Netpress 第2132号 いますぐ取り組みたい! 「DX」(デジタルトランスフォーメーション)へのはじめの一歩

Point
1.「デジタイゼーション」から始めて、「デジタライゼーション」、そして「DX」へと、着実に進めていきましょう。
2.自社に寄り添い、伴走・サポートしてくれるベンダーと協力してDXを推進することが成功の鍵となります。


さくら情報システム株式会社
技術開発部 松澤 文明


近年、数多あるIT関連のメールマガジンやセミナーなどに、必ずといってよいほど記載されている「DX」ですが、自社でDXに取り組みたくても、何をどうすればよいかわからない、という方が多いのではないでしょうか。


今回は、そのような方に向けて、DXを推進するための第一歩をどう踏み出せばよいか解説します。

1.DXとは

2018年に経済産業省が公表した『DX推進ガイドライン』では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。


近年、デジタル化の分類は、デジタイゼーション(Digitization)、デジタライゼーション(Digitalization)があり、それとは別にDXがあります。要旨としては、以下のとおりです。


① デジタイゼーションは、既存プロセスは変更せずにIT化を行う。たとえば、これまで請求書を発行する事務作業の依頼をするときは、申請書を印刷して押印のうえ提出し、発行していたが、紙の代わりにワークフローを使って作業を依頼する。

② デジタライゼーションは、ITを使ったプロセスの一部または全部の改善により、プロセスの効率化を同時に行う。たとえば、これまでのビジネスプロセスからERPシステムを導入した全体効率の高い業務プロセスへと変更する。

③ DXは、新しい価値を生むプロセスを、ITを使って創出する。したがって、これまでの意識や組織の変革も必要とされる。たとえば、印鑑のメーカーが印鑑を売ることに加えて、電子印鑑サービスを新たに創出し、提供することで、押印のためだけの出社をなくすなど、社会のデジタル化推進や多様な働き方を支援する。


以前は十数年程度だったビジネスモデルの賞味期限が、いまでは数年といわれるほど、企業を取り巻く経営環境は目まぐるしく変化してきています。その変化に対応するためには、ITを使い、ビジネスのスピードを早めなければならず、多くの企業がDXを含むデジタル化を推進する必要があるといえます。

2.DXの現状

経済産業省の『DXレポート』という報告書のなかに「2025年の崖」との記載があります。これは、古い既存のシステムの維持にリソース(人、時間、費用)を取られるだけではなく、データ活用による迅速かつ的確な経営判断等ができず、他社との競争力が急激に失われる時期のことを指しています。


独立行政法人情報処理推進機構の『IT人材白書2020』によれば、従業員規模1,001名以上の比較的規模の大きな会社はDXが進みはじめていますが、1,000名以下の会社では半分程度がまったくの手つかずというような状況です。




こうした手つかずの企業がDXを進めようとした時に課題になってくるのが、DXを進めるITスキルを持った人材の調達ではないでしょうか。


IT人材は、2020年時点で30万人程度不足しており、DXが進んでいない企業がDX推進のためにIT人材を調達しようとしても、かなり困難な状況になってきています。


この傾向は、今後、さらに厳しさを増す見込みです。

3.DXへのはじめの一歩

DXへ向かうためには、「ITを十分に使いこなせる知見」と「新しい顧客価値を創造するためのノウハウ」の2つが必要となります。


ITを十分に使いこなせる知見は、ITのパフォーマンス、可能性を最大限に発揮させるために必要です。新しい顧客価値を創造するためのノウハウは、変化の激しいビジネス環境にフィットした価値をきちんと顧客に提供するために必要です。


この2つのノウハウがともにない状態でいきなりDXへ向かうと、高い確率で失敗することになります。


2つが揃わない場合は、少し時間はかかるかもしれませんが、まずはデジタイゼーションからスタートして、デジタライゼーションへと進めることで自社にITの知見を蓄積し、少しずつ着実にDXを進めていきましょう。

4.DXに取り組む体制

自社にDX人材がいない場合、新たにDX人材を採用するのがベストです。しかし、前述したように、人材の外部調達が難しく、DXがなかなか進まないという状況を打破するためには、自社のDXに協力してくれるベンダーを見つけ、1つのチームとして、その知見を借りつつ一緒に進めていくことも考えなければなりません。


これまでのシステム構築を委託する・受託するという取引の関係や、一般的なコンサルティングを受けるという関係ではなく、自社に寄り添い、伴走・サポートしてくれるベンダーと協力してDXを進めましょう。


ベンダーをうまく利用することで、外の知見を使い素早く、安価にDXを推進することができます。このような自社とベンダーが協力して業務を進める次世代の情報システムの形、「情シス2.0」でDXを効率的に推進してはいかがでしょうか。



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