Netpress 第2509号 法的留意点・トラブル対処法 労働契約の終了における人事管理について
1.従業員との労働契約が終了する場合には、一般的には自己都合の理由による退職が多いかと思いますが、他にも定年退職、解雇、整理解雇、退職勧奨、雇止めなど様々な類型があります。
2.ここでは、会社にとって人事労務トラブルにつながりやすいと思われる解雇、退職勧奨、雇止めを行うにあたっての法的留意点・トラブル対処法と、併せて試用期間満了後の本採用拒否についても説明します。
1.解雇
解雇とは、会社からの申出により労働者の意思に関係なく一方的に労働契約を終了させることをいいますが、会社がいつでも自由に行えるわけではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には労働者を解雇できないと法律で定められています。そのため、解雇を行うには社会の常識に照らして、その理由であれば解雇されても仕方がないと納得できる理由が必要となります。また、会社としてどのような場合に解雇するかについては、あらかじめ就業規則に規定しておく必要もありますので、定期的に就業規則を確認するようにしてください。
なお、以下のような一定の場合には解雇が法律上禁止されていますので、この点にも注意が必要です。
| ①業務上の傷病による休業期間とその後30日間 ②産前産後の休業期間とその後30日間 ③国籍・信条・社会的身分 ④労働組合の組合員 ⑤性別 ⑥女性の婚姻・妊娠・出産・産前産後休業等 ⑦障害者 ⑧労働基準監督署等に申告 ⑨労働組合の結成や組合活動 ⑩育児・介護休業等の申出・取得 ⑪育児休業等に関するハラスメント・セクシャルハラスメント・パワーハラスメントの相談 ⑫公益通報 |
会社が解雇を労働者に伝える方法は、口頭や文書でも構いませんが、万が一の人事労務トラブルを避けるためには労働者への通知日・就業規則に基づく解雇理由・解雇日等を明記して、労働者に文書で通知することが重要です。実際に解雇を行う場合には、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合など法律で解雇予告が不要とされている場合を除いて、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。予告を行わない場合や予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。また、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付する必要があります。
2.退職勧奨
解雇は会社からの一方的な申出で労働者の意思とは関係なく成立しますが、退職勧奨とは、会社が労働者に対して「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと退職を勧めることをいい、あくまでも労働者が会社からの申出に応じた場合に成立するものです。そのため、労働者が自由意思により、会社からの退職勧奨に応じる場合は何も問題となりませんが、会社による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。
たとえば、労働者が退職勧奨に応じないため一室において長時間にわたり退職を執拗に求めたり、退職届の提出を強要したりするなどの行為による退職勧奨は取り消すことができ、さらに会社側の行為について不法行為責任を問われる可能性があります。そのため、退職勧奨を行う場合には、労働者の自由意思に基づく同意であることがわかるよう、その同意を得る過程について前記のような問題がないように労働者への伝え方、方法等もしっかりと確認したうえで行うことが重要です。
3.雇止め
雇止めとは、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で契約満了時に会社が契約を更新せずに労働契約を終了させることをいいます。もともと有期労働契約ですので、契約期間満了で労働契約が終了することが前提となっています。これに対して、実質的に期間の定めのない労働契約と変わらないといえる場合や、今までの反復更新の実態、契約更新時の経緯等から労働者が雇用継続への合理的期待が認められる場合には、法律により雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされます。なお、どのような場合に雇止めが認められないかについては、労働の臨時性・常用性、更新の回数、労働契約の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる会社の言動の有無などを総合的に考慮して、個々の事案ごとに判断されます。
会社として有期労働契約を更新する場合には、その内容や契約を更新するかどうかの判断をしっかりと行い、できればその記録もしたうえで、労働契約満了日前に労働契約の更新を行うことが重要です。
また、会社と労働者が合意してあらかじめ定めた契約期間の満了前に会社が労働者を辞めさせる、つまり解雇することについては、正社員等の期間の定めのない労働者を解雇するよりもさらに合理的な理由を必要とし、会社にやむを得ない事由がある場合を除き、労働者を解雇することができないと法律に規定されています。
ここでいう「やむを得ない事由」とは、たとえば労働者が傷病等により業務に耐えられないことや、会社が経営難のため雇用を継続することがほとんど不可能な場合などが考えられます。有期労働契約の期間途中でのやむを得ない事由に基づく解雇についても、期間の定めのない契約の場合と同様に解雇予告(解雇予告手当)が必要となります。さらに、あらかじめ定めた契約期間途中の解雇におけるやむを得ない事由が会社の過失による場合、会社は労働者にその生じた損害を賠償する必要があります。
また、会社が雇止めを行う場合に対象となる労働者との有期労働契約について3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している場合(あらかじめ契約を更新しない旨を明示しているものは除きます)について、雇止めを行う場合には、会社は「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」<厚生労働省告示>により、契約が満了する日の30日前までに、労働者に対して契約を更新しない旨の予告をしなければならないとされています。
4.試用期間満了後の本採用拒否
期間の定めのない労働契約を締結した正社員について、会社として試用期間満了後に本採用を拒否する場合は、いわゆる解雇となります。判例では、試用期間は「解約権が留保された労働契約」であると解釈したうえで、「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇とまったく同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべき」とされており、通常の解雇よりも試用期間満了後の解雇のほうが会社としてのハードルは低いと考えられています。ただ、同一の判例で試用期間満了後の本採用拒否による解雇は「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるもの」であるとされています。
このように試用期間満了後の本採用拒否について、通常の解雇における厳格な基準を満たすことまでは求められていないと考えられますが、法的には解雇に該当するため、その理由について合理的な理由が求められることに違いはありません。そのため、会社として試用期間満了後に本採用拒否を行う場合にも、人事労務トラブルを回避するため慎重な対応が必要となります。
◎協力/日本実業出版社
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