Netpress 第2401号 あらかじめ確認しておきたい 退職後の健康保険の3つの選択肢と留意点

Point
1.退職後の健康保険の選択肢は、(1)任意継続、(2)国民健康保険、(3)家族の被扶養者の3つがあります。
2.退職者の状況により異なるので、それぞれの選択肢を十分に検討して最終的に決定することが大切です。


社会保険労務士法人マイツ
代表社員 藤田 隆宏


現在勤務中の会社で加入している健康保険について、将来退職した場合=会社での健康保険を喪失した場合の選択肢とそれぞれの特徴を説明します。


1.退職後の健康保険の選択肢

日本の健康保険は、全員を公的医療保険制度でカバーする、いわゆる国民皆保険制度を採用しているため、退職後についてもいずれかの健康保険に加入する必要があります。


具体的な選択肢としては、再就職して就職先の健康保険組合に加入する場合や75歳以上の場合(後期高齢者医療制度に加入する)を除いて、以下の3種類が考えられます。


(1)
任意継続
(2)
国民健康保険
(3)
家族の被扶養者

2.それぞれの選択肢の概要と特徴

(1)任意継続

任意継続とは、一定の要件に該当し加入手続を行った場合に、退職前に加入していた健康保険に引き続き加入することができる制度です。


健康保険組合によりその要件や加入手続が異なるので、その詳細は別途確認していただく必要がありますが、ここでは全国健康保険協会(いわゆる協会けんぽ)の場合をもとに説明します。


<任意継続の要件と手続>


退職日までに継続して2か月以上の健康保険の被保険者期間があること

退職日の翌日から20日以内(20日目が営業日でない場合には翌営業日まで)に加入手続(※)をすること

加入手続先は、全国健康保険協会の各都道府県支部になりますが、退職前の会社が加入している都道府県支部ではなく、退職者の住所を管轄する都道府県支部になりますので、その点にご注意ください。たとえば、退職前の会社の所在地が東京都(全国健康保険協会・東京支部に加入)で、退職者が大阪在住の場合には、全国健康保険協会・大阪支部に任意継続の手続をする必要があります。
また、加入手続で直接窓口に行く必要はなく、必要書類を郵送する形での対応が可能です。


<任意継続の特徴>

・被保険者期間

任意継続できる期間は、最長2年間となっています。2年を経過すると資格を喪失するため、それ以降は他の健康保険制度に加入する必要があります。


・保険料

退職前の健康保険料は、会社と本人が折半して負担する形でしたが、退職後に任意継続する場合の健康保険料は、本人が全額負担する形になります。ただし、退職時の社会保険料の対象となる標準報酬月額が30万円を超えていた場合には、標準報酬月額30万円に対する健康保険料となります。なお、被扶養者がいても在職中と同じく健康保険料は変わりません。


・その他

任意継続の保険給付については、退職前と同様の保険給付を原則として受給できますが、傷病手当金と出産手当金(退職前から受給している場合は除きます)は受給できません。


(2)国民健康保険

国民健康保険は、他の医療保険制度に加入していないすべての住民を対象とした医療保険制度です。


<国民健康保険の手続>

居住する市区町村の窓口で退職後に手続を行う必要がありますが、具体的な手続は事前に各市区町村に問い合わせるのがよいでしょう。


<国民健康保険の特徴>

・保険料

国民健康保険料は、住民税と同じように前年の所得と被扶養者の人数によって市区町村ごとに異なります。任意継続の保険料と比較する場合には、窓口で個別に確認する必要があります。


・その他

保険給付について、療養の給付(医療費は原則として3割自己負担等)は他の医療保険と同じ内容ですが、他の保険給付は市区町村ごとに異なる点があるので、具体的な内容は個別に窓口で確認してください。


(3)家族の被扶養者

家族が就職していて健康保険に加入している場合には、一定の要件に該当すれば、所定の手続により家族の健康保険組合の被扶養者となることができます。


<被扶養者の要件>

被扶養者となるための要件は、以下のいずれかに該当することです。



退職者が家族の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として家族に生計を維持されている場合


退職者が家族と同一の世帯(=同居)で主として家族の収入により生計を維持されている次の場合

1)
家族の三親等以内の親族(①に該当する人を除く)
2)
家族の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
3)
2)の配偶者が亡くなった後における父母および子


なお、生計を維持とは、原則として退職者の年収見込み額が130万円未満(満60歳以上は、180万円未満)で、同居の場合には家族の収入の2分の1未満、別居の場合には家族からの仕送り額(援助額)よりも少ないことをいいます。


<家族の被扶養者の特徴>

他の選択肢と大きく異なる点は、家族の被扶養者となる場合に健康保険料の負担がない点が挙げられます。保険給付の内容は、家族の加入している健康保険組合により異なります。



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