Netpress 第2077号 正体は?手口は?「地面師」~その巧妙な罠と騙されないための対策

■Point
1.土地所有者の高齢化などを背景として、「地面師」という詐欺師集団が暗躍しやすい状況にあります。
2.名だたる大企業や法律の専門家等をも欺くその手口や、騙されないための対策などを確認します。


司法書士 小机 航


1.「地面師」とは

2017年に大手不動産会社である積水ハウス株式会社(以下、「積水ハウス」)が、地面師に50億円以上を騙し取られたという詐欺事件が話題となりました。

「地面師」とは、「他人所有の土地を自己所有のものと偽り、売却する詐欺師集団」を指します。地面師は、通常単独犯ではなく、主犯格のほか、物件を下調べする役、所有者になりすます役、印鑑証明書や身分証明書を偽造する役、買主との仲介役など、複数人が関与することが多いのが特徴です。

2.積水ハウスの事案の概要

積水ハウスは、2020年12月に事件についての検証を公表しました。

実際の事件は、仮登記がなされるなど複雑なものであるので簡略化しますが、要するに、地面師グループの1人が所有者になりすまして、他人所有の土地を売却して売買代金を詐取した事案です。

本件で、地面師グループは、パスポート、健康保険証、権利証等を偽造し、それらは一見すると本物にしか見えないほどの精巧なものだったようです。
犯人は、偽造した身分証明書を使用して、役所に実印を紛失した旨を届け出て、実印の改印手続を経て、役所発行という意味では真正な印鑑証明書を取得しています。

また、公証役場において、偽造したパスポートや取得した印鑑証明書を使用して、所有者本人であることの認証を受け、公正証書を取得しています。
公証役場で所有者本人であることの認証を受けていたことにより、犯人を所有者本人であることに間違いはないと考えて、積水ハウスは本件土地を購入するに至りました。

3.なぜこのような事件が起こってしまったのか

本件では、実際、犯人が所有者本人ではないと気づき得る事情がいくつもありました。

所有者本人名義で本件取引について自分が関与していないことを抗議する内容証明郵便が届いたり、他の不動産会社から本件取引の危険性を警告するようなネガティブな情報提供があったりしたにもかかわらず、買主は他のライバル会社からの工作と考えて取り合わなかったようです。

また、所有者を名乗る犯人が誕生日を忘れたと言ってパスポートを確認したり、干支を間違えたりしたにもかかわらず、公証役場で本人確認がなされていたことから、所有者本人と信じてしまいました。

さらに、現地周辺の聞き込み調査などは一切行わなかったという事情もあります。

実際に事件発覚後に犯人の写真を用いて現地周辺の聞き込み調査を行ったところ、所有者ではないことを告げた近隣住民もいたそうです。

このような事情があるにもかかわらず事件が起こってしまったのは、本件土地がどの不動産会社も欲しがるJR五反田駅前の一等地であり、売主から解約されたり、他に売却されたりする不安が大きいことから、一刻も早く買い取ることができるよう焦って手続を進めてしまい、慎重な本人確認を怠ってしまったことに起因します。

地面師グループの手口は巧妙で、身分証明書や権利証などの偽造はとても精巧なものであることから、それらを偽者と見抜くことは困難です。
そこで、いかにして地面師グループに騙されないようにするか予防線を張ることが重要です。

4.騙されないための方法や注意点

地面師に騙されないための方法や注意点について、主なポイントを解説します。


①本人確認を慎重に行う

第一に、所有者と会うことができた際には、本人確認を慎重に行うことが重要です。

生年月日や干支については犯人側も準備してくることが想定されることから、それらを確認するだけでは足りず、身分証明書記載の細かい情報(たとえば、運転免許証記載の旧住所や取得している免許の種類等)により本人確認をすべきです。

また、近隣住民への聞き込み調査もしっかりと行う必要があります。


②担保が付いていない不動産に注意する

第二に、不動産の登記簿を確認してみて、抵当権などの担保が付いていない不動産の場合には注意をすべきです。

抵当権などの担保が付いている場合、金融機関がお金を貸し出す際に、借入れをする人の実印や銀行印を確認します。また、担保が付いた不動産を売却する際には抵当権を抹消する必要があり、そこでも所有者の実印や銀行印の確認をします。

そのため、抵当権が付いている不動産は地面師グループが関与しにくい傾向にあります。逆に言えば、抵当権が付いていない不動産を購入する際には、地面師グループが関与しやすいことに留意する必要があります。


③更地や空き家に注意する

第三に、土地が更地であったり、建物が空き家であったりする場合には注意をすべきです。

現地に人がだれも住んでいない場合、現地を調べたり、近隣住民への聞き取り調査をしたりしても、偽者が所有者本人ではないことが露見しにくくなります。
そのため、このような不動産についても地面師グループが関与しやすいので注意してください。


④所有者と会えない場合や取引を急ぐ場合にも注意する

第四に、病気や高齢を理由に所有者となかなか会わせてくれない場合や、取引を急ぐ場合にも注意する必要があります。

所有者になりすました偽者が取引の場に出てくれば出てくるほど、偽者であることが露見する恐れがあるため、地面師グループはなるべく所有者と会わせないようにしますし、所有者が高齢であるとか、海外に行くといった理由をつけて取引を急ごうとするからです。


以上、駆け足になりましたが、地面師について解説しました。魅力的な不動産であればあるほど、地面師という悪い虫が付きやすいので注意が必要です。



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