多田智子の働き方改革関連コラム 人的資本の情報開示の義務化へ(方針)
今回は、人的資本の情報開示についてお知らせします。
皆様の会社では、人的資本の可視化の対応はされておりますでしょうか。
「人的資本」とは、人材が、教育や研修、日々の業務等を通じて自己の能力や経験、意欲を向上・蓄積することで付加価値創造に資する存在であり、事業環境の変化、経営戦略の転換にともない内外から登用・確保するものであることなど、価値を創造する源泉である「資本」としての性質を有することに着目した表現となります。
この人的資本ですが、企業の競争優位の源泉や持続的な企業価値向上の推進力が、無形資産(人的資本や知的資本の量や質、ビジネスモデル等)にあるとの認識が広がる中、人的資本への投資は、競合他社に対する参入障壁を高め、競争優位を形成する中核要素であり、成長や企業価値向上に直結する戦略投資であるとの認識が、企業のみならず、投資家においても広がりつつあります。
今や多くの投資家が、人材戦略に関する「経営者からの説明」を期待しているため、企業・経営者が自社の人的資本への投資や人材戦略の在り方を投資家や資本市場に対して分かりやすく伝えていく「人的資本の可視化」が不可欠であるとされています。
内閣官房では、特に人的資本に関する資本市場への情報開示の在り方に焦点を当てて、既存の基準やガイドラインの活用方法を含めた対応の方向性について包括的に整理した資料「人的資本可視化指針」を公表しております。
本資料では、有価証券報告書等以外にも複数の法令において人的資本に関連する事項の開示が求められているものとして、以下の例を挙げています。
<女性活躍推進法>
○開示を求められる内容
①一般事業主行動計画(計画期間、達成しようとする目標、対策内容及びその実施時期)
②次の⑴及び⑵の情報の区分ごとに定める事項
⑴女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績採用した労働者に占める女性労働者の割合、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合等
⑵職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績男女の継続勤務年数の差異、一月当たりの平均残業時間、有給休暇取得率等
○開示義務を負う事業主
労働者数が100人を超える事業主
※300人超の会社は⑴⑵それぞれから1つ以上、101人~300人の会社は⑴⑵全体から1つ以上。
<労働施策総合推進法>
○開示を求められる内容
正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合
○開示義務を負う事業主
労働者数が300人を超える会社
<育児介護休業法>
○開示を求められる内容
育児休業の取得の状況(①男性の育児休業等の取得率又は②男性の育児休業等及び育児目的休暇の取得率)
○開示義務を負う事業主
労働者数が1000人を超える事業主
<次世代育成支援対策推進法>
○開示を求められる内容
一般事業主行動計画(計画期間、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標、対策内容及びその実施時期)
○開示義務を負う事業主
労働者数が100人を超える事業主
詳細について以下のリンクをご参照ください。
※関連リンク
○内閣官房「人的資本可視化指針」
https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf
企業における働き方改革関連制度の導入について、何からスタートしていいのかわからない、他社事例を知りたいなど悩みが多いかと思います。上場企業を中心に240社の相談顧問先を有する多田国際社会保険労務士法人がサポートします。 http://wsr.tk-sr.jp/
プロフィール
多田国際コンサルティンググループ 代表社会保険労務士 多田智子
私たち多田国際コンサルティンググループは、多田国際コンサルティング株式会社と多田国際社会保険労務士法人で構成しております。
多数の社会保険労務士・中小企業診断士・人事コンサルタント等を擁する、独立系コンサルティングファームです。労働法・社会保険法からのサポートのみならず企業のIPO支援、海外進出、M&A、人事制度構築、社員教育など多様な専門性とサービス展開により人的資本の側面から企業価値向上をサポートして参ります。