の決定に関するルールは、印紙税法基本通達11条に定められています。

●着眼点⑥……非課税規定の適用はないか

ある文書に課税事項の記載があると、原則として印紙税が課されます。しかし、その文書が非課税規定の定める一定の要件を満たすと、例外的に印紙税は課されません。


非課税規定は、印紙税法5条に定められています。たとえば、ある文書が請負契約書に当たるとしても、そこに記載されている請負金額が1万円未満の場合には印紙税は課されません。また、ある文書が金銭の受取書に当たるとしても、その作成者が弁護士や税理士等の場合には印紙税は課されません。


このように、課税事項の記載はあるものの、非課税規定により例外的に印紙税が課されない文書を「非課税文書」といいます。

●着眼点⑦……「作成した」といえるか

印紙税法は、「課税文書」を「作成」した場合に印紙税を課すと定めています。前述の①から⑥までは、「課税文書」に関する着眼点です。


そして、課税文書を「作成」したとは、単に文書を作ることではなく、文書をその目的に従って行使することをいいます。


たとえば、契約当事者双方が署名、押印する欄のある文書については、双方が署名、押印することで「作成」したといえます。そのため、通常の契約書については、双方の署名、押印をもって「作成」したことになります。


また、一方の当事者から他方の当事者に交付をする文書については、文書の交付をすることで「作成」したといえます。金銭の受取書は、一方の当事者から他方の当事者に交付をする文書ですので、その交付をもって「作成」したことになります。


このように、課税文書を「作成」してはじめて印紙税が課されることになります。



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