2023年度 新入社員研修にも登壇 橋本尚久氏 【講師インタビュー】学ぶだけでは終わらせない。実務に活かせる思考系スキル研修を目指して

SMBCコンサルティングでは、幅広い世代のビジネスパーソンに向けて多種多様なビジネスセミナーを実施している。その中で、ロジカルシンキングなどの思考系スキルを担当する橋本 尚久氏は、受講者目線のわかりやすい研修が評判の講師だ。そんな彼が築き上げたキャリアの軌跡を紐解く。

受講者の「小さな一歩」を大事にするのが橋本流


自分が思っている5倍くらいメモを取ってほしいです。その行動が実力に変わっていくんです──セミナーの冒頭、橋本は受講者たちに、こう呼びかけた。「日常業務に活用できるロジカルシンキング コミュニケーション編」と題したセミナーには、20~30歳代を中心に多くの人が詰めかけ、会場はほぼ満員となった。


橋本 「ロジカルシンキングは、論理的に物事を整理して問題解決する、もしくはわかりやすくて納得感のあるコミュニケーションを行うための思考スキルです。全ての社会人が身につけるべき必須スキルといえます。

一方で、こういった思考系スキルは初めて学習する人にとっては難しいテーマでもあります。セミナーでは、受講者の方の目線に合わせて、できるだけわかりやすく解説し、受講者が実際に職場で行動に移すための『橋渡し』を丁寧に行いたいと思っています」


セミナーの中では、考え方を伝える際、時事ネタや日常生活の身近な事例を豊富に盛り込み、演習も数多く取り入れている。受講生たちは、ペンを走らせながら、真剣に耳を傾けていた。


橋本 「思考系スキルをマスターするためには、セミナーを受講するだけでは不十分です。だから、『アウトプットしましょう』『メモをたくさん取りましょう』と繰り返し促したり、練習方法として1日2~3分でできる歯を磨くよりも簡単なトレーニングを紹介したりしています。


セミナーのゴールは、受講することではなく、現場で仕事を変革し、成果につなげること。そのために、受講者一人ひとりに寄り添って、まずは小さな第一歩を踏み出すお手伝いをしたいと考えています」


駆け出しのコンサル時代に気づいた、思考系スキルの重要性



講師として活躍する橋本だが、東京大学大学院時代は地球惑星科学を専攻。コンサルタントや講師を務める2022年7月現在の自分は、当時はまったく想像できなかったという。


橋本 「専門は火星の研究で、地球の気象予報シミュレーションのノウハウを、火星に適用してその精度を上げるというようなことをしていました。就職活動では、当初はパイロットになろうと試験を受けたのですが、三半規管が弱かったからか、健康診断で落ちてしまいました。

学生時代にスーパーコンピューターを使った数値シミュレーションの研究をしていたこともあり、IT系にも興味があったので、システム関連の仕事にチャレンジしようと思い、日本電気株式会社(NEC)へ入社したんです」


キャリアのスタートはシステムエンジニア。金融機関のシステム開発などに携わる中、すぐに転機が訪れた。


橋本 「入社2、3年目のころ、それまでずっと理系で、財務や人事、マーケティングなどの知識がほとんどなかったので、自己啓発も兼ねて中小企業診断士の勉強を始めました。中小企業診断士の資格は、コンサルタントになるための国家資格で、そこで初めてコンサルタントという職種を知りました。次第に興味がわき、2007年に外資系のコンサルファーム・アクセンチュア株式会社に転職しました」


駆け出しのコンサルタント時代には、自身の力不足を実感することも多かったという。それでも、もがく中で現在の講師業の礎となる「気づき」を発見することになる。


橋本 「転職した直後はコンサルの価値になる部分──物事を論理的にわかりやすく整理し、答えを導くというベースの部分ができていませんでした。先輩や上司に厳しく指導される中で、こういった思考系スキルの重要性を強く感じました。この期間は大変でしたが、思考系スキルを勉強し、実務を重ねると、次第にお客様に価値として認められる機会も増え、自分に自信がつきました。

