Netpress 第2097号 気をつけよう!「間違っている敬語」と「おかしな言葉遣い」
1.ビジネスにおいては、社内・社外を問わず敬語は欠かせないもので、正しく使いこなすことが求められます。
2.敬語の基本と間違えやすいポイントを押さえておけば、仕事がスムーズに進み、周りの評価も高まります。
株式会社スピーキングエッセイ
取締役講師代表 大嶋 利佳
敬語の間違いには、いくつかのパターンがあります。気づかずに使っている人も多いので、「誰かが言っていた」「聞いたことがある」からと真似をしていると、自分も間違えてしまいます。
また、せっかく丁寧な言葉遣いをしたつもりでも、おかしな表現になってしまっていることもありますので、注意する必要があります。
丁寧語の誤用
●丁寧語の誤用①
×:「田中様でございますね」
○:「私は田中でございます」
「私は田中です/ございます」と、丁寧に自己紹介をすることはできますが、相手の名乗りを復唱して「田中様ですね/ございますね」とすることはできません。相手に対して、十分に敬意を示したとはいえないからです。次のように尊敬語を用いましょう。
○:「田中様でいらっしゃいますね」
●丁寧語の誤用②
×:「こちらが資料になります/会議室は突き当たりになります」
○:「こちらが資料です/会議室は突き当たりにございます」
近年、このように語尾を「~になります」とする表現が多く聞かれます。「です/ございます」を使うよりもソフトな印象で丁寧に聞こえるから、という理由のようです。しかし、「~になります」は「明日は晴れになります」のように物事が変化するという意味ですから、おかしな表現です。丁寧語を正しく用いましょう。
●丁寧語の誤用③
×:「おメールアドレスをご記入ください」
○:「メールアドレスをご記入ください」
丁寧にしなければと気を遣うあまりに、このように外来語にまで「お」をつける人がいます。「おトイレ」「おビール」などのように慣用的に使われるものはありますが、原則としてカタカナで書く外来語には、美化語「お」はつけません。
謙譲語と尊敬語の誤用
●謙譲語と尊敬語の誤用①
×:「田中様は、株式会社東京の営業部長として活躍しております」
○:「田中様は、株式会社東京の営業部長として活躍していらっしゃいます」
尊敬語と謙譲語の区別があいまいだと、このように尊敬語を使うべきところで謙譲語を使ってしまうことがあります。このような間違いは、おかしな印象を与えるだけでなく失礼にもなりますので、気をつけたいものです。
●謙譲語と尊敬語の誤用②
×:「もう少々お待ちしてください」
○:「もう少々お待ちになってください」(「お待ちください」も可)
「お~する」の形は謙譲語で、自分の動作に用います。ここでは、相手に「待つ」という動作をしてほしいと求めているのですから、尊敬語に「~ください」をつける形にするのが適切です。
二重敬語の誤用
●二重敬語の誤用①
×:「お客様がこのようにおっしゃられました」
○:「お客様がこのように言われました/おっしゃいました」
「お客様が言いました」を尊敬語にするなら、「言われました」または「おっしゃいました」となります。この誤用例は、「おっしゃった」に「~られました」を加えて、二重敬語にしてしまっています。
●二重敬語の誤用②
×:「資料をご覧になられてください」
○:「資料をご覧になってください」(「ご覧ください」も可)
これもよくある二重敬語の誤用例です。「見る」の尊敬語は「ご覧になります」ですから、さらに「~られる」をつける必要はありません。このほかにも、「来る」の尊敬語「お越しになる」を「お越しになられる」、「食べる」の尊敬語「召し上がる」を「召し上がられる」とするなど、同じパターンで間違うケースが多いようです。
謙譲語の誤用
●謙譲語の誤用①
×:「その件は上司に申し上げておきます」
○:「その件は上司に申しておきます」(「申し伝えておきます」も可)
謙譲語「申し上げる」は、動作が向かう相手への敬意を示します。この文での動作は「上司に言う」ですから、誤用例は発言を聞く人ではなく、上司に対して敬意を示していることになります。
●謙譲語の誤用②
×:「会議の場所なら私は存じ上げております」
○:「会議の場所なら私は存じております」
ここでは「場所を知っている」と述べているのですから、「存じ上げる」では「場所」に対して敬意を示していることになります。前項と合わせて、「~上げる」は尊敬すべき相手に使うと覚えておきましょう。
●謙譲語の誤用③
×:「台風のニュースをテレビで拝見しました」
○:「台風のニュースをテレビで見ました」
「拝見する」は、相手の持ち物などを見せてもらうときに用いる謙譲語です。「拝借」(相手の物を借りる)、「拝聴」(相手の話を聞く)なども同様です。一般的な物については丁寧語で表現します。
その他の気をつけたい言葉遣い
●その他の気をつけたい言葉遣い①
×:「本日の幹部会議のほう、司会のほうは鈴木部長のほうになります」
○:「本日の幹部会議、司会は鈴木部長です」
「~のほう」を「言葉の響きがソフトになるから丁寧な表現だ」と思って使っている人が多いようです。しかし、「~のほう」は方角や比較のために用いるものです。「~になります」と同様、使わないように注意しましょう。
●その他の気をつけたい言葉遣い②
×:「この件を担当してください」 ─ 「了解です」
○:「この件を担当してください」 ─ 「承知しました」
「了解」を「わかりました」の改まった言い方と思って使っている人が多いようです。しかし、「了解」は「あなたの言い分を理解し認める」という意味なので、目上の人や外部の人に使うと不快に思われます。
●その他の気をつけたい言葉遣い③
×:「期日は来月3日でよろしいですか」 ─ 「それで大丈夫です」
○:「期日は来月3日でよろしいですか」 ─ 「それで結構です」
「大丈夫」は、「危なげがない」とか「確実で安心できる」という意味です。近年、「それでよい」「このままでよい」という意味で使う人が増えていますが、ビジネスシーンでは不適切ですから注意しましょう。
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