Netpress 第2249号 外部プロ人材を活用した教育はここが違う 「リスキリング・リカレント」は人材不足解消の最新解
1.リスキリング・リカレントニーズの背景には、急速な技術革新やビジネスモデルの変化があります。
2.これからを生き抜くスキルアップのためには、「社外の実践の場」が肝となります。
3.キャリアに悩む社員に必要なのは、徹底した「自己分析とゴール設定」です。
株式会社みらいワークス
執行役員 新規事業開発・推進部 部長
久野 芳裕
中小企業を中心に人手不足が深刻化しています。少子高齢化や離職率の高さに加え、終身雇用制度の崩壊によって、1つの会社で一生働き続けるより、さまざまな企業を渡り歩いてキャリアアップを図る人材の流動化が進んでいることが背景にあります。
この人手不足問題に対し、社員のスキルアップで対応するという企業のニーズが出てきています。
1.急速な技術革新やビジネスモデルの変化
これまでの働き方は、終身雇用のなかで入社後3年ほどが業務スキルを身につけるための教育の期間でした。
人生100年時代、少子高齢化の日本で、25〜60歳まで仕事をし、60歳で引退という流れで、いつまで社会保障制度を維持できるでしょうか。
どう楽観的に考えても、1企業内に60歳までとどまって引退というのは現実的ではありません。
アメリカの経済学者P・F・ドラッカーは、『プロフェッショナルの条件』のなかで、「特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」といいました。
また、アメリカの研究者キャシー・デビッドソン教授は、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」とニューヨークタイムズ紙で語っています。
AIやロボット、さらにはまったく別の技術革新に対応し、既存事業に加えて新たな柱となる新規事業の創出ができなければ、10年後、20年後、企業もビジネスパーソンも生き残れないのは明白です。
生き残るためには、デジタル化や技術革新、ビジネスモデルの変化によって新たに発生する業務などに対応できる人材が必要ですが、売り手市場のなかで欲しい人材はどこも同じです。
奪い合いをするより、社内にそういったスキルを持った人材を育て、これまで10人必要だった業務を5人でできるようにするなど、個々人の力を高めて対応するしかないのです。
一方で、リスキリング・リカレントでスキルアップした人材に対しては、離職防止のためにも「どこでもプロフェッショナル人材として働けるが、この会社がいちばん働きやすいから継続して働きたい」と思えるインセンティブを与えることが重要になってきています。
2.「社外の実践の場」が肝
終身雇用制度を継続できなくなった今、若手だけでなくミドル層もシニア層も、役立つスキルや知識を学ぶリスキリング・リカレントが定期的に必要です。
ただ、注意したいのが、これまでのように「とりあえず資格を取得しておけば安心だ」という考え方が通用しないということです。
ものすごいスピードで移り変わっていく世の中に対応するには、身につけた知識やスキルを必要とされる現場で、即戦力で活かすことができなければ意味がありません。
こういった、現場ですぐに活かせるリスキリング・リカレントを進めるために重要なものとして、「実践の場」と「伴走者」が挙げられます。
たとえば、新規事業を立ち上げる部署の人材を育てるには、新しいことを社内で推進する力を付ける必要があります。これは動いてみないとつかめない、座学では身につけられない力です。
しかも、社内の上司などで起業をしたことがない人がメンターをしても、ゼロからイチを作り出す感覚もやり方も教えることができません。
社内のリソースを使ったリスキリングや一個人でのリカレントで、「現場で使えるスキル」を身につけるのはなかなか難しいのです。
手前味噌ではありますが、みらいワークスでは、副業マッチングサービス「Skill Shift(スキルシフト)」の案件を通してスキルアップを図れる実践の場があり、登録されている1万名以上の副業・兼業プロフェッショナル人材のなかから、適した人が伴走者として相談に乗る形でリスキリング・リカレントのサポートをしています。
ちなみに、スキルシフトの1案件当たりの応募倍率は20倍ほど。勝ち抜き、継続して副業を続けるためには、積極的なレベルアップが必要となります。そうやって副業先で得たスキルを、本業の会社に戻ってさらに活かす流れができつつあります。
一方で、副業人材を受け入れる中小企業やベンチャーにも、外部人材が入ってくることによる人手不足解消以外のメリットがあります。
大企業ならではの、数億、数十億円規模の案件に携わった知見や考え方に触れることが刺激となり、社員のモチベーションアップにつながることがあるからです。
年齢、性別、価値観など多様な人が集まってこそ、イノベーションは生まれるといいます。
3.徹底した「自己分析とゴール設定」
人材のキャリアを見据えたリスキリング・リカレントにとって最も大切だと考えられるのは、「自己分析とゴール設定」です。自分に今、どのようなスキルや知識があり、社外に出てもできることは何か、自身のスキルの棚卸しをするところからスタートする必要があります。
ここが、一人でやるにはなかなか難しいところです。伴走者であるプロフェッショナル人材に俯瞰してもらうと、自分が気づけなかった点、あえて見ないようにしていた点にフォーカスを当てることができます。
今のニーズに合った仕事をするために、足りないスキルや知識は何か、身につけなければならないことは何か、この自己分析が間違っていたら、意味のない学び、間違ったゴールを目指しかねません。
この自己分析は、現状、漠然とした不安を抱えるビジネスパーソンの不安解消、パフォーマンスの発揮にもつながるのでおすすめです。
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