Netpress 第2378号 必須の手法 入社後の短期離職を防ぐ「オンボーディング」とは
1.オンボーディングがうまく機能すると、職場に対する満足度が向上して離職の防止につながります。
2.ここでは、オンボーディングにまだ取り組んでない、ないしは上手にできていないので何とかしたいと考えている企業に向けて、具体的な対策を紹介します。
株式会社セレブレイン
代表取締役社長
高城 幸司
1.「オンボーディング」とは
新たに迎え入れた人材(新卒・中途を含む)に早く会社になじんでもらい、早期戦力化するための仕組みとして注目度が高まっているのが「オンボーディング」です。
もともと、ボード(board)は「船の上」を意味し、自分たちの船に新しく乗組員を迎える時の言葉としてオンボーディングという言葉が使われていて、それが会社に社員を新しく受け入れることへの比喩として、言葉的にも広まることとなりました。
現在では実施率が6割を超える状況で、さらには1,000名以上の大手企業では9割が実施するほど、当たり前の取り組みになってきています。中堅以上の社員の方にとっては馴染みが薄いものの、若手にとっては当たり前の体験と言えるかもしれません。
そんなオンボーディングについて、まだ取り組んでない、ないしは上手にできていないので何とかしたいと考えている企業に向けて対策を紹介していきます。
2.なぜ注目を集めているのか
そもそも、オンボーディングの仕組みが人事業界でなぜ注目を集めているのでしょうか。
人手不足から離職防止に対する意識が大幅に高まってきたことが大きな要因かもしれません。
採用サイトによる調査でも、定着率向上に対する積極性を示した企業は過半数を超えており、「新規の人材採用が困難なため」という答えが上位に来ています。
人材採用がなかなかうまくいかない状況や、採用にかける労力やコストを踏まえたときに、オンボーディングに力を入れることで問題を解決しようとしていることがわかります。
ちなみに、オンボーディングは新卒よりも中途採用で新たな取り組みとして行われているようです。その理由は、新卒では対応済みであることも多いためです。
日本企業の大半で、新卒社員の受け入れに対しては用意周到さが見られます。「初めて社会に出た時の会社として、責任を感じている」との認識から、内定者フォローや入社後のさまざまな手続き、新卒社員研修や個人面談など、比較的手厚い対策がなされていることが当たり前です。
一方で、中途社員に対しては新卒社員とは異なり、「即戦力」として見る向きがあるので、「それくらいはできて当然」「教えなくてもできるはず」という雰囲気が社内に漂っているケースが大半ではないでしょうか。
特に創業間もないベンチャー企業や中小企業では、会社がやや大きくなり始めたときに、創業者や創業メンバーとの思いや感覚のズレから「中途社員の短期離職」が起きる傾向があり、それを防ぐための効果的な手法として、オンボーディングが日本でも注目され始めたと考えられます。
3.オンボーディングの進め方
オンボーディングは、どのようなプロセスで取り組むものなのでしょうか。
具体的には、入社前から入社初日、入社後数か月~1年の期間で適用される仕組みで、いくつかのステップを踏みます。
まずは、入社前の情報提供です。入社後の流れを事前に通知するとともに、入社手続きに必要な情報を提供したり、疑問に思っていることをクリアしたりするなど、相手の不安を払拭できるように、かつ、入社後の手続きをスムーズに行えるようにしておきます。
続いて、入社初日のコミュニケーションです。ここが一番重要なポイントかもしれません。
入社後、いかに早く会社に適応して、戦力になってもらえるかのカギは、入社初日が握っています。期待と不安のなか出社してくるわけですので、その気持ちを踏まえたうえで、うまく軌道に乗せる必要があります。
役員や人事との公式面談、業務説明、会社で仕事を進めるうえで必要な情報の提供(社内のシステムや諸手続きの方法など)、各部署への紹介など、あらかじめプログラムを組んでおき、スケジュールに沿って進めましょう。
配属先の上司や同僚に限らず、他の社員を巻き込むことも重要で、ランチは先輩社員が連れて行ってざっくばらんに話をしたり、懇親会を設定して社内のネットワーキングを行ったりします。
この際にとても重要なのが「歓迎ムード」です。たとえば、システムにログインした際にメッセージが表示されたり、最初にメールを受信すると社長からのメッセージが表示されたりするなど、ちょっとした工夫で「歓迎ムード」を演出することができるはずです。
入社後は、配属先で仕事をうまく進めるために、配属先の上司との面談を通して、期待されている役割や目標を明確にしたり、部署全体の状況やスケジュール、課題の説明をしたり、困った時に助けてくれるメンターを紹介したりするなど、配属先の職場でのオンボーディングが続きます。
その後は、実際に仕事に取り組んでみて、どのような成果を出し、貢献できているのかを確認するために、1か月~数か月単位で個人面談を行います。抱えている課題や、今後の目標などについても、お互いの認識を擦り合わせるようにしましょう。
こうして、社員としての定着が見えてくるとオンボーディングは完了です。
4.最後に
オンボーディングがうまく機能すると、職場に対する満足度が向上して離職の防止につながります。
具体的に「満足度が高い状況か」を把握するためには、調査が必要になります。そのため、アンケート形式による調査で現状把握を行います。調査の結果、満足度が低ければ、オンボーディングの取り組みを見直して改善につなげることになります。
最近は、取り組み状況を明らかにするため、システムを導入する企業が増えています。毎月のように中途採用をする企業ともなれば、時間差でオンボーディングも毎月のように行うことになります。オンボーディングを確実に行うためのチェックという観点からも、システムの活用は効果的でしょう。
オンボーディングは、継続的に行うことで離職率の改善や生産性の向上につながる取り組みです。事業方針や経営方針に変更があっても継続していきましょう。
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