Netpress 第2210号 消費者契約法など 成年年齢引き下げに伴い企業に求められる実務対応

Point
1.成年年齢を引き下げる改正民法の施行により、ことし4月1日から、成年年齢は18歳になりました。
2.企業としては、未成年として取り扱っていた18歳以上20歳未満の者への対応を再検討する必要があります。


弁護士
青戸 理成


1.成年年齢引き下げに伴う主な変更点

(1)未成年者取消権の対象

民法においては、親権者の同意なく未成年者と契約した場合には、契約を取り消すことができる「未成年者取消権」が認められています。


今回の改正によって、ことし4月1日時点で18歳以上20歳未満だった者は、同日時点をもって成年に達します。また、ことし4月1日以降、18歳以上の者とは、親権者の同意を得なくとも、単独で契約をすることができるようになりました。


なお、ことし4月1日より前に18歳以上20歳未満の者とすでに契約を締結している場合、その契約についての未成年者取消権は認められます。いったん生じた未成年者取消権が消滅することはありません。


(2)婚姻適齢

婚姻適齢について、女性の婚姻適齢の引き上げが行われ、これまで男性18歳、女性16歳であった婚姻適齢は、男女とも18歳になりました。


また、これまでは婚姻することにより成年と擬制されていた(民法上、成年と同様に扱うこととされていた)のですが、成年年齢と婚姻適齢が一致することになったので、成年と擬制する規定は削除されました。


(3)個別の年齢要件の見直し

民法改正に伴い、成年年齢と一致していた年齢要件も個別に見直しが行われました。


たとえば、公認会計士、行政書士、司法書士、社会保険労務士などの国家資格について、成年年齢引き下げに伴い、取得可能年齢が18歳に引き下げられました。

2.企業実務への影響と対応

(1)成年年齢引き下げによる取り扱いの変更

成年年齢引き下げに伴い、従来、未成年者と契約を締結する場合に親権者の同意を求めていた取り扱いを変更することになります。


たとえば、従来は18歳以上20歳未満の者に不動産を貸したり、物を販売したり、18歳以上20歳未満の者を雇ったりするには親権者の同意が必要でしたが、成年年齢引き下げにより、親権者の同意をとる必要がなくなりました。


そこで、規約等で20歳未満の者との契約に関する取り扱いを定めていた場合には、18歳未満を未成年者とする取り扱いに変更する必要があります。


また、18歳以上の者と契約をする場合には、親権者の同意欄のない契約書ひな形を使用することになります。


成年年齢引き下げにより、親権者の監督を受けるのは17歳までとなり、18歳以上の者に親権は及ばなくなります。したがって、18歳以上の者との契約にあたり、親を親権者として取り扱うことは、法律上とは異なる取り扱いになります。


対象者に未成年者を含む何らかの契約がある場合、規程類や契約書の変更の要否をチェックしましょう。


(2)年齢確認の必要性

成年年齢引き下げにより、高校生を対象とする場合であっても、親権者の同意が不要になる場合が生じます。特に高校3年生を相手とする契約の場合は、身分証明書などにより年齢を確認する必要があります。


(3)各種契約における留意点

①賃貸借契約

たとえば、高校を卒業して一人暮らしを始める者に部屋を貸す場合、親権者の同意は不要となりました。


ただし、成年年齢が引き下げられたからといって、当然に経済的な自立が認められるわけではありません。したがって、親などに保証人となってもらう必要があることは従来と変わりません。


②雇用契約(アルバイト)

成年年齢が18歳となったことにより、大学生がアルバイトをする際、親の同意が不要になるとともに、タイミングによっては、高校生であっても親権者の同意が不要になる場合があります。


なお、労働基準法は、従来から18歳未満の者の労働時間や深夜業を制限しています。この点は、今回の成年年齢引き下げによる影響を受けません。


③消費貸借契約

従来、20歳未満の者が、生活費の借り入れや車の購入などで金銭消費貸借契約を締結する場合には、親権者の同意が必要でしたが、18歳以上であれば親権者の同意は不要となりました。


当然のことながら、金銭を貸し付けるにあたって審査が必要になりますが、成年年齢が引き下げられたからといって、借りる本人が、自分の返済能力について適切な判断ができるとは限りません。また、賃貸借契約の場合と同様に、経済的に自立しているとも限りません。ですから、親権者の同意が不要になったとしても、金銭消費貸借契約を締結する際の取り扱いは、大きく変わらないことが予想されます。


一方で、成年年齢が18歳となったことにより、これまで20歳未満を未成年者として取り扱っていた内部の審査基準や規定などは見直す必要があります。また、18歳以上であれば親の同意なくクレジットカードを作成できるようになりましたので、クレジットカード作成時の利用上限について、新たな基準を設定することも考えられます。


④消費者契約法上の取り扱い

成年年齢引き下げの影響として、消費者被害の拡大が懸念されています。実際、成年年齢が引き下げられたことにより、成年として取り扱われるようになった者のなかには、判断能力が未成熟である者も存在すると考えられます。


消費者契約法においては、消費者の社会生活上の経験が乏しいことを利用した不当な勧誘による契約は取り消すことができると定められています。これまでは親権者が関与することにより適切な対応ができていたといえるところ、成年年齢引き下げにより、18歳から20歳までの間の者も親権者(第三者)の同意なく契約できることになったことから、「社会生活上の経験が乏しい者」が増えたということもできます。


したがって、勧誘行為が必要な事業を営む中小企業の場合、自社のパンフレットなどの記載事項が、「社会生活上の経験が乏しい者」が増えたことを前提に、適切な表現となっているか、再度確認する必要があるかもしれません。



成年年齢が18歳に引き下げられても、年齢に応じた精神的成熟度や経済的状況が変わるわけではありません。そのことをふまえて、企業としての対応を見直す必要がある契約等はないか、営業担当者等に注意を促しておくべき事項はないか、あらためて検討すべきでしょう。



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