Netpress 第2247号 非上場企業も注目したい 改訂コーポレートガバナンス・コードとサステナビリティ・ESG投資

Point
1.近年、企業の非財務情報(環境〔E〕・社会〔S〕・統治〔G〕)を考慮したESG投資が世界的関心を集めており、高い企業評価を受けるためには、これらの非財務的要素にも積極的に取り組む経営が必要となっています。
2.サステナビリティをめぐる課題への取り組みの強化と開示は、2021年のコーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」といいます)の改訂において主要なテーマの1つとされ、すでに、多くの企業がその取り組み内容等を開示しています。
3.CGコードが直接適用されない非上場企業にとっても、その顧客や取引先等との関係において、また、新たな収益・事業機会を創出し得る等の観点から、サステナビリティに取り組むことの意義や重要性が増しています。


梅田総合法律事務所
弁護士 沢田篤志
中村昭喜
中村重樹


1.ESG投資とサステナビリティへの取り組み強化・CGコードの改訂

近年、投資家を中心に、企業の財務情報だけでなく、E・S・G等の非財務情報を考慮して投資判断を行う「ESG投資」への関心が世界的に高まっています。



E:Environment (環境)
S:Social (社会)
G:Governance (統治)


この背景には、E・S・Gの要素が企業価値に重要な影響を及ぼすものであり、E・S・Gに配慮し、これに積極的に取り組むことが企業価値を向上させるとの認識が広く浸透したことが挙げられます。実際にE・S・Gに配慮し、積極的に取り組む企業も増えてきています。


ところで、2021年6月11日に、実効的な企業統治と企業意思決定の実現に向けたCGコードが改訂されました。


この改訂においては、取締役会の機能発揮や企業の中核人材における多様性の確保等に並んで、サステナビリティを巡る課題への取り組みも主要なテーマとされました。


すなわち、冒頭で述べた背景事情等を受けて、CGコードの【補充原則2-3】は、次のように改訂されました。



 「取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。」


直接、E・S・Gとの文言自体は出てきていませんが、その要素(地球環境問題への配慮や人権の尊重等)が盛り込まれていることが読み取れます。


ちなみに、改訂前の【補充原則2-3】は、「取締役会は、サステナビリティー(持続可能性)を巡る課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、適確に対処するとともに、近時、こうした課題に対する要請・関心が大きく高まりつつあることを勘案し、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討すべきである。」というものでした。


そのほか、改訂により、上場企業に対して、次のような原則も新設されました。



「経営戦略の開示にあたって、自社のサステナビリティについての取り組みを適切に開示すべきである」こと等を求める原則
(補充原則3-1③)

取締役会において、「中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取り組みについて基本的な方針を策定すべき」こと等を求める原則
(補充原則4-2②)


こうした原則が新設されたことで、より一層、サステナビリティを巡る課題への取り組みの強化を求める姿勢が明らかにされました。

2.非上場企業とサステナビリティ

CGコードは、上場企業を対象とするものであるため、サステナビリティへの取り組みに関するCGコードの原則が、非上場企業に直接適用されるわけではありません。


とはいえ、当該原則において謳われているサステナビリティへの取り組みは、非上場企業にとっても無関係のものではありません。


非上場企業も、上場企業と直接または間接に何らかの関わりを有していることが少なくありません。近年、「サプライチェーン」が意識されるなかにおいては、関わりのある上場企業等から、サステナビリティへの取り組みの有無が確認される例や、そうした取り組みが求められる例が徐々に増えてきています。


他方、サステナビリティへの取り組みが、企業イメージの向上のほか、新たな顧客や取引先、パートナーシップの形成等、事業または収益の機会にもつながり得ることは、非上場企業においても同様です。


実際に、一般消費者からの厳しい目もあるなかでは、非上場企業においても、サステナビリティに取り組むことの意義は大きいと思われます。


すでに、多数の上場企業から、改訂CGコードへの対応状況についての報告書が東京証券取引所に提出されています(「コーポレート・ガバナンス情報サービス」により検索も可能です)。


また、企業のホームページ等において、サステナビリティへの取り組み等を開示している例もありますので、こうしたものを活用し、参考にしていただくのも有益と思われます。

3.終わりに

CGコードは、上場企業を対象にするものですが、その背後にある“企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上”という目的は、上場・非上場にかかわらず、どの企業にも共通するものです。


そのため、こうした目的のもとに策定され、サステナビリティへの取り組みを含んでいることから、改訂CGコードの内容は、非上場企業にとっても、よりよい経営や企業価値向上のヒントになるものといえます。


今後は、各企業の個々の実情や強み等を踏まえながら、CGコードの内容をその経営にも活かしていくことがますます期待されます。



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