Netpress 第2235号 【2023年新春】新年スピーチ事例 〜 わが国経済の回顧と新年の展望 〜
株式会社日本総合研究所
調査部 研究員 白石 尚之
みなさん、あけましておめでとうございます。新たな年の初めを迎え、みなさまには健やかにお過ごしのことと、お慶び申し上げます。昨年は、それぞれの持ち場で業務に真摯に取り組んでいただきましたことに対し、心より感謝申し上げます。 ◆2022年の回顧 ―― 激動の1年さて、2022年を振り返りますと、まさに「激動の1年」でした。ロシアはウクライナに軍事侵攻し、中国では厳しいゼロコロナ政策が続けられ、世界中が激しいインフレに見舞われました。わが国でも、急激に進行した円安や資源高が、多くの企業を苦しめました。 ロシアと西側諸国の関係が悪化したことで、原油やガスといった資源価格が高騰しました。また、中国政府が厳格な行動制限を課したことで、多くの工場の操業が停滞し、世界中のサプライチェーンが混乱しました。これもさまざまな製品の価格を押し上げる要因になったと考えられます。 世界中で物価が上がったことを受けて、アメリカをはじめ多くの国で金融引き締め政策が実施されました。これをきっかけに、わが国では急速に円安が進み、一時は32年ぶりとなる1ドル=150円台をつけました。資源高や円安が進行した結果、わが国の物価も近年にない幅で上昇しました。 このように、世界経済が厳しい状況に直面するなかでも、わが国の景気は少しずつ立ち直っています。 この背景には、コロナ対応と社会生活を両立するウィズコロナの行動様式が浸透し、経済が正常化に向かっていることがあります。 ゴールデンウィークやお盆休み期間には、全国各地で人出が増え、観光地も賑わいを取り戻しつつあります。旅行費を補助する全国旅行支援など政府が策定した経済対策も、個人消費を下支えしています。 企業の経済活動も活発に行われており、設備投資も増加しています。このなかには、デジタル化やグリーン化といった、いわゆる「新潮流投資」も多く含まれています。 ◆新年の展望 ―― 経済活動が正常化新年のわが国経済を展望しますと、経済活動の正常化が一段と進み、景気回復が続くと考えられます。 昨年は、円安のマイナスの面ばかりが目立ちましたが、経済活動が正常化すれば、今年は円安のメリットを享受できるはずです。 製造業では、自動車や電気関連の分野で、部品や原材料の不足に苦しんできましたが、最近になって供給制約が緩和しつつあります。このまま供給制約が順調に解消すれば、輸出の盛り返しが期待され、円安効果とあいまって、製造業の業績を押し上げるでしょう。 非製造業でも、インバウンド需要の回復がけん引役として期待されます。昨年、水際対策が緩和され、入国者数の上限が撤廃されたほか、個人旅行客の入国も解禁されました。 円安の進行により、わが国の物価は海外と比べて割安になっています。特に、外食やホテルなどのサービス分野で割安感が強まっています。外国人観光客にとって、日本は価格面で魅力を増しており、インバウンド需要の拡大余地は大きいといえます。 このような円安メリットを享受するためにも、医療・ワクチン接種体制の整備を一段と進めるなど、感染拡大が経済活動に影響しにくい社会を構築することが課題となるでしょう。 ◆新年の抱負 ―― 情報感度を高めて「飛躍」の年へ景気回復が期待されるとはいえ、世界経済の不透明感は依然として強い状況にあります。 こうしたなかでも成長を続けるためには、情報感度を高めて世界情勢の変化をいち早く察知し、攻めと守りのバランスをうまくとっていくことが必要となります。 コロナ禍で経済・社会が不透明感に覆われた際にも、多くの企業が情報感度を高めた結果、業態の変化やオンラインビジネスの拡充に踏み切り、ピンチをチャンスに変えています。 今年は卯年ですが、西洋ではウサギといえば、「復活」の象徴として知られるイースターエッグを運んでくる役目を担っていることで有名です。 中国の六十干支でみますと、今年は「癸卯(みずのとう)」にあたります。十干の最後にあたる癸(みずのと)は、生命の終わりを意味するとともに、次の新たな生命が成長し始めている状態を意味しているそうです。 わが国の経済は、まさに今、復活の途上にあります。今年こそ、新型コロナウイルスとの戦いに終止符が打たれ、新たな成長のフェーズへと踏み出すことを願ってやみません。 相場の格言でも「卯跳ねる」といって、卯年は経済や市場が大きく飛躍する年回りとされています。コロナの流行で守りに入った時間が長かった分、大きく攻勢をかける準備はできているはずです。 ウサギの耳にも負けないような情報感度を持ちながら日々の課題や業務に取り組むことで、飛躍を実現する年としていきましょう。 最後になりましたが、本年がみなさんとご家族にとり、より佳き年となりますことを祈念いたしまして、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。 |
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