Netpress 第2429号 2025年大阪・関西万博 入場料の購入費用に係る税務上の取り扱い

Point
1.「大阪・関西万博」の入場料の購入費用は、「愛・地球博」の前例に倣い、各種経費の損金算入に関して一定の優遇がなされています。
2.ケースごとに取り扱いが異なるため、その趣旨を理解するとともに、充足要件の適切な把握に努めることが肝要といえます。


株式会社AGSコンサルティング
AGS税理士法人
税理士 髙田 弘樹


 2005年に開催された「愛・地球博(愛知万博)」に続いて、2025年に「大阪・関西万博」が20年ぶりに日本で開催されます。

 今回は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとして、多彩なイベントが期待されています。

 そこで、SDGsへの貢献による企業イメージの向上や福利厚生等を目的とした当該イベントへの協賛企業として留意したいのは、その入場料の購入費用に係る税務上の取り扱いについてです。

 ここでは、愛・地球博開催の際の国税庁の文書回答等を踏まえ、その税務上の取り扱いについて、ケース別に解説します。


1. 大阪・関西万博の入場料の概要

 大阪・関西万博では、従来の紙チケットに代えて、電子チケットの利用が基本とされています。購入企業には、10桁の英数字混在のチケットIDがCSVデータで送付されます。

 利用者はスマホやPCで個人情報を登録し、チケットIDと紐づけることで、来場6か月前からの来場日時予約、最大4枠のパビリオン等の抽選・予約が可能となります。

 来場当日は、QRコードをスマホ等でかざして入場・入館することができます。

 参考までに、大人(1日券)の価格は4,000円~7,500円と販売時期によって異なります。


2. 購入時の取り扱い

 企業が入場券を購入する際、そのタイミングではまだ使用されていないため費用計上が認められません。貯蔵品等として資産計上が求められます。

 消費税の観点からは、実際に物品または役務提供の引換給付を受けていないため、仕入税額控除は認められません。


3. 取引先へ入場券を交付する場合

 企業においては、イメージ向上による販売促進等の目的として、大阪・関西万博の入場券を取引先に交付することがあると思われます。

 この場合、国際博覧会という背景などから、入場券の購入費用は交際費に該当せず、販売促進費として処理することが認められています。

 交際費と販売促進費の違いについて簡単に説明すると、通常、取引先等の事業関係者への接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のための支出は交際費と定義されます。

 中小企業の場合は、年間800万円を上限とした損金算入限度が設けられています。


 一方で、販売促進費に損金算入限度の定めはありません。支出した費用の全額が損金算入の対象となります。

 なお、企業イメージの向上による販売促進等を目的とした支出であるという点に鑑み、取引先へ入場券を交付したタイミングで損金算入されることとなります。

 消費税の観点からは、企業が取引先に無償で入場券を交付する場合、引換給付を受けないこととなり、消費税の課税要件である対価要件を満たさないため、仕入税額控除が認められません。

 ここでは、交付を受けた取引先において、実際に使用したタイミングで仕入税額控除が認められることに留意してください。


4.従業員の慰安等のために入場券を交付する場合

 企業が従業員の慰安会、レクリエーション等として博覧会を見学させる場合、入場券の購入費用は福利厚生費として処理することが認められています。

ただし、基本的に以下のような要件の充足が前提と考えられ、これらの要件を満たさない場合には、給与課税される可能性があります。


・全従業員が対象になっているか(機会の平等性)
・交付を希望しない従業員に対し、別途、金銭等の経済的給付を行っていないか
・従業員の実際の使用(サービスの提供)が確認できているか


 従業員の家族を含めた実施も対象となり、その見学のために通常要する交通費、宿泊費等も福利厚生費として認められる点は、上記「2.購入時の取り扱い」のケースと異なります。

 なお、本来、従業員が入場券を使用したタイミングでの損金算入が原則ですが、その使用状況の把握は負担が大きく困難なため、従業員に入場券を交付したタイミングでの損金算入も認められています。

 消費税の観点からは、従業員が実際に使用したタイミングで仕入税額控除が認められます。従業員に入場券を交付したタイミングでの損金算入処理とは整合しないことに留意してください。

 また、従業員が費用の一部を負担した場合でも、負担前の全額(インボイス記載金額)を仕入税額控除の対象として差し支えありません。


5. インボイス制度への対応

 上記「4.従業員の慰安等のために入場券を交付する場合」のケースで、仕入税額控除が認められる例を挙げましたが、厳密には次の資料を併せて保存し、インボイス制度へ対応する必要があります。


・チケットID
・入場チケットのインボイスに関する資料


 なお、上記「3.取引先へ入場券を交付する場合」のケースで、取引先において仕入税額控除が認められるためには、取引先への当該資料の送付が欠かせないことに留意してください。


◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちら 
https://www.njg.co.jp/



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