Netpress 第2379号 サステナブル経営/前編 代表的な国際開示基準の概要、目的、連携、歴史的変遷

Point
1.近年、世界的に重要性が高まっているCSuO(最高サステナビリティ責任者)。前後編の2回に分けて、CSuOまたはCSuO候補にとって今さら聞けないESG/サステナビリティの超基本用語を深掘りします。
2.前編のテーマは、「国際開示基準」です。代表的な国際開示基準の概要、目的、連携、そして歴史的変遷について解説します。


慶應義塾大学SFC研究所
上席所員 笹埜 健斗


国際開示基準は、企業が財務情報だけでなく、ESG情報をも開示するための基準です。ESG情報は、企業の社会的責任や環境への影響を示し、リスクや機会を明らかにするために不可欠です。企業の長期的な成功や持続可能性には、財務情報だけでなく、ESG情報も重要であることが明らかになってきました。


これらの国際開示基準の主な取り組みとして、以下のものが挙げられます。

1.GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)

1997年設立。GRIは、サステナビリティ報告のための国際的なガイドラインを提供し、経済、環境、社会の3つの側面から企業の非財務情報開示を促進しています。GRIは独立して運営されていますが、他の開示基準との協力を進めています。



2.CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)

2000年設立。企業に対して気候変動、水、森林に関する情報開示を求める非営利組織です。CDPは、企業が環境影響を測定し、管理するためのデータを提供し、環境パフォーマンスの透明性を高めます。これにより、投資家やステークホルダーは企業の環境リスクと機会を評価できます。CDPは独立して運営されていますが、他の開示基準との協力を進めています。

3.CDSB(気候変動開示基準委員会)

2007年設立。企業の気候変動関連情報の開示を促進する枠組みを提供してきました。CDSBは、企業の気候変動関連情報の開示を促進するための枠組みを提供し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を補完しています。これにより、投資家は企業の環境パフォーマンスをより正確に評価できます。2022年、CDSBはIFRS(国際財務報告基準)財団のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)に統合されました。これにより、CDSBの技術資産とスタッフはISSBに移行しました。

4.SASB(サステナビリティ会計基準審議会)

2011年設立。業種別のサステナビリティ会計基準を提供してきました。2021年、SASBはIIRC(国際統合報告評議会)と合併してVRF(価値報告財団)を形成し、その後ISSBの一部として統合されました。米国を中心としつつ世界的に業種別のサステナビリティ会計基準を提供し、各業種において重要性の高いESG情報を特定しています。

5.IIRC(国際統合報告評議会)

2013年設立。企業の財務情報と非財務情報を統合的に報告する枠組みであり、短期的な業績だけでなく、長期的な価値創造の方向性を示すことを目的としています。IIRCは、財務情報と非財務情報を統合的に報告する枠組みを提供し、企業の長期的な価値創造を促進します。2021年、IIRCはSASBと合併し、VRFを形成し、その後ISSBの一部として統合されました。

6.TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

G20の要請を受けて2015年設立。TCFDの主な目標は、企業が気候変動に関連するリスクと機会を財務情報として開示することを推奨することです。TCFDは独立して運営されていますが、他の開示基準との協力を進めています。

7.ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)

2021年設立。ISSBは、IFRS(国際財務報告基準)財団の下に設立された組織であり、気候変動を含む幅広いESG情報の開示基準の開発を目指しています。既存の国際開示基準を統合し、グローバルに一貫したサステナビリティ開示基準を開発することを目的としています。ISSBの設立時に、CDSBとVRFが統合されました。



これらの開示基準は、企業がESG情報を開示する際の指針となり、情報の比較可能性や信頼性を高める役割を果たしています。IR、TCFD、GRIなどの主要なフレームワークの特徴や重点分野を理解することが重要です。たとえば、IRは統合報告に、TCFDは気候変動に、GRIはサステナビリティ全般に焦点を当てています。これらの統一された開示基準により、投資家などのステークホルダーは企業間のESGパフォーマンスを公平に評価できるようになります。


現在、開示基準は多様に存在していますが、国際的な統合化の流れがあり、各フレームワークの統合や整理が進められています。開示フレームワークの統合化が進むことで、企業や投資家などのステークホルダーにとって、情報の一貫性や比較可能性が向上し、開示の効率化も期待できるというメリットがあります。


ESG情報開示の重要性がますます高まるなか、国際開示基準の発展や統合化の加速が予想されます。CSuOには、これらの動向を踏まえ、積極的にESG情報開示に取り組むことが求められています。ESG情報開示への取り組みは、企業の持続可能性を高め、投資家などのステークホルダーからの信頼を獲得するうえで欠かせない要素となるのです。



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