スペシャル・レポート メガバンクが提供する国内初の法人向けデジタルプラットフォーム「PlariTown」

2020年5月に設立したSMBCグループの事業会社である株式会社プラリタウンが、同年12月から法人向けデジタルプラットフォームサービスをスタートした。パーソナライズされたビジネス情報の提供から営業、人事、法務など幅広い経営課題のサポートまでを行う。今、注目されている金融の枠を超えたサービスについて、代表取締役CEOの並木亮氏に聞いた。



日本企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進していく中で、便利な法人向けデジタルプラットフォームサービス「PlariTown(プラリタウン)」が2020年12月にスタートした。名前には誰でも「ぷらりと立ち寄って業務に活かせる便利な場」という意味が込められている。


株式会社三井住友フィナンシャルグループの100%子会社である株式会社プラリタウンが運営するこのデジタルプラットフォームは、無料で登録でき、業界や企業などの最新ニュースやレポート、サービス情報やオンラインセミナーの案内などを提供する。さらに、提携するパートナー企業のさまざまなサービスを有料で利用できる。



登録時の属性等に基づき、パーソナライズした情報を配信


「メガバンクのサービスとして、金融サービスにとどまらず、営業、人事、法務、企画など非金融サービスを幅広く提供するソリューションプロバイダーは国内で初めての試みです」と代表取締役CEOの並木亮氏は語る。


PlariTownは中堅中小企業を中心とした日本企業のデジタル化支援を目的としている。興味のある企業の従業員が無料で個別にアカウント登録でき、各人の属性(業種、職種、関心事項など)を設定すると、それに合った情報が画面に表示され、自分がほしい情報を簡単に入手できる。


さらに、PlariTown上からパートナー企業が提供するオンラインサービスを申し込むことができ、その契約金額の一部がプラリタウンの収益になるビジネスモデルだ。


現在利用できるのは、営業支援システムとして人気の「Salesforce」、オンライン営業システム「bellFace」、人材データベースサービス「ビズリーチ」、コミュニケーションを効率化する「Chatwork」をはじめ、名刺管理、人事労務、グループウェア、電子契約など多彩だ。


パートナー企業はこの5月には20社となり、「近い将来には100社まで増やし、Plari Townがビジネスのハブとなる形を目指したい」と並木CEOは対応力の強化を目指す。



「2年後には1万5,000社の登録社数を目指したいです」と力強く語る代表取締役CEOの並木亮氏



地方の老舗メーカーも導入 誰でも使いやすいサービス


20年6月~12月にかけては、三井住友銀行(以下、SMBC)の法人顧客に対して「テレワーク導入支援プログラム」が実施された。これはPlariTownで提供されるパートナー企業のサービスを利用する際に、初年度に限り上限50万円をSMBCが負担する社会貢献だ。


このプログラムに約2,000社の顧客企業が申し込んだ。こうした取引先がPlariTownのユーザー企業の基盤となり、20年12月からSMBCの顧客以外にも拡大して本格的にサービスインした。現在、登録社数は2,200社にまで増えている。


まだ、サービスは始まったばかりだが、地方の老舗メーカーが申し込み、ビジネスチャットと電子契約、グループウェアを導入した事例もある。


「現在のクラウド型サービスは使いやすく、費用もリーズナブルなので、表計算ソフトやメッセンジャーアプリを使えれば誰でも利用できます。老舗企業でもデジタル化が進み始めており、全国に広げたいですね」


そう語る並木CEOはもともとSMBCの法人営業部門に所属していたが、18年に法人デジタルプロジェクトチームが立ち上がり、そのメンバーとなった。


「そもそも金融サービスだけではお客様のニーズに応えられないという問題意識がありました。もう少し幅広いデジタルサービスを提供できないかと考えて活動を始めたのです」


20年5月にはSMBCグループとして中期経営計画を発表し、グローバルソリューションプロバイダーを目指すとした。その中の重点戦略の一つとして「法人向けデジタルソリューションの展開」が掲げられたのだ。まさにその実行部隊としてプラリタウンが設立され、プロジェクトチームの中心的メンバーだった並木氏がCEOに指名された。


「当初は驚きましたが、自分の裁量で決められることにやりがいを感じました。SMBCグループの経営陣からも『自由にやれ』と言われているのでありがたいですね」


SMBCグループ側でも支援体制は万全で、銀行の各部門と連携しながら顧客開拓を進めている。それだけプラリタウンにかける期待は大きい。


現状を「100点満点中15点」と厳しく自己評価する並木CEOは今後の課題として「パートナー企業との連携機能」および「パーソナライズ機能」の拡充をあげた。パートナー企業の数を増やすとともに、各サービスを連携してプラットフォーム機能を充実させる。さらにAI(人工知能)を導入して、情報提供のパーソナライズを精密化することが今後の目標だ。


「コロナ禍が始まる前から企画していたサービスですが、もう少し早く開始していたら、もっと社会に貢献できたはずです。しかし、目指す方向性は間違いないと確信しました。さらにサービス拡充をスピードアップさせたいですね」



フリーアドレスのオフィスで働くのは、高いモチベーションで社内外から参画したプロジェクトメンバー



Corporate Profile


代表取締役CEO 並木 亮
本社 東京都中央区八重洲1-3-4
創業 2020年5月
従業員数 8名
https://www.plaritown.co.jp/



取材・文/吉村克己 撮影/寺澤洋次郎

◎「SMBCマネジメント+」2021年6月号掲載記事

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