Netpress 第2449号 人事・育成担当者は必読! 新入社員が身につけるべき思考スキルと研修のポイント

1.新入社員は、日常業務で必要不可欠なコミュニケーション力や問題解決力を強化するために、ロジカルシンキング(論理思考)を身につける必要があります。
2.新入社員に、ロジカルシンキング等の思考スキルを効果的に習得させるためには、具体的でわかりやすい研修を受講させることに加え、職場において、人事担当者や上司、OJT担当者によるこまめな動機づけやフォローアップが重要です。
1.新入社員が身につけておきたい思考スキル
新入社員が職場に配属された後、仕事を覚えながら上司をはじめ社内外のステークホルダーと関係を築くなかで、当面の課題となる主要なビジネススキルが2点あります。
1点目は、コミュニケーション力です。新入社員は日々の報連相(報告・連絡・相談)でつまずきやすく、その内容の正確性やわかりやすさだけでなく、手法、タイミングなどで上司から指摘されることが多くあります。
その理由として、これまでの学生生活(特にプライベート)では、価値観が近い気の合う友人や家族との主観的な会話が多かった一方で、ビジネスコミュニケーションでは、主観よりも客観性が重視され、それを意識した結論や根拠の作り方に慣れていないことが挙げられます。
また、「相手の問いに答える」「結論から話す」「要約する」などのビジネスで求められる効率的なコミュニケーションの作法に慣れていないことも一要因です。
2点目は、問題解決力です。学生時代は与えられた課題をこなす機会が多かったのですが、社会人になると、上司からの指示という課題をこなすだけでは不十分です。新人とはいえ、指示されていないことでも自ら積極的に問題を発見し、課題を設定する能力や行動が求められます。
また、ビジネス上の問題解決では、さまざまなステークホルダーの立場に鑑みた合意形成や意思決定が必要で、勘や経験に依存しない客観的・合理的な問題解決力が求められます。
これらの課題を育成段階で早期に解決するためには、その土台となる思考スキルの習得が必要です。ロジカルシンキングは「全体像を押さえ、事実に基づき筋道を立てて結論を導く思考スキル」であり、結論や根拠の納得感を高めるコミュニケーションや、問題発生時の原因分析や解決策の策定に役立ちます。
まさに新入社員が早期に身につけるべき思考スキルといえるでしょう。
2.新入社員研修のポイント
新入社員研修で学んだ思考スキルを、配属後の仕事で活かせるようになるために、押さえておくべき新入社員の特性を解説します。
(1)社内外で通用する自己成長や自己効力の実感を求めている
近年はソーシャルメディアやAIツールの活用により、自分に必要または興味のある情報に素早くアクセスできる若手が増えてきました。同期や同世代が、ビジネスシーンのどこでどのように活躍しているか等の情報も目に入ります。
その結果、自分の現在のビジネススキルや業務内容がどれだけ「安全」なポジションにいるのか、付加価値の高いスキルを身につけて実践できているのかが気になります。
言い換えると、自分が着実に成長しており、自社内での貢献実感や社外での評価(市場価値)が高い人材であるという「安心」を求めているのです。
(2)「失敗を恐れずにチャレンジ」に躊躇がある
新入社員にロジカルシンキング研修を受講していただくと、総じてロジカルシンキング自体の重要性や必要性を理解し、強い興味を持っている様子も伺えます。
同時に受講後の率直な感想として、「実務でうまく活用できるか不安」という声も多くあります。ロジカルシンキングに限った話ではありませんが、やはり研修時間だけでは練習量や実践量が足りず、また配属先の具体的な業務内容が十分にイメージできていないなかで、そう感じてしまうのは無理もありません。
講師からは「新入社員は多少の失敗は気にするな。恐れずにやってみよう」「楽器やスポーツと同じ。少しずつ慣れよう」と安心感を与えるように背中を押すのですが、それだけでは不十分です。特に最近の若手は自己成長の意欲は高い一方で、評価懸念の高さから自ら不安なことや不確実なことへのチャレンジにためらいがあります。つまり失敗するリスクを負ってまで100点を目指すよりも、無難に80点で評価される確実性のほうを選ぶ傾向があるのです。