できることが増えると、仕事が楽しくなり、やりたいことも増えますよね。こういった経験を多くの人に実感してほしいと思ったことが、講師を志すきっかけになりました」



 橋本氏の講師紹介動画はこちらから



受講が現場で活かされなければ、「講師としての価値はない」



2010年にコンサルタントとして独立を果たしたのを機に、講師業にも着手した橋本。ただ、当初から、受講者目線を前面に出した現在の研修スタイルだったかというと、そうではなかったと振り返る。


橋本 「講師を始めた直後は、それまで外資系のコンサルファームで働いていたこともあり、英語やカタカナの用語を無意識に連発していました。事務局の方から、『先生、ちょっとカタカナが多くて難しく感じる人がいるかもしれません』と言われたこともありました。

『マーケティング』『ストラテジー』『エビデンス』『イシュー』など、コンサルファームでは当たり前のように飛び交う用語も、初めて話を聞く人にとっては距離を感じてしまうのかもしれないと反省しました」


さらに、強く印象に残る出来事にも直面したという。


橋本 「過去に研修を担当した受講者に、受講から約半年後、再び会う機会がありました。『以前に学んだことは活かせていますか』『何か仕事で変化はありましたか』と聞いたら、『ちょっとまだ、できていないですね』と返ってきました。みなさん苦笑いを浮かべていましたね。

その時、現場で実践できておらず、研修が実務に活かされていないのではないか、ということを感じ取りました。もっと受講者に寄り添った形で、わかりやすさに特化した研修にしないと、『なんとなく理解できたぞ』という一過性の達成感で終わってしまう。具体的に次の仕事に活用できるところまでしっかり落とし込んでいかないと、講師としての価値はないと痛感しました。そこから、今のような研修スタイルを意識するようになりました」


まだ完成ではない── 時代に合った学び方の提供を目指す



2022年8月に45歳となる橋本は、講師としても10年以上のキャリアを積み重ねてきた。社会人として、まさに「脂の乗った時期」を迎えている。


橋本 「セミナーの内容や進め方は10年以上かけて、徐々に熟成してきていると感じています。ただ、今もこれで完成されたとは思っていません。

ビジネスパーソンにとって思考系スキルの必要性は、普遍的な部分がある一方、学び方そのものやスキルアップの考え方は変わってきています。そういった部分をアップデートして、その時代に合った研修を提供していきたいです」


これからも、「次の一手を自ら考えられる人材」の育成を主眼に置き続けていきたい、と語る橋本。今後、どのような展望を描いているのだろうか。


橋本 「現在、受講生は若手から中堅社員が中心ですが、今後は管理職クラスの方にも思考系スキルの重要性を伝えていきたいです。若手・中堅だけではどうしても、実践でつまずいてしまうことがあります。方法論を学んだ管理職の方が音頭を取り、若手・中堅が思考系スキルをしっかり活用できる環境や社風を作っていけば、チーム全体、ひいては会社全体のレベルの底上げにつながります。

一人ひとりの仕事に対する充実感や幸福感が増すことで、会社のパフォーマンスや企業文化も増していきます。講師業を通じて、最終的には日本企業の活性化を目指していきたいです」



橋本 尚久氏(株式会社ネクサック 代表取締役)

大阪府出身。大学院修了後、2002年に日本電気株式会社に入社。アクセンチュア株式会社を経て、2010年に橋本マネジメントコンサルティングを創業し、独立。2012年に株式会社ネクサックを設立し、代表取締役として、経営コンサルタントや研修講師として活動している。

SMBCコンサルティングでは、新入社員研修や「ロジカルシンキング」や「スッキリまとまる図解思考」をテーマにしたセミナーなどを担当している。




◎ダウンロード資料/橋本氏も分析!

研修講師による分析記事付き】2022年度 新入社員意識調査アンケート

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