Netpress 第2143号 資産承継プランの見直しが必要に 相続税・贈与税の一体化議論が始まる

Point
1.相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の暦年課税制度と相続時精算課税制度のあり方を見直すための議論が始まっています(令和3年度および令和4年度税制改正大綱で方針を明記)。
2.若年世代への資産移転を促進する税制の導入が検討されています。
3.富裕層の暦年贈与による相続税負担軽減策が制限されることが予想されます。


朝日税理士法人
税理士 鈴田 広也


1.昨年と今回の税制改正大綱

令和3年度税制改正大綱の「今後の税制改正に当たっての基本的考え方」を表明する段落で、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」を本格的に進める方針が示されました。今回の税制改正大綱では改正は見送られましたが、再度、同じ方針の記載がなされています。


昨年も今回も、税制改正大綱では、高齢世代が保有する資産をより早いタイミングで若年世代に移転させることによって、移転資産の有効活用を通じた経済の活性化を促進する税制が必要であると言及しています。


財務省が作成した現状分析資料によると、個人の金融資産の保有総額は約1,700兆円に達し、そのうち60歳代以上が約1,000兆円(全体の約6割)を保有しているとしています。また、相続税申告に係る統計資料では、被相続人の年齢構成比は80歳以上が71.1%となっており、その被相続人の子世代の年齢は50歳代以上が想定されることから、被相続人の高齢化による「老老相続」が増加しているという実情が報告されています。


このように、現状では、高齢世代から若年世代への資産移転が進みにくい状況が指摘されています。


2.現行の相続税と贈与税



現在、我が国では、相続税と贈与税が別個の体系として存在しており、贈与税は、相続税の税率構造よりも負担が重く設定されています。相続税も贈与税も最高税率はともに55%ですが、贈与税は4,500万円で最高税率に、相続税は6億円で最高税率に達するようになっています。ここで、前頁に示した図をご覧ください。


現行の相続税と贈与税の体系では、相続税が将来高額になると想定される層では、相続財産に適用される税率を下回る水準で、長い期間をかけて毎年の贈与を実施していくと、相続だけで財産を移転する場合と比べて、少ない税負担で財産を相続人等に移転させることができるようになっています。


他方、将来の相続税負担が比較的少ないと想定される層では、贈与税の税率が、将来適用されると想定される相続税の税率よりも高いものとなるため、年々の贈与の実施は抑制的に作用すると指摘されています。


3.資産移転の時期に中立的な税制

上記で示した問題点を是正するため、資産移転の時期(回数・金額を含みます)にかかわらず、納税者の生前贈与と相続を通じた資産総額に係る税負担が一定になるような税制(資産移転の時期の選択に中立的な税制)の導入が検討されています。下図のように、相続税・贈与税の税率表を1つにして、生前贈与から相続財産まで累積的に課税を行っていく税制が考えられます。




このような税率体系であれば、生涯にわたる資産移転総額によって税率が変わっていくため、資産移転の時期による税負担に差がなくなります。また、そうすることで、生活・教育資金など資金需要の高い若年世代への資産の移転を促し、経済の活性化を図ることができると政策当局は期待しています。相続と贈与が一体化されると、相続税と贈与税の税率差をねらった富裕層の税負担の軽減策は取りにくくなると考えられます。


では、このような税制を実現することは可能なのでしょうか。


この点、諸外国(アメリカ、ドイツ、フランス)では、すでに相続と生前贈与をより一体的に捉えて課税を行っており、資産移転の時期に中立性を確保しています。アメリカでは、贈与時・相続時の双方で、生涯にわたる財産の移転額を累積して課税することとし、税率表は、贈与税と遺産税で同じものとなっています。


資産承継プランに大きな影響を及ぼす改正になると考えられますので、これまでの資産承継プランを見直すきっかけとして、来年度以降の税制改正の動向が注目されています。



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