一口メモ 十を聞いて一を語れ

朝礼時の挨拶や、経営のヒントに――。日常の光景や歴史のエピソード、季節の話題等さまざまなトピックスを題材にまとめたミニコラムです。



「一を聞いて十を知る」とは、論語の中で孔子の弟子・子貢が同門の俊英・顔回の聡明さを言った言葉だ。「私は一を聞いて二を知るのがやっとなのに」。それを聞いた孔子は「二を知るのがやっと」と自ら認識している子貢に「私も与(くみ)する」と言った。


二を知るどころか一を聞いて、その一すらも一知半解するのが私たち凡夫のありようではなかろうか。SNSに飛び交う言葉を目にするたびに、それは確かな裏付けがあったうえでの主張なのかと疑いたくなることも多い。一知半解同士が脊髄反射の応酬をして、より事態を複雑にしてはいまいか。


日本語によるロックの嚆矢となったはっぴいえんどのメンバー故・大瀧詠一は、よく「十を聞いて一を語れ」と言っていたという。彼らは情報が限られていた時代に貪欲に輸入盤を聞き込み、自分たちの言葉によるロックを探求し、日本に根付かせた。今や世界の音楽ファンからもリスペクトされている。


当時、ロックは英語でなければ世界に通用しないと主張する人々に論難された彼らは、多くを語らず、よく熟成させた「一」をもって何が普遍的なのかを示したように思える。



◎「一口メモ」2021年8月号

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