(3)先輩・上司からは丁寧に指導してもらいたい
SMBCコンサルティングによる「2024年度 新入社員意識調査アンケート」によると、「先輩・上司に求めること」として「積極的にコミュニケーションを取ってくれる」「いつでも相談できる雰囲気がある」「丁寧な指導をしてくれる」が他の回答を引き離して多く、新入社員がコミュニケーションを求めていることがわかります。一方で、「仕事への熱意がある」の回答は3年連続で減少しており、この世代は“熱血漢”を避ける傾向にあるようです。
これらの特性に鑑みると、新入社員研修を効果的なものとするためには、新入社員に対して職場の人事担当者や上司、OJT担当者から受講前に適切な動機づけを行い、また受講後は適切にフォローアップすることが重要といえます。
具体的には、受講前にこれから学習することが自社業務になぜ必要なのか、どう活かせるのかを丁寧に説明する必要があります。そのためには、新入社員研修の各プログラムが、新入社員の具体的な業務と紐づく内容で設計されていることが前提となります。さらに業務だけでなくプログラム同士の関連性や整合性も説明し、新入社員にとって「学ぶ意義」の腹落ち感を高めるようにしましょう。
ロジカルシンキングのような思考スキルは、業界や職種に依存しない汎用性のあるビジネススキルであり、「社会人としての市場価値を高められ、自身のキャリアアップに大きく貢献する」という動機づけを行うことも効果的でしょう。もちろん講師からもそういった動機づけは行われますが、人事担当者や直属の上司から言われることで、これから学習する内容の具体性や現実味を増すことができます。
また、受講後には、1日5分でもよいのでスキルアップについて新入社員と話し合う時間を作り、研修での学習内容を実践する具体的な機会を提供し、それをフォローする必要があります。そこでは「何か困っていることはない?」という単なる声かけではなく、「○○ができているね/できるようになったね」という小さな成功体験を確実に積ませ、「○○をこうするともっとわかりやすくなるよ/効率的にできるよ」といった自己成長や自己効力感につながるポジティブなフィードバックを行ってください。
このようなこまめで丁寧な関わりによって、新入社員の「安心」「安全」欲を満たすことができ、結果として職場へのロイヤリティ向上にもつながっていくでしょう。
日本実業出版社のウェブサイトはこちら https://www.njg.co.jp/
2025年度 新入社員向けセミナーのご案内
■SMBCコンサルティングの新入社員研修(東京・大阪・神戸・名古屋・オンライン) |
\貴社の新入社員・新人研修の課題や要望にお応えします!/ |
大好評受付中! 2025年度 新入社員研修・内定者研修 特設ページ |
■おすすめ講師のセミナー | |
橋本 尚久講師 | 本記事を執筆 |
鈴木 真理子講師 | 以下の実務シリーズを執筆 これだけ知っていれば安心! ビジネスの基本マナー [2023年版]ビジネス文書・eメールの書き方とマナー |
本田 賢広講師 | 以下の実務シリーズを執筆 (改訂)新入社員の心得と実務―「できる新入社員」の条件 |

この記事はPDF形式でダウンロードできます
SMBCコンサルティングでは、法律・税務会計・労務人事制度など、経営に関するお役立ち情報「Netpress」を毎週発信しています。A4サイズ2ページ程にまとめているので、ちょっとした空き時間にお読みいただけます。
プロフィール

SMBCコンサルティング株式会社 ソリューション開発部 経営相談グループ
SMBC経営懇話会の会員企業様向けに、「無料経営相談」をご提供しています。
法務・税務・経営などの様々な問題に、弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・コンサルタントや当社相談員がアドバイス。来社相談、電話相談のほか、オンラインによる相談にも対応致します。会員企業の社員の方であれば“どなたでも、何回でも”無料でご利用頂けます。
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/soudan